私が初めてギュンターを見たとき、
こんなにも美しい人が、この世に存在するものなのかと思ったの。
「、こちらはフォンクライス
ト卿ギュンター。俺の剣の先生でもある人だ。」
そうやってコンラートに紹
介されたギュンターは、まるで、絵本の中の王子様みたいだった。
「お前
は、乗馬だけは、昔からからきし駄目だっただろう?だからギュンターに頼んだんだ。」
そうなのだ。
昔から何でもそつなくこなしてきただったが、どう
してか、乗馬だけはからっきし出来なかった。
軍人が馬に乗れないなど言語道断であ
り、見かねたコンラートが特別に先生を探して来てくれたのだった。
それが、コン
ラートの剣の先生でもあったギュンターだった。
「さん、至らない点
もございますが、よろしくお願いしますね。
それにしても、噂には聞いていました
が、本当に美しい黒髪ですね。」
そう言って微笑んだギュンターを見て、は頬を真っ赤に染めた。
身内以外で自分の紙を“美しい”と言ってくれたのは、
ギュンターが初めてだった。
「こ、こちらこそよろしくお願いします。」
これがとギュンターの出会いだった。
「そう、そこに足をかけて、体重は右側に。」
ギュンターの教え方はとても
優しく丁寧でそれまで、コンラートに抱き上げてもらわないと、
馬にまたがることさえ出来
なかったが、一人でも馬に乗れるまでになった。
そして、を馬に乗せたあ
と、ギュンターも軽やかにその後ろに飛び乗った。
「では、手綱を両手で
握ってください。」
の耳元でギュンターが優しく囁く。
『うひゃ〜背中がくっついてるってば〜!!』
必然的に密着するの背
中とギュンターの胸から、互いの体温がダイレクトに伝わる。
は、自分の心音がギュンターにまで伝わってしまうのではないかと、気が気ではな
かった。
こうしてギュンターの特訓は毎日行われていた。
そんなある日のことだった。
その日はだけで、裏の森を一周して帰って来ることになっていた。
「ここさえ攻
略したら、皆に認めてもらえるわ。そしたら遠征にも連れて行ってもらえる!!」
裏の森は道が険しく、一種の試験のようなものであったため、はいつ
になくはりきっていた。
「ここら辺が一番奥かしら?そろそろ引き返して…
……………きゃっ!?」
突然、前を兎が横切り、それに馬が驚い
て、を振り落とした。
「いったあああああ!!って!!
ちょっ!!置いていくなバカ馬〜!!」
無情にも、馬はを放ったらか
しにして、自分だけ逃げてしまった。
「もうこうなったら自力で出ていくし
か………………痛ったあ!!」
振り落とされた時に強く足をひねったようで、は立つことすら出来な
かった。
「もう!!信じられない!!」
いつの間にか、日は沈
み、野生の動物たちのうめき声があたりを包んでいた。
「………………私っ
て何でこんなに駄目なんだろう?馬ひとつ満足に乗りこなせないで、
どうして大切な人た
ちを守れるって言うのよ?本当に情けない………………」
は膝
を抱えてうつむいた。
「私なんか、魔物に食べられちゃえば良いんだわ。」
恐怖と悔しさで涙が次々に溢れて止まらない。
『、これだけは忘れないで。君は俺
が、必ず守るから…。』
「………………ウソ
ツキ。」
このまま自分はここで死んでしまうのだろうか?
ま
だ、コンラートに想いも伝えていないのに?
「………………いやだ…………
……いやだ!!いやだよ!!こんな所で死にたくない!!
コンラート!!コンラート!!
ヨザック!!助けてよぉ!!ギュンター!!」
「!?どこですか!?」
遠くの方で、微かな
明かりがちらつく。
「ギュンター!?こっち!!こっちよ!!」
は上半身を必死に伸ばして、大きく手を振った。
「!!ああ良かった!!」
ギュンターはを見つけると、
馬から飛び降りてすぐさまを抱きしめた。
「あなたの馬が、突然私の
所に突進してきて驚いたんですよ!?乗ってるはずのあなたはいないし!!
どれだけ心配
したと思ってるんです!?」
「………………ごめんなさい。」
は、普段は優しく温厚なギュンターに怒られ、しゅんとしてしまった。
「………………あなたが無事で本当に良かった。」
“ほっ”と優しくため息をつ
くと、ギュンターはを抱え上げて、自分の馬に乗せた。
「しっかりつ
かまってて下さいよ。」
ギュンターはの後ろにまたがると、ゆっくりと馬を歩かせた。
「………………ね、ギュンター?」
「何です??」
は自分の頭をギュン
ターの胸に預けると、静かに喋り出した。
「あのね?今さ、ギュンターが、
白馬に乗った王子様みたいに見えた。」
「??この馬は赤毛ですよ?」
「乙女に
は白く見えるの〜!!」
そう言っては小さく頬を膨らませる。
「………………初めて会った時もね?なんて綺麗な人なんだろう。絵本の中
の王子様みたいだなぁ、って思ったの。」
うっとりとした表情で語る
の後ろで、ギュンターがくすくすと笑う。
「何さ〜!そんなにおかしい?」
「いいえ、奇遇だな、と思って。私も初めてあなたを見たとき、こんなにも美しい人
が、
この世に存在するものなのかと思ったんですよ。」
そう言って柔らかく
微笑んだギュンターの優しい眼差しが、一瞬で私の心をかっさらって行ったの。
「私もあの頃は若かったわよね〜。ギュンターな
んかにときめいちゃってさ〜☆」
「陛下ああああああああああっ!!何処へ行か
れたのですかああああああああああ!?」
机にへばるの後ろ
を、ギュンターがもの凄い早さで走り抜ける。
「でも、私、今のギュンター
も、これはこれで好きだわ。」
「??一体なんの話をしているのです?ほら、あなた
も一緒に陛下を探して下さい!!」
「だ〜か〜ら〜、ユーリはコンラートと出かけ
たってば〜」
「陛下ああああああああああ!!」
「………………聞い
ちゃいね〜し。」
それは、美しい王補佐であるフォンクライスト卿ギュン
ターが、“陛下バカ”になる前のお話☆
ー
どんなあなたでも、私は変わらず大好きよ?ー
[
あとがき]
アンケリク「格好良く
て甘々なギュンター」でした☆リクして下さった方、ありがとうございました!!
初
ギュンター夢ですよ!!しかし真面目ギュンターはマジで難しいですよ!!(汗)
乗馬
の先生ネタでいこう!!というのはすぐに思いついたんですが、そこからはなかなか進み
ませんでした(汗)
私自身ギュンタースキーなので、書いていてとっても楽しかったで
すvvv良かったら感想聞かせてくださいね☆