あなたの唇から伝わる、熱い想い。切ないキモチ
雪が
舞う、寒い冬のある日のこと、血盟城では只ならぬ事態が起こっていた。
「
………………私が死んだら、私の部屋にいる子たち(あみぐるみ)は、
お前
が責任をもって里親に………………」
ぐったりとベットに横たわり、必死に
そう懇願するグウェンダルの横では、
ギュンターがギュン汁を垂れ流している。
「………………死ぬ前に、どうかひと目、陛下の、陛下
のぉぉぉぉお!!」
「だ〜い〜じょ〜ぉ〜
ぶ!!今の時代、インフルエンザで死ぬ奴はいないわ!!
(地球での話だけど/
死)」
「ユーリ!!お前は僕の婚約者だろう!?もっと僕を献身的に看病しない
か!!」
「はいはい、ヴォルフはそんだけ騒げたらもう大丈夫よ。」
「
、ちょっとこっちに
来て!!」
「今行くわ!!」
ギーゼラの呼びかけに、慌てて私は
返事をする。
「まさか、インフルエンザがこんなに流行するなんてな〜」
大急ぎで走り回る私の横で、ユーリが呑気な声をあげる。
「も〜と〜は〜と〜い〜え〜ばっ!!ユーリが地球から連れて帰って来たのが悪いん
でしょ〜!?」
「………………おっしゃる通りでゴザイマス。」
血盟城中で何故インフルエンザが流行っているのかというと、
事の発端は、ユーリが
前回のスタツアで眞魔国にやって来た時まで遡る。
『ユーリ!?どうしたの!?』
いつもの様に風呂場に現れたユーリは、顔を
真っ赤にしてぐったりとしていた。
『………………病院、行った帰りにフラ
フラして歩いてたら、
雪に足滑らせて、溝に落ちた………………』
『病院?風邪ひい
たの?』
『………………インフルエンザ。』
『なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?』
その後、大慌てで
ユーリを隔離したものの、元々インフルエンザに全く免疫のない眞魔国の住民たちは、
次々に発病していったのだった。
「ギーゼラ、どうかした?」
私が駆け足でギーゼラに近寄ると、彼女は切羽
詰まった表情で私に助けを求めてきた。
「ちょっと、コンラートの様子がお
かしいの!!なかなか熱も下がらないし、咳も止まらないみたいなのよ。」
「コン
ラート。コンラート。わかる?」
私が話しかけても、コンラートはぴく
りとも反応をしない。
「………………意識が白濁してるわね。私の力で少し
回復させてみるわ。」
「でもあなた、さっきから力を使いすぎじゃない?大丈夫?無
理をするとあなたの方が倒れるわよ?」
「大丈夫よ。」
心配するギーゼ
ラを余所に、はコンラートの胸の辺りに両手をかざして、力を集中させる。
どれだけの時
間、そうしていただろうか?
少しずつだが、コンラートの呼吸が落ち着いてきた。
「………………?」
コンラートが少しだけ瞳を開けて、
目の前の愛しい人の名を呼ぶ。
「良かった!!気がついたのね!!、
もう大丈夫………………?」
ドウ
シヨウ。ギーゼラノコエガ、ダンダントオクナッテイク………………
「………………?!?
!!」
『コンラート、私は大丈夫だよ。』
そ
う伝えたかったのに、私の唇がそう紡ぐ前に、私はそのまま意識を手放してしまったの
だった。
────────────────────
名
を呼ばれた気がしてゆっくりと目をあけると、目の前に心配そうなコンラートの顔があっ
た。
「?………………良かった。」
「………………コンラー
ト?」
「覚えてるか?お前、あの後、熱を出して倒れたんだ。3日眠り続けてたんだ
ぞ?」
「3日も!?」
「待て!!まだ起き上がらない方が良い。」
コンラートの手が、慌てて飛び起きた私の肩を掴んで、ゆっくり押し戻し
た。
「もう少しの間大人しくしてろ。後でギーゼラを連れて来るから。」
コンラートは私の背中を支えると、そっとベッドに横たわらせてくれた。
「助けて貰った俺が言えるセリフじゃないケド、治癒魔法はかなり体力を消
耗するんだから、無闇やたらに使うのはやめろ。いいな?」
「………………コンラートが倒れるよりはいいわ。」
「。」
「………………ワカリマシ
タ。」
私がふてくされてそっぽを向くと、コンラートは小さく吹き出して、
私の頭をそっと撫でた。
「………………他のみんなは、もう大丈夫なの?」
「ヴォルフはピンピンし
てる。グウェンはもうちょっと安静が必要かな。
ギュンターは、治ったと思ったら
今度は風邪ひいて寝込んでるよ。」
「そう。とりあえず落ち着いたのね。良かっ
た。」
「………………お前はいつも人のことばっかだな。」
「違うわよ。全部私
のためよ。」
はそう言うと、ゆっくりと手を宙に浮かす。
「俺は、この手に助けられたんだな。」
「そうよ?大切にしてあげて
よ?」
ちょっとふざけてそう返したのセリフに、二人は互いに顔を見
合わせて笑い合った。
「………………優しい手、だな。」
コン
ラートは、そう小さく呟くと、まるで母親に何かをねだるかのように、私にこう尋ねた。
「触っても、良い?」
「へ!?な、何よ急に!?」
「良
い?」
「………………ど、どうぞ。」
私が遠慮がちに手を差し伸べる
と、コンラート
はそっと私の手をとった。
「ちょ!!コンラート!?///」
コ
ンラートは、まるでどこかの国の物語にでてくる騎士の様に、私の指に口づけを落とし
た。
「………………あなたに、生涯の忠誠を。姫。」
そう言っ
て、彼は何度も何度も口づけた。
何度も何度も、何度も何度も。
刻みつけるよう
に、想いを注ぎ込むように………………。
「………………姫、ってガラじゃ
ないわよ。」
そう言って苦笑いする私を、コンラートはそっと抱きしめる。
「俺にとって、たった一人の大切なお姫様だよ。」
「じゃあ、コンラー
トは王子様?」
「俺じゃ不服?」
「まさか。」
そう言って
は、そっとコンラートの胸に頬を寄せた。
寄り添う二人を、甘く、幸せな空気が包み
込んでいた。
ー
君はいつも人の事ばかり。君のそんな所が、俺はとても大好きだよー
[あとがき]
珍しくちょい甘で
す。(花音が書いたにしちゃぁ甘々笑)
これで50のお題もあと14話です☆