それは、私が軍に入隊してすぐのこと だった。











 30 軍人〜戦う理由〜











さん、ずっとあなたが好 きでした。僕とお付き合いしてもらえませんか?」
「……………………………… はぁ。」


一体、これで何度目だろうか?
それまではルッテンベルクとい う田舎で暮らしていたため“そういうこと”はあまりなかった。
そもそも、四六時中 コンラートとヨザックが一緒にいたため、に近寄って来る男などいなかったのだ。
しかし、入隊と同時に血盟城に来た途端、軍内の様々な男性から言い寄られる様に なったのだ。


「ごめんなさい。」
!?
「申し訳ない ですけど、私は軍人としてまだ駆け出しですので、今は、恋やら何やらにかまけてる場合 じゃあないですから。」


まさか、断られるとは夢にも思っていなかったのだ ろうか。
その男は明らかに 動揺を隠せずにいた。
城の女中や救助部隊の女性兵に絶大な人気を誇る兵士であり、 “色んな意味”で有名な男だった。


「どっちですか?」
は?


諦めて立ち去るにしろ、逆上して襲いかかって来るにしろ、それな りの覚悟は決めていただったが、
男の予想外の反応に間抜けな返事をしてし まった。


「ウェラー卿とグリエとかいう一般兵、どちらなんですか?」
「??言ってる意味がわかりません。」


さっきまでとは打って変わって強気 な態度に出る男を、は鋭い瞳で睨んだ。


「しらばっくれるのですか? 今まで僕と同じ様に、あなたに同じ理由で振られた男たちが皆して言ってますよ?
  “あんなこと言ってるけど、実際はウェラー卿かグリエとできてるんだ”って。」
コンラートもヨザも関係ありません!!
「本当にそうかな?好きな男 を追いかけて入隊したんじゃないのかい?じゃなきゃ“女の癖”に軍になんて………………」









バシッ!!!!!!!!!!









男が全てを言い終わる前に、男の頬に 力強い拳が命中していた。


コンラート!?
「俺もいるっ てば!!(汗)」


ヨザが、コンラートに殴り飛ばされて地面に横たわる男を、 何度も踏みつける。


くそっ!!覚えてろよ!!


男はそう叫ぶと、地面を這いずる様に逃げていった。


「わぁお、見事な負け 犬の遠吠え☆マジであんなこと言う奴いるんだな〜♪」


ヨザックは、 の頭をぽんぽんと撫でた。


「なかなか帰って来ないから心配したんだぞ?」


コンラートは、うつむいたまま顔を上げないの顔を覗き込む。


「………………………………。」
?」


コンラート とヨザックは、互いに顔を見合わせる。


「………………痛いトコ突かれ ちゃったなぁ、と 思って。」
「?」
「確かに、そう言われちゃっても仕方ないかなぁと思って、 さ。」


は下を向いたまま、ぽつりぽつりと喋る。


「そう じゃないだろう?は、何のために軍に入ったんだっけ?」


ヨザックが 優しくに尋ねかける。


「………………人間と魔族の橋渡しがしたい わ。いつの日か、私たちみたいな辛い思いをする子供たちがいなくなるように………………。」
「………………そうだな。」


コンラートはの頭を抱き寄せ て、自分の胸に抱え込んだ。



















──────────本当はそれだけじゃない。
心の奥底では、やっぱりコンラート とヨザと一緒にいたいって、置いていかれたくないって、思ってしまうの。
不純な動 機だって思われても、しかたない。



















「俺は、おまえに軍になんて入って欲しくなかったよ。」


コンラートのその一言に、の心臓が小さく跳ねた。


「お前を 危険な目にあわせたくなかった。でも、その反面、お前も一緒にルッテンベルクを出ると 聞いた時、嬉しくもあったんだ。
 やっぱりお前と一緒にいたかっんだよ。」
「俺もだ よ☆まぁ、お前は言い出したら聞かないってわかってたから、好きなようにさせたけど さ。」


優しく自分を見守ってくれる二人に、は心の奥から熱いものが こみ上げて来た。


「………………さっきは関係ないって言ったケド、やっぱ り少し関係あるかもしれないや。」


はコンラートから離れると、二人 の手を優しく握った。


「私、コンラートもヨザも大好きよ。二人と離れたく ないわ。」
「俺もだよ、。まぁ、ヨザはどっちでも良いケド。」
あ!!酷いっすよ〜隊長〜!!」


情けない声を上げるヨザックを見 て、はおかしそうに笑った。


「こんなこと言ってるけど、本当にヨザ がいなくなったら、実は私よりコンラー トのが寂しがって泣いちゃうかもよ?」
「………………………………それはそれで嫌 だなぁ。」


自分を想って枕を濡らすコンラートを想像してしまったヨザック は、顔を真っ青にして首を横に振った。


「さぁ、お腹が減ったからそ ろそろ帰ろう?」
「は!?またうちに食べに来る気なわけ!?」
「だって、お前が作るご飯が一番美味しいんだから、仕方がないだろう?」
「………………もう、仕方かないんだから!!ほら、じゃあ三人で買い出しに行くわよ!!」


そう言うとは、コンラートとヨザックの間に入って二人と手を繋い だ。


夕焼け空の下、三人の楽しそうな笑い声と笑顔だけが、キラキラと輝い ていた。



















ー いつだって君は一人じゃないよ?必ず僕たちが側にいるからー



















[ あとがき]
アンケリク「入隊した直後の 幼なじみ三人組」でした☆
リクしてくださった水無月葵様、ありがとうございまし た!!
葵様には本当にいつもお世話になっておりますm(_ _)m
少しでも楽しんで いただけたら幸せです!!