君が笑えば、地球も笑う。君が笑えば、 僕も笑う。
「じゃあ有利は、またあなた
と一緒の時に?」
「うん。銭湯の風呂に、突然吸い込まれたみたいなんだ。」
「やっぱり、あなたと一緒だと、何かそういう“力”がはたらくのかし
ら。」
それは、渋谷が二度目に眞魔国に渡った後のこと。
元々学校も違
い、と、これといった接点がない僕は、“渋谷の近況報告”という理由をつけて、定
期的にと会っていた。
ずっとつきっきりで渋谷を守っていた彼女だが、高校は渋
谷と一緒に学校に通うことになり、
学生としての努めも果たさなくてはならなくなっ
た。
だから、が都合の悪い場合は、僕が渋谷についているという約束を交わして
いた。
僕は、少しでもの負担を減らせるよう、そして、少しでも渋谷とを離
すように、
休日は出きる限り渋谷と過ごすよう
にした。
「私はてっきり、一度行ったらもう二度と帰って来ないものだと
思ってたの。だから、何だか拍子抜けしちゃう。」
君の口から渋谷のことが
出てくる度、何とも言えない焦燥感が僕を襲う。
「でも、としては、出
きる限り一緒にいて欲しいんじゃないの?」
僕がからかい半分でそう尋ねる
と、は何も言わずに、ただ、寂しそうに微笑んだ。
「………………有利
は私のものじゃないもの。眞魔国の皆のものだもの。仕方ないわ。」
………………僕は、一体何を期待していたのだろう?
“有利がいなくても、あなたがいれば
良いわ”、とでも言われたかったのだろうか?
………………そんなこと、地球がひっ
くり返ったってありえないのに。
僕が渋谷の代わりになんて、なれっこないのに。
いつだっては、渋谷が最優先で生きている。
それは、初めて君と出
会ったあの中学の春から、全く変わっていない。
「ねぇ、初代魔王陛下って
どんな方だったの?」
は、今思い出したかのように、突然話をかえてきた。
「う〜ん、そうだ
なぁ。優しくて、正義感が強くて………………僕は、彼がとっても好きだったよ。」
「………………有利もなれるかな?初代魔王陛下みたいな、立派な王になれるかな?」
自分に問いかけるように小さく呟いた彼女に、僕は、優しく返事をした。
「きっと、いや、絶対に渋谷なら大丈夫だよ。」
「………………そうだ
よね。ありがとう。」
は目を細めて、美しく笑った。
「渋
谷が魔王として、完全にあちらに行ってしまったら、君はここで“”として生き
て行くの?
“=”は、捨ててしまっても良いの?」
の顔から、先ほどまでの笑みが消え、黙り込んでしまう。
「………………“=”は、向こうにいる私の大切な人たちの中で、永遠に生き続ける
わ。
でも、“”はどうなるのかしら?有利の友人としての“”
は、もう必要ないもの………………。」
「“”は、必要だよ。」
「え?」
即座に否定した僕を、が
驚いた顔で見上げた。
「僕は、“=”は知らない。でも、
“”っていう、可愛い友人はいるけどね。」
そう言って僕は、軽く
ウインクをした。
「君の方はどう?君にとって僕って、何?“皆に崇め奉ら
れてる大賢者様”なのかい?」
は、瞳を大きく開いて僕を見つめた。
「………………やっぱり、あなたは凄いわ。」
そうぽつりと呟
くと、も僕につられて微笑んだ。
「そりゃ、“大賢者様”っていったら
眞魔国の伝説の男ですもの、最初はミーハー心もあったわ?」
そう言っては照れくさそうに笑う。
「でも、私にとってあなたは、掛け替えのない友
人の“村田健”なのよね。」
は、やっと見つけた捜し物を、大事に包む
ように目を閉じた。
「………………ありがとう。」
「へ?お礼を言うの
は私の方よ!本当にあり
がとうね、ムラケン。」
小さくお礼を言った俺を、は不思議そうに見つ
めた。
「私もそろそろ、有利以外の生き甲斐を見つけなきゃいけないのかも
しれないわね〜。」
その台詞を聞いた瞬間、
僕の頭の中が一気にクリアになったような感覚がした。
そうなんだ。そうだったんだ。僕はずっと渋
谷に嫉妬してたんだ。
無条件で彼女に愛される渋谷が、とても妬ましかったんだ。
“=”に大切な人が沢山いるのはわかっていた。でも、“”
くらい、僕が独り占めしたかった。
「いつか、君に何よりも大切な人が現れ
るまで、僕が“”の生き甲斐にはなれないかな?」
「??何言ってるのよ。
さっき言ったでしょ?ムラケンは、私にとって掛け替えのない存在だって。
とっくの昔
に、あなたも私の生き甲斐よ?」
精一杯の勇気を振り絞って尋ねた僕に、は、さらりと言ってのけた。
「やっぱり君にはかなわないや。」
「え〜!?何よ!!どういう意味だこら〜!!」
そう言って笑った彼女は、
太陽みたいだと思った。
ー
僕を照らすのは君。やっぱり君は僕の太陽なんだー
[
あとがき]
アンケリク「ヒロインに片思いのムラケン(甘々)」とのリクでした☆
無記名だったのですが、リクして下さった方、ありがとうございました!よろしければ、
感想など頂けると喜びます(^O^)
甘々……ではないですね(死)シリアスちっくになっ
てしまいました(汗)
まぁ、片思いですし、甘くしすぎたらヒロインがただの八方美人
になってしまうので控えめな感じで☆(言い訳臭いなぁ汗)