今でも考えてしまう。本当にこれが、 ユーリにとって一番良い道だったのだろうか
「あらあら、これまた可愛いらしい
暗殺者さんねぇ。」
「!?あたなは何を呑気なことを!!陛下のお命が狙われ
たのですよ!?あぁ私がお側にいながらなんてことに!!」
『大変です!陛
下が暗殺者に狙われて、足に怪我を負われました!』
そんな知らせを受けて
慌てて駆け付けたのだが、どう見ても“大変そう”なのは、
一人で大騒ぎをしている
ギュンターだけである。
まだ小さな暗殺者は、抵抗せずに兵士の腕の中で大
人しくしているし、
命を狙われたという当人はというと、ギーゼラ相手に鼻の下を伸
ばしている。
「ユーリが負傷したって聞いたんだけど、どうやら心配はなさ
そうね。」
「丁度良かった!!〜!!ギュンターどうにかしてくれよ!!
ちょ
っと足捻った位で大袈裟に心配しすぎなんだって!!」
「陛下!!大袈裟なことなど
これっぽっちもございません!!
やはりギーゼラに任せてなどおれませんね!!今すぐに
眞魔国一の名医を!!」
「………………って言ってるけど、ギーゼラ、ユーリの怪我
の具合はどうなの?」
「多少は歩きづらいかもしれませんが、日常生活に支障はあり
ませんよ。」
「なら大丈夫ね。ユーリ、彼女の腕は確かだから心配いらないわ。」
そう言うと、まるで子どもにするように、わしゃわしゃとユーリの頭を撫で
る。
「ちょっ!子ども扱いするなよな〜!」
「ユーリはまだ15歳と364
日だから、十分子どもなんです〜☆」
「それは地球での時間軸だろ〜!本当なら16歳
と120日なんだからな!」
ユーリは、必死にの手を払って抗議をす
る。
しかしそんな必死な姿でさえ、にとっては愛しく思えて仕方がない。
「ちぇっ!そ〜いやさ、さっきから親しげにしてるけど、とギーゼラ
さんって知り合いな
の?」
「えぇ、私とギーゼラはね、」
「ちょおっとあなたたち!!陛下の一大事
に何を呑気に井戸端会議をしてるんですか!?
それよりも!!なんと羨まし
い!!私も陛下の艶やかなお髪に触れたいっ!!き〜っ!!」
「………………ギュン
ター、うるさい。」
「ぬな!?」
は、横でギャーギャー喚きちら
すギュンターの襟首をひっつかむと、扉に向かってずるずると引きずっていく。
「っ!!お離しなさいっ!!」
「コンラート、あとはよろしく
ね。私はコレをアニシナんとこに提供してくるから。」
「え、あ、あぁ。」
「コ
レとは何ですかコレとは!!って、ア ニ シ ナ !?今、アニシナとおっしゃいまし
た!?アアアアニシナと!?
そそそそれだけは勘弁してくださぃぃぃいいいい!!!」
「問答無用!ほら、さっさと歩く!」
「ひっ!?ひぃいいいいいい!?」
ギュンターの叫び声が段々と遠のいていくにつれて、先ほどとは打って変
わって部屋の中は静寂に包まれる。
「………………ギュ、ギュンター大丈夫かな?」
「陛下、心配ならご無用ですよ。義
父様の自業自得ですから。」
ユーリは、あまりのギュンターの取り乱し様に思わ
ず同情してしまったが、
身内のギーゼラはというと、笑顔であっさりと切り捨ててし
まった。
「まぁ、娘さんがそういうなら………………ははっ。」
「ではユーリ、俺たちはに気分転換に外に出かけましょうか。」
「お、
それいいね!筋肉痛は動かしたら治るっていうしな!」
「………………陛下、筋肉痛
と捻挫は違いますからね。」
その後、がゆっくりと落ち着くことが出来たのは、
ユーリとコンラートが、夕
方になって外出から帰って来た頃であった。
「温泉に?」
「あぁ、怪我
の治療も兼ねてユーリを連れて行こうと思う。」
コンラートは、先ほどユー
リに話したプランをさっそくにも提案していた。
「そうね………………最近の
ユーリ、向こうの世界に帰れなくて少し元気がないみたいだし、
良い気分転換になる
わね。」
「………………。」
“地球に帰りたい”
そう口には
出さないものの、日に日にユーリの笑顔は少なくなってきている。
今回ユーリがこち
らに来てから早4ヶ月。
不安になるのも当然である。
「ユーリの意思で
自由に行き来が出来たら良いんでしょうけど、
こればっかりは私たちにもどうにも
出来ないのよね………………」
「ユーリが帰れないってことは、やらなければならな
いことが
まだこの世界に残ってるってことなんだろう。」
「やらなければな
らないこと、か………………」
眞王陛下は、一体ユーリに何を望んでいるの
だろうか?
ー
私たちの明日は、どちらの世界に繋がっているのだろうー
[
あとがき]
とりあえず「あしたマ」編に突入しました。
なかなか話が進まなくてごめんなさい
m(_ _)m