Q あなたの“忘れられない人”は誰で すか??
「………………俺、こういうのっ
て、漫画の中だけかと思ってた………………。」
「??何が??」
下駄箱を
開けた途端に、雪崩のごとく床に流れ落ちた沢山の手紙を拾いながら、
は不思議
そうな表情で有利を見上げた。
「いやだから〜下駄箱に溢れんばかりのラブ
レターとか、完全に漫画とかドラマの世界じゃん!!」
「そんなこと私に言われても
………………」
少し困った様な顔で手紙を鞄の中にしまうと、有利の
背を押して歩きだした。
「ほら、授業に遅れるよ!!早く教室行こ??」
「あ、あぁ。」
下駄箱を見つめる有利を急かすよう
にして、は有利の前を歩きだした。
「………………お前ってさ、彼氏とか
作んないの??」
「は?
?何よ急に。」
は少し足を緩めて有利が追いついて来るのを待ち、二人
の肩が並んだ所で再び足を進める。
「いや、ほら、お前って凄いモテるしさ
〜、相手何て選り取りみどりじゃん??
この間だってバスケ部のキャプテンに告ら
れてたしさ。」
「バスケ部のキャプテン………………??」
覚え
がないといった様子で首を傾げたと思ったら、急にひらめいたように手を叩いた。
「あぁ!!あの、見た目はヨザなのに中身はコンラートな人か!!」
「………………ヨザ??コン??何それ??」
「こっちの話、こっちの話〜☆」
は笑いをかみ殺しつつ、有利の背中をバンバンと叩く。
「??ともかく、そのキャプテンって凄い人気あるじゃん??実際、男の俺が見ても格好
良いしさ、ワイルド系で。」
「まぁ、確かに皆に“振るなんてもったいない!!”っ
て言われたケドね〜」
は照れくさそうに笑いながら、小さく頭をかい
た。
「何かお前ってイマイチ恋
愛方面にうといというか“女”っつ〜自覚がないというか、アバウトな生き方してるよな
〜(汗)
お前だってその内結婚とかするんだろ?」
「結婚ね〜………………」
は、廊下の窓から遠くの方の空をぼんやり見つめながら、果てなく続く
自分の“これから”に思いをはせた。
「有利が“戻った後”、かぁ…………
……」
有利が眞魔国に戻った後………………そんなこと全く考えたことがなかった。
いや、考えたくなかったのかもしれない。
今の自分は“有利のためだ
け”にこの世界で生きているようなものなのだ。
有利がいないこの世界に、果たして
自分が生きている価値があるのだろうか?
有利が去った後も、自分は他の人
間たちの何倍もの遅いペースで年を取る。
そんな自分に、普通の男性との
“恋愛”そして“結婚”など、一時の戯れ事でしかあり得ない。
本当の“愛”だ
“恋”だというものは、この先一生出会うことは
ないだろう。
心に残る微かな“彼”との思い出だけが、の“唯一の生きた愛の証”。
「こっちに来たら、忘れられると思ったのにな………………」
「………………忘れら
れない人………………が、いるのか??」
急におとなしくなったを気遣
うように、有利が心配そうな顔での顔をのぞき込んだ。
「………………
昔の話よ。」
“昔の話”なんかじゃない。もし本当にそうなら、こんなにも胸が痛むハズがない。
忘れるどころか、むしろ、より鮮やかに蘇る美しい思い出たち。
長い自分の
人生の中では、“一瞬”ほどの時間が“永遠”だと信じていた愚かな自分。
「でもさ、長い人生の中で短い青春時代なんて一瞬だ
ぞ??思い切り楽しまなくちゃ損だって!!」
「………………有利の“一瞬”は私に
とっての“永遠”なのよ………………」
「??何か言ったか??」
有利
に聞こえない様に小さくそう呟いたは、明るい表情を作るといきなり走り出した。
「何でもない!!ほら、チャイム鳴っちゃったよ!!早く!!」
「
うぉっ!?あぁ!!自分だけズリぃぞ!!」
の後を追いかけて走
り出した有利は、の笑顔にほのかに違和感を感じつつも、
いつまでもこんな日が
続くと信じていたのだった。
前を走る、無邪気な友人の心の闇に気づかないまま………………
ー
A、私の“忘れられない人”は“忘れたくない人”です。ー
[
あとがき]
4ヶ月ぶり………………?のUPです(死)
こんな奴の小説でも、長い
間心待ちにして下さって
いた皆様、
本当にありがとうございますm(_ _)m
今回のお話は最後の“忘れられ
ない人”は“忘れたくない人”です。
という一文を書きたいがために考えたと言って
も過言ではありません(笑)
久々なので書き方忘れた(オイ)部分もあり、
いつも以
上につたない文章ですが、
少しでも楽しんで頂ければ幸せです。