狂おしい程の愛おしさと、ほんの少しの 恐怖感











 藍姫番外編参 新たなる物語 〜前編〜











さ ん、今朝から体調が優れないようですが、どうかしました?」


先ほどからし きりにため息をつくを心配して、柚梨が仕事の手を休めて話しかけてきた。
鳳珠 は朝議に出席中で不在のため、現在戸部執務室にいるのは、今日の仕事の準備をしていると柚梨の二人だけである。


「少し食欲がないだけですから、大丈夫です よ。」


無意識のうちに俯いていたは、はっとした様に顔を上げて慌 てて笑顔をつくる。


「あなたはいつもそんなこと言って無理するんですか ら!!この所働き詰めでしたし、
 一度お医者様に診てもらって来たらどうです か?」
「そんな!!お医者様に診ていただくほどのことじゃないですよ!!
 熱 があるわけでもないし、他はいたって健康………………」


そう言いながら、ふと何かに気が付いたの表情が、一瞬にして に真っ青に変わった。


まさか………………!!
さ ん?」
すすすすいません!!やっぱり一度診てもらって来ます!!
「今からですか!?そ、それはかまいませんけど、一体どうし
ちょっと 行って参ります!!


柚梨の声を遮って、は大慌てで部屋を飛び 出していってしまった。


「………………??一体どうしたんでしょう??」


わけのわからない柚梨は、もうじき帰ってくる鳳珠に、
一体何と説明す べきかと考えあぐねるのであった。




















しゅうれぇぇぇぇぇえい!!!!!!!!!
!?」


医師の診察を受けた後、が始めに向かったのは、
府庫で父とお 茶を飲みながら休憩していた、秀麗の 所であった。


「どうしたの?そんなに慌てて。あなたまだ仕事中じゃ
どどどどうしよう!?どうしたら良い!?てゆか何て言えば良いの!?
「ちょっと落ち着いて!!まず、何があったか説明してちょうだい??」


完全に我を失っているに、秀麗は優しく語りかける。


「………………い、今、お医者様が体調悪いから、景侍郎のところに、行けって!!」
「“あなたの”体調が悪そうだから、景侍郎にお医者様に診てもらってくる様に言われた のね?それで?」


言っていることがハチャメチャなの台詞を、秀麗は的 確に修正する。


「い、今、行って、帰って、来た。」
「お医者様はなん て?」
「………………………………。」
「?」
「………………………………」
「一体どうし………………まさか!?
「多分、そのまさか………………」


いつまでも無言を貫くの様子から、
秀麗の頭に思い浮か ぶ 理由は、ただ一つ。


「そのこと、黄尚書には?」
「まだ………………」
「そう………………」


と秀麗は顔を見合わせると、二人揃って大き くため息をついた。


「とりあえず、おめでとう。でも、あなたが素直に喜べ ない理由もわかるから、これ以上は何も言えないわ。」
「うん、わかってる………………」









妊娠


医師から告げられた のは病名ではなく、『おめでとうございます。6週目です。』という一言だった。
本来 なら喜ばしいことではあるが、官吏として中央に勤めているたちにとっては、
手 放しには喜べない事態である。


「育児休暇なんてとったら、絶対に“これだ から女の官吏は”って、
 私だけならまだしも秀麗にまで迷惑がかかるわ!!
  それに、もしこれが原因で、来年の国試から女性の採用が取り消しになったら………………」
、気持ちは嬉しいけど、私なら大丈夫だから。」


小刻み に震える の肩を、秀麗はそっと抱き締める。


「何も心配する必要はないわ。どの道、 これからも女性官吏の登用制度を続けていくなら、どうしても避けて通れない道だもの。
 きっとあなただけじゃなくて、同じ問題にぶつかる人が沢山出て来るわ。」
「でも!!」
「それに、あなたには黄尚書がついてるじゃない。」
「鳳、珠………………??」


秀麗はこくん、と力強く頷く。


「私と黄尚書 で、あなたが胸を張ってここに戻って来れるような環境に整えてみせるわ。きっとよ。」
「秀麗………………」


はごしごしと手の甲で涙を拭うと、大きく深 呼吸をする。


「うん………………よく考えてみる。」
「言い辛いのはわ かるけど、先延ばしにするのはよくないわ。
 尚書にも、今日中に話てしまいなさい ね。」


は、秀麗のその言葉に返事は返さず、小さく頷いた。



















ー 私は今、二度目 の人生の岐路に立っているー



















[ あとがき]
かなり久々の藍姫更新です。(今、更新履歴見てみたら半年ぶりでした…)
そして初の前・後編です(笑)
本当は いっこにまとめるつもりだったんですが、何か書いてるうちにまとまらなくなってき たんで、
切りの良いとこで分けました( つд`)
てか今気付いたけど鳳珠全く出 て来ない…(気付くの遅いから)
いや〜、秀麗が本当よく動いて喋ってくれるんで ついつい頼りっぱになってしまいました(汗)

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