人間だろうと、魔族だろうと、みんなが みんな望まれて産まれて来るのよ。











 31 髪〜隠し子騒動!?〜











それ は、いつもの様に、皆で仲良く朝食をとっている時のことだった。


「ヴォル フラム〜頼むから自分の部屋で寝てくれよ!!」
ヴォルフラム!!あなたまた そんなハレンチなことを!?
「ま〜ま〜ギュンターも落ち着きなよ。二人は 夫婦なんだし仕方ないよ。」
の言う通りだ!!僕とユーリは夫婦なんだ ぞ!?」
も頼むからフォローしてくれよ!!(涙)」
「朝から賑やかです ね〜。」
「………………(うるさい)。」
「あ、あの〜、ユーリ陛下………………。」


その消え入りそうな声に、ざわめきが一瞬で止まる。


「あ、あの、私は、門の警備にあたっている者なんですが、陛下にお伝えしたいことがあ りまして………………。」


美形軍団の注目を一身に浴びて、その一般兵は顔を真っ赤にしてお ずおずと喋った。


「ん〜?どうしたの??」
「城門の前で、男の子供が “ママに会わせて!!”と泣いているのですが………………」
ユーリ!!お 前、まさか!!
「え!?ちょっと落ち着けよヴォルフラム!!今のは俺にふ るとこじゃないだろ!?
 普通に考えてツェリ様とか!!………………ツェリ様とか(汗 )ま、まさか………………」


ユーリの台詞に、三人の息子たちの顔が 一瞬で真っ青になる。


………………駄目だ。否定できない………………


三人の頭の中で、小さな子供を抱えた母親が『ほぉら、この子が あなたたちの四人目の兄弟よ〜vvv』とはしゃぐ姿が浮かぶ。


「………………ユーリ、頼むから、冗談にならない冗談はやめてくれ。」
「コンラートも何を 本気にしてるのよ!!とりあえず会いに行きましょ?本当にツェリ様の子だって決まった わけじゃないんだし、
 もしか したら、ここの女中の子かもしれないじゃない。」


の提案に従って、 三人はしぶしぶ重い腰を上げた。



















ママー!!!!


城門の脇にしゃがみこんでいた少年は、迷うこと なくの胸に飛び込んだ。


!?』
「ちょっ!!何よその目 は!!そんなわけないでしょう!?」
「コンラート!!貴様!!」


ヴォ ルフラムがコンラートに掴みかかる。


「ヴォルフ!!変な勘違いしないで よ!!私は産んでないってば!!」
「でも確かに黒髪だしな………………あ、でも瞳 はブルーだからコンラートの子ではない、か?」
ユーリ!!
「わ!ごめんてば!!冗談だよ(汗)」


本気で怒るに、ユーリは慌てて 謝罪した。
「陛下、黒髪は突然変異であって、親がそうだから子もそうとは限らない んですよ。」
「へ?そうなの!?」


あまり の常識の違いに、ユーリはすっとんきょな声を上げた。


確かにその少年は、 つややかな漆黒の髪に青く澄んだ瞳、皆がそう思うのも無理はなかった。


「君、お名前は?」


はしゃがみこむと、目線を少年に合わせて話しか けた。


「………………ない。」
「………………そう。あのね、よく 聞いてちょうだい?残念だけど、私はあなたの母親じゃないわ。」


は、少年の瞳をしっかりと見つめて、ハッキリとした口調でそう告げた。


「ちょっ、、そんなハッキリ言わなくても………………」


ユーリが慌 てて間に入る。


「今ここで、適当に嘘をついてどうなるっていうの?結局 は、後々この子が傷つくことになるだけよ!!」









私だって、ずっと願っていたわ。
ツェリ 様とダンヒリー叔父様の本当の子供になれたら、どんなに良いか!!
でも、それはあ くまで私の“願望”であって、“現実”にはなりえない………………。









「………………ごめん。でも、両親がいない苦しみは、 私だって良くわかってるわ。だからこそよ。」


は寂しそうに目を伏せ た。









それに加えてこの少年は自分と同じ“黒 髪”だ。
今までにだって、きっと想像を絶するような差別と偏見を受けて来ただろ う。


自分には、守ってくれる人たちが沢山いた。
ダンヒリー叔父様やコ ンラートやヨザがいたから、自分はここまで生きてこれた。


でも、この少年 はどうだろう?


