それは、私が軍に入隊してすぐのこと だった。
「さん、ずっとあなたが好
きでした。僕とお付き合いしてもらえませんか?」
「………………………………
はぁ。」
一体、これで何度目だろうか?
それまではルッテンベルクとい
う田舎で暮らしていたため“そういうこと”はあまりなかった。
そもそも、四六時中
コンラートとヨザックが一緒にいたため、に近寄って来る男などいなかったのだ。
しかし、入隊と同時に血盟城に来た途端、軍内の様々な男性から言い寄られる様に
なったのだ。
「ごめんなさい。」
「!?」
「申し訳ない
ですけど、私は軍人としてまだ駆け出しですので、今は、恋やら何やらにかまけてる場合
じゃあないですから。」
まさか、断られるとは夢にも思っていなかったのだ
ろうか。
その男は明らかに
動揺を隠せずにいた。
城の女中や救助部隊の女性兵に絶大な人気を誇る兵士であり、
“色んな意味”で有名な男だった。
「どっちですか?」
「は?
」
諦めて立ち去るにしろ、逆上して襲いかかって来るにしろ、それな
りの覚悟は決めていただったが、
男の予想外の反応に間抜けな返事をしてし
まった。
「ウェラー卿とグリエとかいう一般兵、どちらなんですか?」
「??言ってる意味がわかりません。」
さっきまでとは打って変わって強気
な態度に出る男を、は鋭い瞳で睨んだ。
「しらばっくれるのですか?
今まで僕と同じ様に、あなたに同じ理由で振られた男たちが皆して言ってますよ?
“あんなこと言ってるけど、実際はウェラー卿かグリエとできてるんだ”って。」
「コンラートもヨザも関係ありません!!」
「本当にそうかな?好きな男
を追いかけて入隊したんじゃないのかい?じゃなきゃ“女の癖”に軍になんて………………」
バシッ!!!!!!!!!!
男が全てを言い終わる前に、男の頬に
力強い拳が命中していた。
「コンラート!?」
「俺もいるっ
てば!!(汗)」
ヨザが、コンラートに殴り飛ばされて地面に横たわる男を、
何度も踏みつける。
「くそっ!!覚えてろよ!!」
男はそう叫ぶと、地面を這いずる様に逃げていった。
「わぁお、見事な負け
犬の遠吠え☆マジであんなこと言う奴いるんだな〜♪」
ヨザックは、
の頭をぽんぽんと撫でた。
「なかなか帰って来ないから心配したんだぞ?」
コンラートは、うつむいたまま顔を上げないの顔を覗き込む。
「………………………………。」
「?」
コンラート
とヨザックは、互いに顔を見合わせる。
「………………痛いトコ突かれ
ちゃったなぁ、と
思って。」
「?」
「確かに、そう言われちゃっても仕方ないかなぁと思って、
さ。」
は下を向いたまま、ぽつりぽつりと喋る。
「そう
じゃないだろう?は、何のために軍に入ったんだっけ?」
ヨザックが
優しくに尋ねかける。
「………………人間と魔族の橋渡しがしたい
わ。いつの日か、私たちみたいな辛い思いをする子供たちがいなくなるように………………。」
「………………そうだな。」
コンラートはの頭を抱き寄せ
て、自分の胸に抱え込んだ。
──────────本当はそれだけじゃない。
心の奥底では、やっぱりコンラート
とヨザと一緒にいたいって、置いていかれたくないって、思ってしまうの。
不純な動
機だって思われても、しかたない。
「俺は、おまえに軍になんて入って欲しくなかったよ。」
コンラートのその一言に、の心臓が小さく跳ねた。
「お前を
危険な目にあわせたくなかった。でも、その反面、お前も一緒にルッテンベルクを出ると
聞いた時、嬉しくもあったんだ。
やっぱりお前と一緒にいたかっんだよ。」
「俺もだ
よ☆まぁ、お前は言い出したら聞かないってわかってたから、好きなようにさせたけど
さ。」
優しく自分を見守ってくれる二人に、は心の奥から熱いものが
こみ上げて来た。
「………………さっきは関係ないって言ったケド、やっぱ
り少し関係あるかもしれないや。」
はコンラートから離れると、二人
の手を優しく握った。
「私、コンラートもヨザも大好きよ。二人と離れたく
ないわ。」
「俺もだよ、。まぁ、ヨザはどっちでも良いケド。」
「
あ!!酷いっすよ〜隊長〜!!」
情けない声を上げるヨザックを見
て、はおかしそうに笑った。
「こんなこと言ってるけど、本当にヨザ
がいなくなったら、実は私よりコンラー
トのが寂しがって泣いちゃうかもよ?」
「………………………………それはそれで嫌
だなぁ。」
自分を想って枕を濡らすコンラートを想像してしまったヨザック
は、顔を真っ青にして首を横に振った。
「さぁ、お腹が減ったからそ
ろそろ帰ろう?」
「は!?またうちに食べに来る気なわけ!?」
「だって、お前が作るご飯が一番美味しいんだから、仕方がないだろう?」
「………………もう、仕方かないんだから!!ほら、じゃあ三人で買い出しに行くわよ!!」
そう言うとは、コンラートとヨザックの間に入って二人と手を繋い
だ。
夕焼け空の下、三人の楽しそうな笑い声と笑顔だけが、キラキラと輝い
ていた。
ー
いつだって君は一人じゃないよ?必ず僕たちが側にいるからー
[
あとがき]
アンケリク「入隊した直後の
幼なじみ三人組」でした☆
リクしてくださった水無月葵様、ありがとうございまし
た!!
葵様には本当にいつもお世話になっておりますm(_ _)m
少しでも楽しんで
いただけたら幸せです!!