今宵、愛し合う恋人たちのもとへ、星の 雪が舞降る。











 藍姫番外編 星降る 夜に











「もうすっかり夜じゃない!景 侍郎ったら、厄介な仕事ばっかり残して行くんだから!!」


またもや、いつ もの気まぐれで出張(観光!?)に行ってしまった景侍郎がいないため、
戸部では、上 司である黄鳳珠と、部下でもあり鳳珠の最愛の恋人でもある藍が、大量の仕事と格闘 していた。


「今夜はここに泊まりこんで、徹夜で仕事かもしれないわね〜」


はぐったりと肩を落とした。


「………………、すまな いが、窓を開けてくれないか?」


もう喋る気力も残っていないのか、鳳珠が ため息をつくように小さく呟いた。


「………………暑いなら、仮面外せばい いのに。」
「………………もう数刻で、お前の兄たちが何気ない顔をして、邪魔しに 来るに決まってるからな。」


仮面で隠れてはいるが、明らかに嫌な顔をしているのがわかる。
の兄 である藍楸瑛は、ことあるごとに戸部を訪れ、二人の邪魔をしに来ていた。


「………………確かに………………。」
「お前は、自分の兄が自分の恋人に見惚れる姿が見た いのか?」
「(それはそれで見たいかも………………)はいはい、開けますってば。」
「(何だ今の間は………………)」


ちょっと不満そうな顔で、はしぶ しぶ窓際に向かう。


「綺麗な月………………今日は良い天気だから、星も綺 麗だわ。」


は、窓から入ってくる空気を思い切り吸い込んだ。


「ねぇ、鳳珠。織姫と彦星のお話、知ってる?」


突然が空 を見上げながら、鳳珠にそう問いかけた。


「一年に一度しか逢えない恋人同 士、というやつか?」


思いがけないの質問に、鳳珠は仕事の手を止め て、窓際に立つの方を見つめる。


「もし、もしもよ?あなたが私と、一 年に一度し か逢えないとしたらどうする?」


「………………そうだな。お前を檻に閉じ こめて、私のもとを離れられないようにするな。」
「………………ロマンチックも へったくれもないわね。」


は呆れ顔で、小さくため息をつく。


「ならお前はどうして欲しい?」


今度は逆に、鳳珠がにそ う尋ねた。


「………………そうねぇ。やっぱり私も檻に閉じこめて欲しいか な☆」


いたずらっぽく笑うと、は再び夜空を見上げた。


「もうすぐその二人が一年ぶりに会える日が来るわ。その日は、お星様がひとつだけ願い を叶えてくれるのよ?
 あなたなら、何をお願いする?」
「私の願いは星に頼ま なくとも、お前が充分叶えてくれるさ。」


そう言うと鳳珠は、人差し指で自 分の唇をとんとんっと叩いた。


………………!!!!


すぐに鳳珠が言わんとすることを理解したは、耳まで真っ赤にな る。


「………………一体何処でそ んな技を覚えてくるのよ?」
「企業秘密だ。で?お前は私の願いを叶えてはくれない のか?」


鳳珠が、意地悪そうにを挑発する。


「………………今回だけだからね!もうこの後、一年間お願いは聞かないんだから!」


は真っ赤な顔でそう言うと、鳳珠の仮面をそっと持ち上げた。


「………………いつの日か、織姫と彦星も、片時も離れずにずっと一緒に暮らせますように。」


“願う”というよりも、“祈る”気持ちで、はそっと鳳珠に口づけ た。









その時、窓の外を流れ星が幾筋も流れた ことに、互いに夢中だった恋人たちが気付くはずもない。



















[ あとがき]
キリリク8888「鳳珠相手でほのぼの、夏のお話」でした☆
キリリクし て下さった、長月汀華様に捧げます!!
こんな駄文でよろしければ、長月様のみお持 ち帰りokです☆
夏っぽく出来たでしょうか?ご希望にそえて なかったらごめんなさい(>_<)
ほの………………ぼの?って感じですね(汗)でも 甘々ってわけでもないですし(滝汗)
少し短くなってしまいましたが、気に入っていた だけたら幸せです(>_<)