史上初の女性の国試及第者である“紅秀麗”が探花を及第した翌年、
2人目の女性及第者が誕生した。
壱 花姫〜hanahime〜
時は遡ること約一年程前…………
すっかり日も暮れた静かな夜に、
藍将軍宅で、ただならぬ兄妹喧嘩が勃発していた…………。
「何で私は今年受けちゃだめなのよ!?」
藍 楸瑛の末の妹にあたる、藍が、兄である楸瑛に詰め寄る。
「だから何度も言っただろう?今年は龍蓮がやっと受ける気になったんだ。
頼むから
龍蓮に受けさせてやってくれ。」
「だ〜か〜ら〜!!一緒に受けて何が悪い
の!?
どうして私があの”すっとこどっこい”に遠慮なんてしなきゃいけないのよ!!」
確かにすっとこどっこいだ…………と思いながら楸瑛は大 きな溜め息をついた。
「なぁ、。私だってお前の実力
は十分に知っている。だか
らこそ、だ。
藍家から一度に二人も上位及第者を出してみろ、混乱が生じてしまうだろう?
それに、龍蓮はあれでも“一応”お前の兄、お前より先でも当然といえば当然だ。
お前は別に来年でもかまわないだろう?」
「かまうわよ!!秀麗は
“今年”受けるのよ!?今までずっと2人で一緒に頑張って来たの!!
それなのに私
は駄目なんてあんまりだわ!!」
「…………秀麗殿は特別に王に認められて、受
験が可能になったんだ。
そもそもお前とは話しが別だ。」
「…………もうい いわ!!楸瑛兄様なんて大っ嫌いっっ!!!!!!!!」
そう叫ぶと、は泣きながら部屋を出て行った。
「……はぁ、泣きたいのはこっちだよ。兄妹喧嘩に付き合 わせて悪かったな、絳攸。」
たまたま居合せた李絳攸は、 普段はとても仲の良い2人の喧嘩に驚きを隠せずに唖然としていた。
「…………いや、俺のことはいい。それよりも最
後のあれは何だ!?
王は“女の受験者を認める”と言ったんだ!!“秀麗だけ”だ何
てひとことも言ってはいない!!
お前、一体何故そこまでに試験を受けさせよう
としない!?」
絳攸が、を弁護する様に楸瑛をにらん
だ。
すると楸瑛はゆっくりと口を開いた後、唇をきつく噛み締めた。
「……誰が自分の可愛い妹を、あの魔物の巣窟に行かせた がると思う!?」
普段はひょうひょうとした楸瑛が取り乱 したことに絳攸は内心驚いた。
「いくら王が許可したとは
いえ、今までの慣例を無視した“女性官吏”への風当たりは強い…………
いや、むご
いものだろう。そんな所にを…………!!考えただけで吐気がする!!」
その台詞で全てを理解した絳攸は、軽蔑の目で楸瑛を見 た。
「…………つまりこうか。秀麗が今年及第することに
よって、来年のが受ける時はそれが少しは緩和される。
つまり、秀
麗を踏み台代わりにさせるってわけなんだな?」
「…………まぁ、結果的にそういうことになるかもしれないな。」
楸瑛は悪びれる様子もなく、当然の様にそう言い放った。
「…………楸瑛、一つ言っておく。はお前が思っている程"
やわ"じゃない。
ちゃん
と自分の道も知っている。……それだけだ、今日はもう帰る!!」
そう言い捨てると、絳攸は足早に部屋を出て行った。
「…………本当は、来年も再来年もその次も受けさせたく なんてないんだ…………。」
楸瑛は悲しそうにぽつりと呟
いた。
そんな楸瑛の切なる願いは届くことなく、
は翌年、幼い頃からの夢を
叶えることになる。
ー上治四年
国試及第者第一位 状元ー藍 十八歳 女ー
[
あとがき]
とうとう始めることが出来ましたよ彩雲国!!
ずっと書きたかった
のでワクワクドキドキです☆
早く色々なキャラを出して行きたいなぁと思います♪