今も胸に光る、小さな輝き………………











 46 我侭〜君の本音〜











あれは、いつ頃だったろう?
確 か、私とコンラートが、軍に入隊して、少し経った頃のことだった。


「………………コ、コンラート!!」


は大きく深呼吸をすると、覚悟を決め て、前を歩いていたコンラートを呼び止めた。


「あぁ、か。どうかし たのか?」


コンラートは、の方を振り返ると、ゆっくりと近づいてき た。


「あ、あのね、ギーゼラから聞いたんだけど、今晩、町でお祭りがある らしいの!!」


は、自分の手をきつく握りしめて、緊張で震える声 を、精一杯絞り出した。


「あぁ、そういえばさっき、ヨザもそんなこと言っ てたなぁ。」


コンラートは、ヨザックからも聞いていた“祭り”に、あまり 興味がない様子だった。


それを 見たは、何だか逃げ出したい気持ちにかられて、一気にまくしたてた。


「そ、それでね、久しぶりだし、一緒に行きたいなぁ〜って思って………………たんだけど、
 や、やっぱ無理だよね!!御免!!忘れて!!」


それだけ言うとは、きびすを返してその場から立ち去ろうとした。


「ちょ、ちょっと待て!まだ何も言ってないだろう?」


訳のわからないコン ラートは、慌てての腕を掴んで引き留めた。


「いや、まさかか ら誘われるとは思わなかったから………………ヨザは残念ながら遅番らしいし、2人で行 こうか。」


完璧に諦めていたは、コンラートの思いがけない台詞を聞 いて、本当に嬉しそうにはしゃいだ。


「ほ、本当に!?じゃ、じゃぁ、私、 私服に着替えて来る!!」
「え?って、まだ昼………………」


すで に走り出していたは、途中で振り返って遠くから叫んだ。


「あ、そう だった☆待ち合わせは6時に城門前ね〜!!」
「あ、いや、そうじゃなく………………まぁ、いいか。と一緒に何処かへ出か けるなんてかなり久しぶりだしな。」


そう呟くと、コンラートは優しい眼差 しで走り去るの背中を見つめていた。



















やったあああああああああ あっ!!!!!!!!!!


は、自分の部屋に駆け込んで扉を 閉めると、幸せを噛みしめた。


「わ〜!!どうしよ!?てゆか服!!最近、 軍服しか着ないから可愛い服なんてないし!!」


重大なことに気づいたは、真っ青になって部屋を飛び出した。



















「ギーゼラ!!服!!服貸して!!お願い!!」
!?急にどうしたの?」


は、親友であるギーゼラの所に駆け込んだ。


「お祭りに 着ていく服〜!!軍服しかないの〜!!」
「………………私だって、軍服しかないわ よ?」


ギーゼラは呆れたように、を軽く小突いた。


「………………そうだよねぇ。」


とギーゼラは互いに顔を見合わせると、何だか 情けなくなってため息をついた。


バタンッ!!!!


!!話は聞いたわよ!!」


扉が急に開いたかと思うと、ツェリが部 屋に飛び込んできた。


げ!?ツェリ様!?(何でここに!?)」
「水くさいわ、!!洋服の事なら、まず私の所に来るべきじゃないかし ら!?」
「あ〜、いや〜、は〜。」
「さぁ!!私の衣装部屋に行くわ よ!!」
勘弁してくださいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ


こう してはツェリに強制連行されたのだった。



















「………………………………母様か??」
「………………………………何も聞かないで。」


明らかにの趣味とは思 ない、ゴージャスな服を着て登場したを見たコンラートは、思わず面食らってし まった。


「………………でも、似合ってるよ 。」
「………………いいよ無理しなくて。とにかく、せっかくなんだから思い切り遊 ぼ!!」


そう言うとは、コンラートの手を引いて、出店の方へ走り出 す。


「待て待て、走るなって。そんなに欲しい物でもあるのか?」


の肩が一瞬震えて、動きが止まった。


「指輪………………。」
「え?」
「指輪が欲しいの。」


は、コンラートの方を 見ないようにして、少し恥ずかしそうに笑った。


「指輪だったら祭りじゃな くて、ちゃんとした店で買った方が良いんじゃないか?」


コンラートが不思 議そうに尋ねる。


「………………ずっと欲しかったの。小さいときからずっ と。キラキラの一杯付いたおもちゃみたいな指輪が。」


はコンラート の腕を離すと、ゆっくりと1人で歩きだした。


「昔は言い出せなかったの。 だってヨザと“コンラト”は食べ物ばっかりで、私だけそんなのが欲しいだなんて、
 何だか恥ずかしくて………………。」
は女の子なんだから、気にしなくって良かったのに。」


