俺は思い違いをしていたんだ。
お前
のことだから、きっと泣いて引き留めてくれると思っていたんだ。
勝手にそう思い込
んでいたんだ………………
に初め
て“軍に入る”と告げた時の、そう、
あの時のお前の第一声を、俺はきっと一生忘れ
ることはないだろう………………。
「………………ふぅん。軍に入るの。」
確実に泣かれる事を覚悟していた俺は、の予想外にあっさりとした答
えに、
一瞬何を言われたのかわからなかった。
「あ、あぁ。」
「で?軍
に入って何をするの?」
「な、何って………………」
──────────驚いた。
は、こんなにしっかりとした娘だったろうか?
凛と
した瞳で見つめてくるこの少女は、
本当に自分の知っている“”なのだろう
か?
「コンラートは、何のために戦うの?」
呆然と立ちすくむ俺に、は
ゆっくり近づいて来る。
「“魔王様”の息子だから?“国に忠誠を誓ってい
る”から?」
「そういうわけじゃない………………。」
チガウ。ソウジャナイ。ソウジャナイン
ダ。
「じゃあどういうわけ?」
「………………………………。」
「あなたは何のために“人間”を殺すの?」
「………………………………。」
言葉を返すことが出来ない俺を、更に追い
つめるかのように、
は淡々と言葉を続ける。
「………………あな
たは、私も殺すの?」
「!?なっ!!だって、お前は………………!!」
「そうよ。“魔族”と“人間”のハーフ。魔力が強い分、魔族に近いのかもしれない
わね。
でも、半分は確かに“人間”よ?“人間”なのよ。」
は
俺の目を真っ直ぐに見つめて、躊躇い
なくこう言い放った。
「あなたも、ね。」
ソウダ。オレモ“ニンゲン”ナンダ。
「あなたは、自分も殺すの?」
俺を見つめる………………いや、睨みつけるの瞳は、どこまでも澄ん
でいた。
コノヒトミニ、ウソヲツクナン
テデキナイトオモッタ
「争いを………………
争いをなくすために戦いたいんだ。」
何と言えば良いんだろうか?
どう
言葉にしたら良いんだろうか?
「俺自身が、どちらの“世界”も背負ってい
る以上、
どちらかの世界に偏ってはいけないんだ。」
このままルッテ
ンベルクにいては、
俺の中の世界が偏ってしまう。
固定されてしまうと思ったん
だ。
「軍に入って、もっと広い世界を見たい。そして、皆を守れる力
が欲しいんだ。」
「あなたが戦ったら、そし
たら人間と魔族間の争いがなくなるの?違うわよね?」
「わかってる。でも………………」
「それでも行くのね?」
無言で頷いた俺に、は初めて優し
く微笑みかけた。
「わかった。私も行くわ。」
「………………は?」
「だから、私も行く!!」
「だから何で!?」
「コンラート、あなた、何で
も一人で思い詰めて無茶しちゃうでしょ?だから“見張り”よ!!」
「見張
り?」
「そう。あなたが道を見誤らないように。途中で全てを見失わないよう
に。」
そう言ってはにっこりと笑った。
「私達と同じ様
な境遇に生まれた子供たちが、胸を張って生きられる世界にしたいわ。」
「あなたと一緒に、ね。」
その言葉に俺はどれだけ救われただろう。
本当は不安だったんだ。
本当は怖くて怖くて仕方がなかったんだ。
どうしても君を離したくなかった。
言
葉にすることは出来なかったけど、本当は連れて行きたかったんだ。
いや、初め
から連れていくつもりだったんだ。
俺から言わなくても、君が“一緒に行
く”
と、泣いてくれるのを期待していたんだ。
でも違った。
君はそれをしな
かった。
俺の後に“ひっついて来る”のではなく、“一緒に歩く”道を選んでくれ
た。
「ありがとう。」
俺は口べただから、うまくキモチを表現出来
ないけれど………………
忘れないで欲しい。
いつだって俺が、君の詩の
ような言葉に勇気を貰っていたことを。
君が僕を幸せにしてくれているということを
………………
ー
君から貰った言葉は、今も俺の中の唯一の光ー
[
あとがき]
久々に度シリアスです。
久々にノリノリで筆が進みました(笑)
やっぱり私にはシリアスが向いているのやもしれません(^_^;)
そして連載開始から
8ヶ月目にして(遅)やっとタイトルに通じる言い回しが出てきました!!
気づいて
いただけたでしょうか?
最後の最後の方の“君の詩の様な言葉”。
これこそが、
私の想い描いている“君のマのつく優しい詩”なのです!!
また感想などいただける
と幸せです(●´∀`●)