いつだって君の側にいるよ。
いつ
だって君を見守っているよ。
「次の時間
の体育、男子は野球なんだって〜」
教室で本を読んでいると、クラスの女の
子のそんな声が聞こえて来た。
何だか胸騒ぎがして顔を上げると、案の定、
さっきまで横で机にへばりついて寝ていた筈の有利がいなくなっていた。
「さん、次の体育、テニスだって。一緒に着替えに………………って、
どこ行くの?もう授業始まっちゃうよ?」
「ごめん!ちょっとヤボ用!」
慌てて本を閉じると、クラスメートの制止もきかずに、は教室を飛び出
した。
………………何だろう?凄く気分が悪い。
頭がフラフラするし、目眩までする。
ついさっきまで平気だったのに、どう
しちゃったんだ?俺。
『お前には野球をやる資格がない!!』
『そんな事も出来ないなら辞めてしまえ!!』
………………ヤバい………………もう、駄目だ………………
「サボろ!!」
「!?」
体育更衣室の前でしゃがみこんでいた有利の頭の上に、突然、元気な声が
降ってきた。
「!?」
「ほら、行こ!!」
そう言うと
は、有利の手を引っ張って、無理矢理連れ出した。
「え!?ちょっ!?
授業は!?」
「だからサボるって言ったでしょ?黙ってついて来る!!」
なすがままにに誘拐された有利は、学校の近くにある公園まで連行さ
れた。
「………………何で公園?普通ゲーセ
ンとか、コンビニとかさ〜」
「いつの時代の不良よ、それ(汗)」
呆れた
顔でため息をついた後、は少し寂しそうな顔で小さく呟いた。
「私“た
ち”の思
い出の場所なの。」
「へ?」
「あ、ううん!何でもない!今、自販機でジュース
買って来るね!」
は慌ててごまかすと、ぱたぱたと公園の隅にある自販
機の方に走って行った。
「………………って、滅茶苦茶パワフルだなぁ
(汗)」
有利は額の汗を拭うと、近くのベンチに腰掛けた。
入学
式で隣になって以来、それなりに仲を深めて来た二人だったが、
学校の外で二人きり
になるなんて、初めてのことだった。
「………………不思議だな。なんだ
か、ちょっとスッキリしたかも………………」
有利がベンチにもたれて空を
見上げると、木の葉の隙間から眩しい光が差し込んで来る。
「………………
気持ち良い………………」
さっきまでの息苦しさが、嘘みたいに消えていく
のを有利は感じていた。
「無理することないよ。」
は、
買って来たばかりのジュースの缶を、有利の頬にくっつけた。
「………………やっぱって、エスパー?」
「さぁて?どうでしょ〜ね〜?」
は意味深な
笑みを浮かべて、有利が座るベンチの前に立った。
「………………まだ、心
の整理が出来てないんだったら、無理しちゃ駄目よ。」
は有利のおデコ
を、人差し指でぴんっと弾いた。
「でも、本当はやりたかったんでしょ?野
球。」
「………………………………。」
有利は無言で、小さく首を縦に
振った。
それを見たは、満足そうににっこりと微笑んだ。
「次の授
業は出なよ♪」
は有利の頭をがしがしと撫でると、ぽいっと有利にグ
ローブを渡した。
「??どうしたの?このグローブ。」
「さっき倉庫か
らぱくってきた☆キャッチボールしよ!!」
「は!?学校の備品を勝手に!?」
「いいからいいから☆とりゃっ!!」
は手に持ったボール
を、力一杯投げつけた。
「うわっ!!適当だなおい!!(汗)」
「うるさいな〜!これでも結構上達したんだからね〜!!」
は小さく頬
を膨らませると、ボールを催促するように手を大きく振る。
「わっけわかん
ね〜やつ」
有利は、に向かって軽くボールを投げると、楽しそうに笑っ
た。
「野球は、部活じゃなくたってできるよ!」
「え?」
「やる気
さえあれば、どういう形だって野球はできるよ!」
は渾身の力を込めて
ボールを投げた。
「だから、諦めないで!」
「………………ありが
と。」
有利はの投げたボールをキャッチすると、照れくさそうに微笑ん
だ。
この時、有利の中で確実に小さな恋が花開いたのを、
も、有利
自身も、気付くことはなかった。
ー
君はいつだって僕の味方。僕はいつだって君の味方。ー
[
あとがき]
アンケリク「地球でのユーリとヒロインの接触話」でした☆
普通の学生同士で出
会う………………というご希望だったのですが、
有利ともムラケンとも、既に別の話
で初対面は済ましてしまっていたので、こういう形にさせていただきました。
ご希望
に添えませんですいませんでしたm(_ _)m
リクしてくださった希望様、ありがとうご
ざいました!