が 自分を“コンラト”と呼んだことに気づいたコンラートは、昔の様にの頭をくしゃ くしゃっと撫でた。


「………………だから、成人して、自分でお金を稼げる ようになったら、絶対買おうって思ってたの。
 小さい時からの憧れだったからね。」


「………………じゃあ、せっかくだし、俺がプレゼントするよ。」
「え?え!?だ、駄目だよ!!ごめん!!別にたかるつもりで、コンラート誘ったわけ じゃないのよ!?」
「そんなに否定しなくても、わかってるよ。あ、あそこに丁度ア クセサリー屋がある。さ、行こう。」


そう言って今度は、コンラートがナマ エの手を握って歩き出す。


、どれが欲しい?」


コン ラートは、沢山並べられた指輪を指さして尋ねる。


「………………本当に良 いの?」
は、昔からいつも我慢してばっかりだったろう?だから、初めてお 前が欲しいものを欲しいって、
 俺に言ってくれたのが嬉しい んだ。遠慮しないで言って?」
「彼氏もそう言ってるんだし、彼女さんもお言葉に甘 えなさいって♪」


2人のやりとりを見ていた店の主人が、面白そうに2人を 茶化す。


な!?そんなんじゃありません!!
「初心で可 愛いお嬢さんだね〜お兄さんは幸せものだな〜!!大切にしてやれよ?」
「わかって ますよ。」
「コンラートまで!!」


は、耳まで真っ赤 にして抗議した。


「で?お姉さん、結局どれにする?」
「………………それ。」


は、観念したのか、小さなガラス玉が一杯ついた指輪を指さ した。


「それじゃあ、おじさん、それ下さい。」
「あ、ちょっと待っ て!!あの、それと同じやつ、もう1つ下さい!!」
「??同じやつを2つも買うの か??」


コンラートにきょとんとした瞳で見つめられたは、言い出し にくそうにうつ向いた。


「………………あのね、コンラート。1つだけ、わ がま ま言っても良い?」


素直に自分に甘えてくるに、コンラートは思わず 頬が緩む。


「1つと言わず、何個でも聞くよ。」
「もう!!そう やって、すぐコンラートは私を甘やかそうとするんだから!!」
「お前が甘え てこないから、甘やかしたくなるんだよ。で?何なんだ?」
「………………もう1つ は、私が買うわ。だから、コンラートにも同じのを持ってて欲しいの。
 あ、指に付けろな んて言わないわよ!?てゆか太さ的に、明らかに入らないし!!でもっ…………その…………」
「わかったよ。大切に持ち歩くよ。」
「本当に!?ありが とう!!」


はとびっきりの笑顔をコンラートに返した。
「ところ で、俺、お腹すいたんだけど?」
「あ、私も!!じゃあ次は、腹ごしらえと行 きますか☆」


こうしてとコンラートは、2人仲良く手を繋いで、人混 みの中に消えて言った。



















「ギ ーゼラ、知らね?今日、町の方で祭りがあるから誘おうと思ったんだけど、何処に もいないんだよ〜。」
「??ヨザック??あなた、今日遅番じゃなかったの??コン ラートがそう言ってたから、2人でとっくに出かけたわよ??」
何だって!? 隊長のやつ〜!!!!!!!!!!


まんまとコンラートの策略には まったヨザックは、1人寂しい夜を過ごすのであった………………。


















ー 確かに幸せだった日々………………でも、今はもう、ただの思い出の残骸ー



















[ あとがき]
これは、2人がジュリアと出会う前の、幼なじみ以上恋人未満な時のお話でし た!!
自分自信で3800踏んでしまったことへの、自分へのキリリクです(涙)