ねぇ、。
君がまだ舌足らずな口調
で俺のことを“コンラト”と呼んでいたとき
“俺の髪と同じ色がよかった”と言って
くれたよな。
でも俺は、君の髪が… 君色の髪が素敵だと今も昔も変わらず
そう思っているよ。
………………今、どこにいる?
─────────────────────会いたい。
「……ド!コンラッドってば!!」
「え?あぁすみません。何ですか?」
「それはこっちの台詞だよ!こっち凝視し
たまま動かねぇし。おれの頭になんかついてんの?」
訝しげに問うユーリに
苦笑して答える。
「何でもありませんよ」
「にしても珍しいじゃん。コ
ンラッドがボーッとするなんて。何?なんか悩み事?」
このシブヤユーリに
まっかせなさーい!と胸を叩くユーリ。
思わず笑
みがこぼれる。
「違いますよ。少し…昔を思い出してただけです」
何かを悟ったのか、ユーリはそれ以上追求してはこなかった。
少しの
間、沈黙が流れ、ただボールが行き交う音だけが響く。
「陛下」
「陛下って呼ぶな名付け親」
「すみません、つい癖で」
い
つものやりとりを交わして、ユーリの方に近づく。
「で、何?」
「少し
髪に触ってみてもいいですか?」
「は!?まさかあんたも兄と同じ趣味なのかっ!?
もしくはギュンターと同じく黒髪フェチ!?」
思わず後退ったユーリに爽や
かに答える。
「まさか。俺に“は”そういう趣味はありませんよ」
兄の秘められた面について問題視されそうなことをさらっと言って除けて、
ユーリの髪に指を通す。
「ちょっと傷んでますね」
「そりゃあ…散々日
に焼けてるし、リンスもしないからなぁ。髪は女の命とかいうけど、いーんじゃねーの?
おれ、男だし」
髪は女の
命ですか…と小さく呟くと、言葉を続けた。
「ユーリの髪は野球少年らしい
髪質ですね」
「つまり髪質よくないってことだろ。遠回しに貶してんの?」
「い
いえ、誉めてます」
野球好き同士の悪戯めいた笑みが一瞬だけ交わされる。
「んで、誰を思い出してたんだよ。…恋人?」
ニヤリと人の悪
い笑みを浮かべたまま、ユーリがこちらを窺うようにして聞いてきた。
「聞
かないでいてくれるんじゃなかったんですか」
先程問い詰める様子を見せな
かったユーリの変わり様に苦笑する。
「気味悪いくらい凝視されて、髪まで
触られたんだから、ちょっとくらい聞かせてくれてもいーだろー」
ぶーぶー
と駄々っ子のように文句をいうユーリに困ったような笑みを向け、口をひらく。
「ご期待に添えなくて申し訳ないんですが、恋人じゃありません。幼馴染で
す。…もうずいぶん長く、会ってないんですけどね」
「ケンカでもしたの?」
ユーリのその問いに、自嘲め
いた笑みを浮かべ首を横に振る。
「いいえ。喧嘩にも満たない。俺が一方的
に、感情任せに罵っただけです。
俺が何を言っても彼女なら受けとめてくれる、言わ
なくても彼女なら俺の心を理解してくれる…俺は彼女に甘えていたんです。
それが間
違いだと気づいたときには、もう彼女はいなかった」
「“言わなくても心が伝わる”
なんて双子タレントのマ○カナぐらいしかできねーって。
本当にわかってほしけりゃ
言葉にしなくちゃ。多少のリスクを負ってでも、自分をさらけ出して一生懸命謝れば、そ
の人もわかってくれるんじゃないかな」
だって、あんた仲直りしたいんだ
ろ?と笑顔を向けてくるユーリ。
その姿に、遠い彼の地で出会った女性を重ねた。
「あなたには、かないませんね」
一人ごちて、微笑み返す。
と、王佐の泣き叫ぶ声が近づいてきた。
途端にユーリの顔から笑みが消え、嫌悪
感が露になる。
仕方ないですね、と前置いてから溜め息をつくユーリに声をかけた。
「ギュンターに見つ
かったから今日はこれで終わりにしましょう」
苦笑して言うと、ユーリも苦
笑して頷いた。
グラブとボールをこちらに手渡すと、彼はゆっくり、髪を振り乱し泣
き叫ぶ王佐の方へ歩き始める。
汁まみれの王佐に縋りつかれて嫌そうにする彼を見届
けて、空を見上げた。
、俺は俺の本当の気持ちを見つけたよ。
に言
いたいことがたくさんあるんだ。
今、君はどこにいるんだ?誰を想ってる?
この
スカイブルーの空を、同じように見上げているだろうか?
君に会いたいよ
コン
ラートの胸元で玩具の指輪が、一瞬だけ、光った。
[
あとがき]
この素敵な小説は、希望様が10000HITお祝いに書いて下さいまし
た!!
希望様、本当にありがとうございました!!
コンラートとユーリのやりと
りがとても良いですvvv
君マの設定や言い回しを沢山取り込んでいただけて、とっ
ても嬉しいです☆
本当にありがとうございました
!!
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