君の唇が紡ぐ、甘く、優しいメロディー











 14 音楽〜翼をください〜











「今の、何て歌だっけ?」
「へ??」


いつもの様に、執務室で書類とにらめっこをしていたユーリが、
同じく、隣で机にかじりついていたに話しかけた。


「何が?」


は、ユーリの言ってる意味が全くわからないらしく、小さく首を傾げ ている。


「いやだから、今、お前歌ってたじゃん。」
「嘘!?私、歌っ てた!?」
「………………無意識かよ(汗)」


相変わらずのの天然 ぶりに、ユーリは呆れた顔をした。


「あ〜“翼をください”??」
「そ れそれ!!昔、音楽のテストで散々練習させられたやつ〜!!」


ユーリは胸 のつっかえが取れてスッキリしたのか、大きく伸びをした。


「好きなのよ ね、この歌。 まぁ、ユーリが毎日歌ってるのをこっそり聴いてたら、勝手に覚えたんだけどもね☆」
「………………お前、やっぱり俺のストーカー??」
「………………。」
「いや、否定しようよ!!」
「あはははは〜それは、まぁ、置いとい て〜。」


は適当に笑って話をごまかした。


「………………まぁ、もう今更お前が俺の何を知ってようが驚かないけどさ〜。」


ユーリ は諦めた様に大きくため息をついた。


「………………何だろう、あの歌って 凄く綺麗な曲だけど、どことなく寂しい感じがするのよね………………
 多分、そう いう所に惹かれたんじゃないかな。」
「あ、俺もそれわかる!」


の言葉に、ユーリも賛同する。


「“悲しみのない自由な空”っていうのは、 裏を返せば、私たちがいる地上は
 “悲しみが溢れて自由がない”ともとれるもの ね。」
「………………でも、どんなに望んでも俺たち人間………………魔族は、
 どうやっても翼を手に 入れることは、出来ないんだよな。」
「そうよね………………。」
「まぁ、俺は コッヒーの羽(?)で空飛んだんだけどな〜」
「………………乙女のロマンを崩さない でくれる?」


はコッヒーが青空を羽ばたいてるシーンを想像して、思 わず眉をしかめた。


「まぁ、そう言うなって☆俺はコッヒーのお陰で、大空 を飛べたわけだしさ。」


ユーリは面白そうにおちゃらけた。


「………………私が自由に大空を飛べたのは、ユーリのお陰よ。」
「へ!?」
「さっきのコッヒーとは意味あいが違うけど、私の“翼”は、あなただわ。」


は目を細めて、柔らかく微笑んだ。


「だ〜か〜ら〜!お 前はどうしてそう、こっ恥ずかしいことばっか言うんだよ〜!?」


ユーリは 顔を真っ赤にして抗議をする。
しかしは、ユーリのことなど全く気にせずに歌 い出した。


「今〜私の〜願い事が〜叶うならば〜翼が〜欲し〜い♪」
「………………や っぱ、って、歌上手いよな〜。高校の音楽の授業でも、皆聴き惚れてたし。」


黙っての歌を聴いていたユーリが、思わず感嘆のため息をもらす。


「そう?でも私は、有利少年が歌ってた元気一杯の“翼をください”も大好 きだったな〜」
「………………どうせ元気だけが取り柄の、ウルトラ音痴だよ!!」
「誰も音痴なんて言ってないでしょ〜が☆」
「目が言ってるよ、目が!!」


それは、他の誰も知らない、2人だけの秘密。それがとユーリには、 何だか嬉しかった。


「ね、ユーリは下のパートだったよね?まだ、覚えて る?」
「??あ、うん。散々練習したしな。」
「よし!じゃあ屋上行こ!!」
「は!?何で!?てゆか仕事は??グェンダルに、また怒られるんじゃね!?」
「休憩だって必要よ♪ほら、早く!!」


そう言うと、はユーリの手を 引いて、無理矢理部屋から連れ出した。



















「 うっわ〜!!!!ここ、すっげ〜景色良いのな!!」
「でしょでしょ〜?私のとって おきの場所よ♪」


は、端まで走って行くと、楽しそうにユーリの方を 振り返った。


「ここが私たちのステージよ!それでもって、眞魔国中の人が お客様!」
「はい!?マジで歌うの!?しかもここで!?」


の突 拍子のない発言の数々に、ユーリは口をあけて惚けた。


「ここで歌ったら、 相当気持ち良いよ〜?ね?ね?」
「………………仕方がないな〜も〜」


そう言いながらも、ユーリもなかなか乗り気の様だった。


「今〜私の〜願い 事が〜叶う〜ならば〜翼が〜欲しい♪」


が始めに歌い出し、途中で ユーリにバトンタッチをすると、遠慮がちにユーリも歌い出す。


「………………この〜ぉ、背中に〜ぃ、鳥の様に〜ぃ、白ぉい翼〜ぁ、つけて〜ください♪」


『この大空に〜翼を広げ〜飛んでゆきたいよ〜♪』


はじめは、控えめに歌っ ていたユーリも、段々気持ちよ くなってきたらしく、生き生きと歌うようになる。


『悲しみのない〜自由な 空へ翼はためかせゆきたい〜〜♪』


二人の優しいメロディーは、きっと、眞 魔国中に響きわたったに違いない………………









一部を除いて………………









「陛下〜お茶をお持ちしましたよ〜………………って陛下がいない!?


もぬけのからになったユーリの執務室にやって来たギュンターは、 ユーリとのハーモニーを聴くことなく、
その場で気を失ってしまったとさ☆



















ー 君の歌声は、風を伝って世界中に響き、この大地に染み渡るー



















[ あとがき]
アンケリク「現代にいたときに主人公が好きになった曲(これはお任せで・・)をユーリに 聞かれて一緒に歌う。」でした☆
お名前はな かったのですが、ネタを提供して下さった方、ありがとうございましたm(_ _)m
曲は、誰 もが知ってる“翼をください”に勝手に花音がしました。お気に 召さなかったらごめんなさい(>_<)