名前さえ持たずに、たった一人で生きているこの幼い命は。
この先も、一生この“髪”と共に生きていかねばならないというのに………………









「………………ごめんなさい。」


突然、その少年が泣き出した。


「お城に、黒髪の女の人がい るって聞いて、きっと、その人が僕のママだって………………だから、
 だから、お 姉さんを、困らせたかったわけじゃないんだ………………ごめんなさい。」


大きな瞳から、大粒の涙がぽろぽろとこぼれる。


「………………怒鳴ったりしてごめんね?あなたが悪いことなんて、何もな いのよ?………………ありがとう。優しい子ね。」


は少年を抱きしめ ると、優しく頭を撫でた。


「私はあなたの“本当の母”にはなれないけれ ど、“お母さん代わり”にはなれるわ。」


そう言うと、はコンラート の方を見上げた。


「コンラート、この子をルッテンベルクの孤児院に入れて あげれないかしら?」
「うん。俺もそれが良いと思うよ。あそこなら、きっと優しく 迎えてもらえる。」


の提案に、コンラートもすぐに賛同した。


「………………僕、そこに行っても良いの?」


驚いて、目をま んまるにしている少年に、はにっこりと微笑みかけた。


「ええ、勿 論!!私たちも、時々遊びに行くわ。
 あ、それから、あなたに名前をつけてあげな きゃいけないわね。」
「本当!?僕 にお名前、つけてくれるの!?」


少年の表情が一瞬にしてパッと明るくな る。


「何が良いかしらね〜?」


は皆を見回した。


「僕は“アレクサンドラ”が良いと思
却下


全員 に一斉に却下され、ヴォルフラムは真っ赤な顔で押し黙る。


「私は“ユー リ”が良いと思います!!陛下と同じ名を持てるとは、甚だ素晴らしいではないです か!!」
「ギュンター、それじゃあ、ややこしいだろう?」


コンラート が、横で困り顔をしているユーリを気遣ってギュンターをなだめる。


「………………ダン。」
『え?』
「そうよ、“ダン”が良いわ!!ダンヒリー叔父様か らとって、ダン!!」
「………………“ダン”?それが僕のお名前??やったぁ!! 僕は今から“ダン”だ!!」


ダンは、嬉しさのあまり、あたりをぴょんぴょ ん飛び跳ねた。


「姓はを使うと良いわ。十貴族ほどじゃないけれ ど、一応名前は通ってるから、 いざという時に役に立つと思うわ。」
「あぁ。もいずれはウェラー姓になるか ら、を継いでくれる人がいたら丁度良いよ。」
『………………………………。』
「………………何で皆して黙るんですか?」
「………………よくこの場面 で平然とそういうことが言えるなぁと思って………………」


がシラケ た目でコンラートを睨む。


「ま、ま〜ま〜、何はともあれ、ツェリ様の子 じゃなかったわけだし、それで良しとしよう!?」


険悪なムードを和ませよ うと、必死にユーリが割って入る。


「さすがユーリ。夫婦喧嘩をなだめると は、息子の鏡ですね。」


コンラートは感心したように微笑む。


「だ〜か〜ら〜!!いつから俺はあんたら二人の息子になったんだよ〜!?」
「あ、 そういえばユーリもいたんだった。私、この年にして、早くも二人の子持ちかぁ。」
いやいやいや!!俺は明らかに関係ないし!?」
「………………お兄 ちゃん、僕の“お兄 ちゃん”なの?」
「ちが………………いいよ、もうなんでも(汗)そうだよ、俺はダン のお兄ちゃんだよ。」


ダンの期待の眼差しに負けたユーリは、こうして新た に弟が出来てしまったのだった。









とんでもな い二人を両親にもってしまったユーリの苦悩は、まだまだ続きそうである。



















ー 愛されているということを忘れないで?人は、それさえあれば生きてゆけるのだからー



















[ あとがき]
10000HITお礼フリー夢Cほのぼの。
アンケリク「ヒロインに 隠し子疑惑」でした☆
リクしてくださった方、ありがとうございました。
コン ラートとさんの家族は、これからも続々と増えそうな勢いですね(笑)