いつものように血盟城の廊下を歩いてい
たら、すれ違った兵士にこう声をかけられた。
「俺、“トト”は大穴
狙いでヴォルフラムさんに賭けてるんで、頑張って下さいよ!!」
………………………………トト??
「“ト
ト”?何それ?“陛下トト”の私バージョンてこと?」
「どうやらそうらしいな。」
は本から顔を上げて、ソファーで新聞を読んでいるヴォルフラムの方
を見た。
「………………お前はさっきから、何を熱心に読んでるんだ?」
「毒女アニシナと不死身の交響楽団。毒女アニシナシリーズの最新作〜☆」
「自分の部屋で読め!!」
ヴォルフラムはソファーから立ち上がっ
て、自分のベットに寝転がっているを、思い切り引っ張る。
「落ち
るってば〜!!部屋で一人で読むと怖いから、わ
ざわざヴォルフラムの部屋にまで来たんでしょ〜?」
が可愛らしく小
さく口を尖らせる。
「だから何で僕の部屋なんだ!?」
「だってヴォル
フの部屋が一番落ち着くんだもん♪」
がにっこりと微笑むと、ヴォル
フラムの顔が一気に真っ赤になった。
「………………静かにしてるなら、も
う少しだけならおいてやっても良いぞ。」
ヴォルフラムはちょっと嬉しそう
に(本人は普通にしてるつもり)、ぷいっと顔を背けた。
『………………可愛
いやつv』
口に出してしまうと部屋を追い出されかねないので、は心
の中で小さくほくそ笑んだ。
「しっかし皆本当に暇よね〜。まぁ、暇は平和
な証拠だし、良いっちゃあ良いんだろうけど。」
「兵士には娯楽が少ないからな。つ
まらんことにでもすぐ夢中になる。」
そう言いながら再び新聞を開いたヴォ
ルフラムが次のページをめくった瞬間、呆れたように小さく呟いた。
「………………“ト
ト”の集計結果が載ってる。」
「は!?新聞にまで載ってるわけ!?馬っ
鹿じゃないの!?」
は慌ててヴォルフラムの所に駆け寄った。
『現時点での最有力候補はコンラート氏だが、ユーリ陛下の票が急激な伸び
を見せている。』
ヴォルフラムの後ろから新聞をのぞき込んだが、記
事の内容を声に出して読み上げる。
『一時は最有力株だったギュンター氏は
ユーリ陛下の着任より、低下の一途を辿っている。』
「………………ギュン
ター、最有力株だったの?」
は苦虫を噛み潰した様な顔で、ヴォルフ
ラムに尋ねる。
「僕に聞くな!僕に!」
『ヨザック氏は安定し
た人気を保っており、グウェンダル氏も根強い人気を誇っている。』
「ふ〜
ん。あ、次はヴォルフが載ってるよ。」
『ヴォルフラム氏の人気は相変わら
ず停滞ぎみ。“坊ちゃんとって、仲良し姉弟って感じっすよね〜”
という某氏
の証言に、賛同する者も数
多い。』
「誰が姉弟だ!!」
「ヨザ………………明らかにヨ
ザだ………………(汗)」
は、軽いのりで記者のインタビューに応じる
幼なじみを想像して、頭が痛くなった。
「結局、1位がコンラートで2位が
ユーリ、3位がヨザで4位がグウェンで5位がギュンター………………」
「何で
僕が最下位なんだ!?」
「私に言わないでよ。(汗)」
ヴォルフラ
ムはその集計結果に納得いかない様子で、怒りを露わにする。
「今すぐ
この新聞社に行って、文句を言ってやる!!」
「ちょっ!落ち着いてよヴォル
フ!!これはあくまで他人の予想であって、実際は違うってば!!
もしかしたらヴォルフ
がブッチ切りで1位かもしれないし!?」
「もしかしたらとは何だ!!もしかし
ないと僕はお前の一番じゃないのか!?」
「深く考えすぎだってば〜!!(汗)」
完全に頭に血が昇って暴走しだしたヴォルフラムを、は精一杯宥
めようとする。
「順番なんて関係ないでしょ!?私がヴォルフを大好きって
ことには変わりはないんだから!!ね?」
「………………お前は僕をからかっている
のか?」
「え?」
急にヴォルフラムの声のトーンが下がり、表情が真剣
なものになる。
「お前が好きなのはコンラートなんだろ!?軽々しく
“大好き”だなんて言うな!!お前はいつだって嘘ばっかりだ!!」
「嘘なんてつい
てないわ!!」
「逆ギレするな!!」
「逆ギレはどっちよ!?私が好きだって
言ってるんだから、素直に認めなさいよ!!」
「部屋にいないと思ったら、
ヴォルフの部屋で二人で何を喧嘩してるんだ?」
突然、コンラートの声が二
人の言い争いを遮った。
声がした方を二人が一斉に振り向くと、を探しに来た
コンラートが苦笑いをしながら立っていた。
「そうだ!!元はといえ
ば、お前が悪いんだぞ!!コンラート!!」
「は?」
突然話題を
振られたコンラートは、全く訳
がわからないといった様子である。
「そうよ!!大体何でコンラートが
1位なのよ!!皆私の何を見てそう評価してるわけ!?」
「はぁ??」
「「とにかくコンラートが全部悪い!!」」
「ちょっ、ちょっと二人
とも落ち着けよ!!」
全く状況の把握が出来ないコンラートは、ただ焦るし
かなかった。
「何か、もうよくわかんないけど、とりあえず、私、帰
る!!」
パニックを起こして、自分が何に怒っているのかさえわから
なくなってしまったは、
大声でそう叫ぶと一目散に部屋を出ていった。
「!?待て!!俺はお前を探しに来………………ってえ!?
」
ヴォルフラムに軍服の襟足の所を掴まれ、コンラートは後ろにこけ
そうになった。
「………………何だ?ヴォルフ。」
「お前にだけは
は渡さないからな!!」
ヴォルフラムはそう叫ぶと、コンラー
トを無理矢理部屋から押しだして、さ
っさと鍵を閉めてしまった。
「………………何なんだよ一体(汗)」
お子様二人に散々振り回されたコンラートは、理不尽な八つ当たりにも、怒
り返す元気さえ残っていないのであった。
ー
嘘なんかじゃないわ。みんな、おんなじくらい大好きなのよー
[
あとがき]
アンケリク「コンラートvsヴォルフラム」でした☆
リクしてくだ
さった椥乃萠様、ありがとうございましたm(_ _)m
リクでは甘々ご希望だったのです
が、全く甘くなくてすいません(>_<)
ギャグ+αシリアスですね(汗)
良かったら
感想などいただけたら幸せです♪