次代魔王陛下の御魂 を預かった俺は、 ジュリアの魂が生まれ変わるまでの期間を、地球で過ごしていた。
『コ…ンラー…ト…………
ごっめんな…さいっ…』
俺は“あれ”
から、毎晩の様にあの時の夢を見る様になった。
脅えきったの瞳、震える声………………その全てが、俺の心をかき乱す。
「くそっ!!!!」
いつもの様に、の悲痛な泣き声で目覚めた俺は、体中から嫌な
汗がにじみ出ていた。
「…………俺は、一体どんな顔をしてに会
えばいいっていうんだ!?」
いくら、気が動転していたとはいえ、許される
様なことではない。
一人、地球に渡ることによって、段々頭がクリアになってきたコ
ンラートは、
自分の犯した罪の重さを、改めて実感していた。
「…………、お前、今、どんな気持ちでいるんだ?」
コンラート
は、部屋の窓から微かに顔を出す月を、眩しそうに見つめた。
気持ちの整理が出来ずに、憂鬱な日々を過ごしていたコンラートを変えたのは、とある
“母親”の暖かな言葉だった。
「本っ当にありがとう!!他は全く止まって
くれなかったから、凄く助かったわ〜♪」
コンラートは、出産間近の妊婦、
つまり、次代魔王陛下の母親である渋谷美子を、タクシーの相乗りと称して助けたのだ。
「いいえ、困ったときはお互い様ですよ。」
コンラートは、陣
痛で汗ばむ美子に、ハンカチを渡して微笑んだ。
「ありがとう。あなたは
とっても優しいのね。」
満面の笑みを浮かべる美子に、コンラートは困った
様な顔で遠慮がちに笑った。
「…………俺は、優しくなんかないですよ。全
然。大切な…………大切な人を傷付けてしまったんです。」
「喧
嘩…………しちゃったの??」
美子は、陣痛の痛みから気を紛らわす様に、
話続ける。
「喧嘩…………ではないんです。俺が、一方的にを………………そう、の気持ちも考えずに、
自分の怒りをぶつけてしまったんです。」
コンラートはいたたまれずにうつ向いて答えた。
「それは、彼
女ならわかってくれるって思ったから、気持ちをぶつけてしまったのね。」
「え…………??」
「きっとあなたの中で、その子なら自分の全てを理解してくれる、ってい
う甘い考えがあったはずよ?
でも実際は違う。言葉にもしないで、全てが相手に伝
わるなんて不可能だわ。」
美子は、目の前の青年の瞳を真正面から見つめ
た。
「こんな言い方失礼かもしれないけど、今のあなたは、自分の気持ちを
わかってもらえず、泣いて主張する赤ちゃんと同じよ?」
見た目はおっとり
していそうな美子の饒舌ぶりに、コンラートは驚いた。
「あなたは、その
“さん”が、とっても大切なのね。」
美子は優しくコンラートの頭をなでた。
「好きだからこそ、その人
の全てを知りたくなっちゃうの。
そして、好きだからこそ、その人に自分の全てを
知って欲しいのよ。」
コンラートは、美子の話を一言、一言、噛み
締める様に聞いていた。
「でもね、それにはとっても勇気がいるわ。だって
“全て”というのは、自分の中の汚い部分も含めて“全て”なんですもの。
だか
ら、本当にあなたがその人を愛しているなら、あなたの方から心を開かなきゃ。」
「心を開く…………?」
「そう、全てさらけ出すの!そしたら、相手も自然に心を開
いてくれるわ。」
そう言うと、美子はにっこりと微笑んだ。
「…………あなたは、どこか、俺の母親に似ています。」
コンラートは、破天荒だが、どこまでも前向きで明るい自分の母親を思い浮かべた。
「あら、
本当に?それは光栄だわ。」
美子は“母親”の顔で優しくコンラートを見つ
めた。
「ありがとう
ございました。」
コンラートは大きく頭を下げた。
「??い
やぁね、お礼を言うのはこっちの方なのに。あ、もう着くのね。こちらこそ、本当にあり
がとうね。」
そう言った後、美子は重たいお腹を抱えて、タクシーから降り
た。
『俺は、きっとあなたのお子さんを、大切に守るよ。』
コ
ンラートは、病院に運び込まれる美子の背中に、もう一度、大きくお辞儀をした。
ー
君に伝えたいことがあるんだ。俺はやっと本当の自分を見つけたんだよー
[
あとがき]
今回のお話で、私が何を伝えたかったかと言いますと、どの世界でも母は最強
ということですよ!!(笑)
さんはさんでツェリ様にお説教されてましたしね
(笑)
いかがでしたか?これで、なんとなく話が繋がって来ましたでしょうか?(^_^;)