君の唇が紡ぐ、甘く、優しいメロディー
「今の、何て歌だっけ?」
「へ??」
いつもの様に、執務室で書類とにらめっこをしていたユーリが、
同じく、隣で机にかじりついていたに話しかけた。
「何が?」
は、ユーリの言ってる意味が全くわからないらしく、小さく首を傾げ
ている。
「いやだから、今、お前歌ってたじゃん。」
「嘘!?私、歌っ
てた!?」
「………………無意識かよ(汗)」
相変わらずのの天然
ぶりに、ユーリは呆れた顔をした。
「あ〜“翼をください”??」
「そ
れそれ!!昔、音楽のテストで散々練習させられたやつ〜!!」
ユーリは胸
のつっかえが取れてスッキリしたのか、大きく伸びをした。
「好きなのよ
ね、この歌。
まぁ、ユーリが毎日歌ってるのをこっそり聴いてたら、勝手に覚えたんだけどもね☆」
「………………お前、やっぱり俺のストーカー??」
「………………。」
「いや、否定しようよ!!」
「あはははは〜それは、まぁ、置いとい
て〜。」
は適当に笑って話をごまかした。
「………………まぁ、もう今更お前が俺の何を知ってようが驚かないけどさ〜。」
ユーリ
は諦めた様に大きくため息をついた。
「………………何だろう、あの歌って
凄く綺麗な曲だけど、どことなく寂しい感じがするのよね………………
多分、そう
いう所に惹かれたんじゃないかな。」
「あ、俺もそれわかる!」
の言葉に、ユーリも賛同する。
「“悲しみのない自由な空”っていうのは、
裏を返せば、私たちがいる地上は
“悲しみが溢れて自由がない”ともとれるもの
ね。」
「………………でも、どんなに望んでも俺たち人間………………魔族は、
どうやっても翼を手に
入れることは、出来ないんだよな。」
「そうよね………………。」
「まぁ、俺は
コッヒーの羽(?)で空飛んだんだけどな〜」
「………………乙女のロマンを崩さない
でくれる?」
はコッヒーが青空を羽ばたいてるシーンを想像して、思
わず眉をしかめた。
「まぁ、そう言うなって☆俺はコッヒーのお陰で、大空
を飛べたわけだしさ。」
ユーリは面白そうにおちゃらけた。
「………………私が自由に大空を飛べたのは、ユーリのお陰よ。」
「へ!?」
「さっきのコッヒーとは意味あいが違うけど、私の“翼”は、あなただわ。」
は目を細めて、柔らかく微笑んだ。
「だ〜か〜ら〜!お
前はどうしてそう、こっ恥ずかしいことばっか言うんだよ〜!?」
ユーリは
顔を真っ赤にして抗議をする。
しかしは、ユーリのことなど全く気にせずに歌
い出した。
「今〜私の〜願い事が〜叶うならば〜翼が〜欲し〜い♪」
「………………や
っぱ、って、歌上手いよな〜。高校の音楽の授業でも、皆聴き惚れてたし。」
黙っての歌を聴いていたユーリが、思わず感嘆のため息をもらす。
「そう?でも私は、有利少年が歌ってた元気一杯の“翼をください”も大好
きだったな〜」
「………………どうせ元気だけが取り柄の、ウルトラ音痴だよ!!」
「誰も音痴なんて言ってないでしょ〜が☆」
「目が言ってるよ、目が!!」
それは、他の誰も知らない、2人だけの秘密。それがとユーリには、
何だか嬉しかった。
「ね、ユーリは下のパートだったよね?まだ、覚えて
る?」
「??あ、うん。散々練習したしな。」
「よし!じゃあ屋上行こ!!」
「は!?何で!?てゆか仕事は??グェンダルに、また怒られるんじゃね!?」
「休憩だって必要よ♪ほら、早く!!」
そう言うと、はユーリの手を
引いて、無理矢理部屋から連れ出した。
「
うっわ〜!!!!ここ、すっげ〜景色良いのな!!」
「でしょでしょ〜?私のとって
おきの場所よ♪」
は、端まで走って行くと、楽しそうにユーリの方を
振り返った。
「ここが私たちのステージよ!それでもって、眞魔国中の人が
お客様!」
「はい!?マジで歌うの!?しかもここで!?」
の突
拍子のない発言の数々に、ユーリは口をあけて惚けた。
「ここで歌ったら、
相当気持ち良いよ〜?ね?ね?」
「………………仕方がないな〜も〜」
そう言いながらも、ユーリもなかなか乗り気の様だった。
「今〜私の〜願い
事が〜叶う〜ならば〜翼が〜欲しい♪」
が始めに歌い出し、途中で
ユーリにバトンタッチをすると、遠慮がちにユーリも歌い出す。
「………………この〜ぉ、背中に〜ぃ、鳥の様に〜ぃ、白ぉい翼〜ぁ、つけて〜ください♪」
『この大空に〜翼を広げ〜飛んでゆきたいよ〜♪』
はじめは、控えめに歌っ
ていたユーリも、段々気持ちよ
くなってきたらしく、生き生きと歌うようになる。
『悲しみのない〜自由な
空へ翼はためかせゆきたい〜〜♪』
二人の優しいメロディーは、きっと、眞
魔国中に響きわたったに違いない………………
一部を除いて………………
「陛下〜お茶をお持ちしましたよ〜………………って陛下がいない!?
」
もぬけのからになったユーリの執務室にやって来たギュンターは、
ユーリとのハーモニーを聴くことなく、
その場で気を失ってしまったとさ☆
ー
君の歌声は、風を伝って世界中に響き、この大地に染み渡るー
[
あとがき]
アンケリク「現代にいたときに主人公が好きになった曲(これはお任せで・・)をユーリに
聞かれて一緒に歌う。」でした☆
お名前はな
かったのですが、ネタを提供して下さった方、ありがとうございましたm(_ _)m
曲は、誰
もが知ってる“翼をください”に勝手に花音がしました。お気に
召さなかったらごめんなさい(>_<)