愛がたっぷり詰まった料理を、さぁ、召 し上がれ♪











 3 料理〜君のために 〜











「………………和食が食べたい………………」


ある日の朝食中に、パンを意味なくちぎりながら、ユーリがぽ つりと呟いた。


「あ!別にここの料理が不味い、ってわけじゃないよ!?………………でもこう毎日洋食じゃぁ、
 健康な日本男子としては、たまには米と味噌 汁が食べたくなるんだよなぁ〜」
、俺も食べてみたいよ。日本食。」


コンラートも、物欲しそうにを見つめる。


「何で私に言 うんですか!?(汗)」
「眞魔国で日本料理作れるのって、しかいないじゃん? お前、毎日学校に弁当持って来てたし。」
「そりゃ15年も日本に一人で住ん でりゃ、料理くらい出来るけど………………」
「じゃあ決まりな!俺、コロッケが食 べたい!!」


ユーリは目を輝かせて、に懇願する。


「………………しょうがないは ね!愛する息子の為に、母がひと肌脱ぎますか☆」
誰がっ!!………………もう息子でいいよ。(泣)」


こうしては愛する息子のために、久し ぶりに日本料理に挑戦することになった。



















「とりあえず大体の材料は揃ったわね。米は流石になかったから麦ご飯だけど………………ぅへっ!?


急に、の首もとのエプロンの紐が解けた。


「ちょっ!!コンラート!!」
「こういうの見ると、解きたくなるんだ よ。男のロマンってやつかな♪」


コンラートは楽しそうに、たった今自分が 解いたばかりの紐を器用に結ぶ。


「邪魔するなら出てってよね!!」
「しないよ。父だって、やっぱり母の家事は手伝わなきゃ、だろ?」
「……………… 大人しくしててよね!!ほら、ジャガイモの皮を剥 いて!!」


はコンラートにジャガイモと皮剥き機を渡すと、自らは米 をとぎながら楽しそうに歌いだした。


「いざ進めや〜キッチーン♪目指すは 〜ジャガイモ〜♪ゆ〜でたら皮を剥い〜て〜ぐにぐにと潰せ〜♪」
「………………そ れ、何の歌?」
「伝説の“アニシナに見せたくない(真似したがるから)子供番組 NO1”アニメのOPよ!
 これを歌ってるだけで、気が付けばコロッケが出来上 がってるのよ!」
「………………へぇ。」


微妙に納得していないコン ラートを横目に、はなおも作業を続ける。


「味噌汁は豆腐を入れた かったんだけど、流石に大豆から作る気力はないから、ワカメかな〜。」
「………………懐かしいな。」
「へ?」


コンラートは、皮を剥きながら楽しそうに 微笑んだ。


「昔はよくこうして、俺もがお菓子を作るのを手伝ってた じゃないか?
 ヨザと父さんは、手伝いもしないくせに、ちょっかいかけに来るから に怒られてさ。」
「………………懐かしいわね。」


は作業の手を止めて、少し切な そうな顔でコンラートを見る。


「地球で一人暮らしを始めたとき、なかなか 一人分の食事を作るのに慣れなかったの。
 私一人分って、もの凄く味気ないの よ?」


は一息つくと、気を取り直したように、再び作業を始める。


「特にあなたとヨザは食べ盛りで、量がはんぱじゃなかったしね。それが慣 れちゃってれから、
 ついつい作り過ぎちゃったり、4人分の味付けしちゃって辛く なっちゃったり。」
「でも、成人してからは、眞魔国でも一人暮らしはしてただろ う?」


不思議そうにコンラートが小首を傾げる。


「そりゃして たけど、あなたとヨザが毎日ご飯食べに来てたんだから、結局ルッテンベルクにいる時と 変わらなかったわよ。」


は呆れたようにため息をついた。


「そうだったっけ?」
「そうだったわよ!もう!」


は肘でコンラートのわき腹をつついた。


「………………………………ありがとう。」
「??何が??」
「私が一人 で寂しくてたまらないことを二人ともわかってたから、気を使って毎日来てくれてたのよ ね?
 凄く、凄く嬉しかったの。ありがとう。」


は本当に嬉しそ うに、コンラートに笑いかけた。


「………………はぁ。はわかってな いな。」


その台詞を聞いて、今度はコンラートがため息をつきながら肩を軽 く上げた。


がいないと、寂しくて駄目だったのは俺たちの方だよ。 だから毎日通ってたんだ。」
「………………お互い様、だったみたいね。」


そう言っては少し照れくさそうに笑った。


〜ま だ〜??俺、お腹すき過ぎて死にそ〜」
「はいはい。もうじき出きるから、もう ちょっと待っててね。ゆ〜ちゃん♪」


小学生のように、台所に晩ご飯の様子 見に来たユーリに、が包丁片手に軽くウインクする。


「……………… うちの母さんのモノマネは止めろよな! 微妙に似てるから、余計に気持ち悪いんだよ〜(汗)」
「まぁっ!ママのこと気持ち悪 いだなんて!ゆ〜ちゃん!!不良だわ!」
「わかったわかった!もう邪魔しないか ら!あっちで大人しく待ってるよ!」


そう言ってユーリは、逃げるように 戻って行った。


「流石、母は強いね。」
「当たり前田のクラッカーよ! ほら、ラストスパートよ☆コンラートも手伝って。」
「あぁ。(何か微妙に口調が 戻ってないし………………)」



















「うん!うまい!!」


の料理を一口食べたユーリが、感嘆のため息を もらした。


「それは良かった☆」


も得意気に胸を張る。


「コロッケマジでうまいよ!!味噌汁もちゃんとダシがきいてるし!!まぁ麦ご飯なのが玉に傷だけど………………」
「ないもんはしょうがないじゃな い。そんなに食べたかったらゆ〜ちゃんが田植えしてよね!」
「ゆ〜ちゃん言うな〜!!」


すかさずユーリのツッコミが入る。


「まぁとりあえず、ありがとうな、。」
「良いってことよ☆可愛 い息子のためならば、母は何でも出来ちゃうのですよ♪」
「………………もう 否定する気も失せて来たよ(涙)」


想い人に息子扱いされてしまう不幸な少年 (職業魔王)の一日は、今日もこうして終わりを迎えたのでありました。



















ー あなたが笑って“美味しい”と言ってくれるだけで、私は天にも昇る気持ちになれるのー



















[ あとがき]
私も外国に旅行に行った時に、凄く日本食が食べたくなったりしたので、
ユーリもやっぱり日本食が恋しくなるんじゃないかなぁ〜と思って書きました。
私自身は、やれと言われたらやりますが、自ら進んで料理はしませんね(笑)
出来ない わけでもないん ですが、“出来る”と“好きでやる”は別ですしね(^_^;)