真っ暗な闇の中に差し込む、一筋の光。
白く明るく光り、私の闇を照らし出す。











 25 君の色











「嫌な予感がする………………」
「コンラート?」


無事に合流出来た俺、コンラート、ヴォルフラムの魔 王様御一行は、罪を犯した女性が収容されるという寄場へやって来た。
ニコラによる と、駆け落ちの罪で捕らわれた女性はここに送られるらしい。
つまり、はここ にいる可能性が極めて高いのだ。


不自由な生活を強いられるが、命を落とす 様なことはまずないと聞いて ひとまず安心していた俺たちだったが、
到着した 途端、コンラートが不安そうな面もちでそう呟いたのだった。









「ウェラー卿!!不吉なことを言うな!!」


俺にもたれ掛かるようにして、ヴォルフラムは青白い顔で抗議をする。


「だから言ったろ〜?しん どいなら無理しないでニコラと留守番してたら良かったんだよ。」
「これ位の法力、 何ともないって言ってるだろう!?」


そう強がってはいるものの、見るから に体調が悪そうだ。


「………………何だか、中が騒がしくなって来たな。」
「そういえば、入り口の警備の数も減ってるような………………」


コン ラートの言うとおり、カツーンカツーンと響く採掘の音と、
看守たちの怒鳴り声だけ が響いていた先ほどまで比べ、
急に女たちの悲鳴と、警備兵たちが慌ただしく走り回 る音が大きくなってきた。


「………………酷く、巨大な魔力が発動してい る」
か!?」
「こんな法力に満ちてる場所でこれだけの魔力を発揮出来 るんだ、
 ユーリ以外だとしか考えられないな。」
「へ〜……………… って!!それってヤバいんじゃね!?
「急ぎましょう。」


コンラートが動き出したのを合図に、俺たち3人は警備兵の隙をついてひっそりと館内に 潜り込んだ 。
この騒ぎですっかり警備が手薄になっていて、簡単に走り回れる。


「あっちの方角から力を感じる………………」


と、言うヴォルフラムのお導 きに従って進んでいくにつれ、
騒ぎの声が段々大きくなる。


コンラート 自身には魔力を感じることの出来る力はないが、
先程からうるさい程に胸騒ぎが止ま らない。


「あれだ!!」


そう言ってユーリが指さした先では、 広場の中心を囲むようにして沢山の人間が集まっている。
しかし、だれもそれ以上は 近寄ろうとする気配がない。


「近い………………!!あの場所からだ!!」
「って!!あの真ん中にいるのって、もしかして」


そう。
今ユーリ たち3人の視界に飛び込んできたのは、紛れもなく彼らが捜しに来た張本人、の姿 だった。


墓の中央でうずくまるの体を、強大な魔力が取り巻いてい る。


!!


コンラートがそう大きな声で 叫びながら駆け寄ろうとした、まさにその時だった。
俺とヴォルフラムの間を、風の ように一頭の馬が駆け抜けた。


「兄上!?」


そう叫んだ弟の方 には目もくれず、グウェンダルは馬をに向かって一目散に走らせる。


!!!!!!!!


グウェンダルは落ちるように馬から 飛び降りると、
の肩を起こして激しく揺さぶる。


一体何を している!!自分が何をしているかわかってるのか!?
 この国を滅ぼす気かお前 は!!

「…………………ジュリア………………?」
!?


気が殺がれたせいか、辺りにたちこめる魔力は先ほどと比べると少し勢力を 弱め始めたものの、
の顔色はひどく悪い。
その瞳は焦点が定かではなく、 どこか遠くを見つめているようだった。


目を覚ませ馬鹿者!!スザナ =ジュリアはもうどこにもいない!!


グウェンダルは一瞬唇を噛みしめた後、パシンという切れの良い音をたてて、
の頬に平手打ちをした。


「お前は、ユーリが作る新しい眞魔国を、この先 ずっと見守り続けるんだろう!?
 ならば、こんな所でのたれ死んでる場合ではない だろうが!!」
「眞………………魔国………………ユーリの………………国………………」









そう。
そうだった。


ユーリの国。
ユーリの治める国。
私のたった一つの希望。









「………………グウェン」


みる みるうちに二人を取り巻く空気は晴れ、先ほどまでの威圧感は一気に消え去る。
心な しか、の顔色も随分と良くなってきた。


「………………やっと目を醒 ましたか?」
「えぇ………………ありがとう、グウェン………………」









そして


ジュリア………………



















その後、私はそのまま気を失ってしまったらし い。
情けないことに、力を暴走させてから後のことは全く記憶に残っていないのだ。


次に私が目を覚ますのは、三日も後のこと。


目を覚ますなり恒 例のギュン汁に熱烈に迎えられ、
グウェンにはたっぷりお説教を聞かされ、
ヴォ ルフラムにはキャンキャン吠えられた。


コンラートは私が目を覚ますと何も 言わずに部屋を出ていき、
ユーリはいつも通り困った顔をしていた。


最 後に私の親友兼保護者のギーゼラはというと、
私がまたも力の使いすぎで倒れたと聞くな り鬼の様に怒りだし、
私は彼女に3時間もこってりしぼられてしまった。


気になるその後のことだが、ユーリの話によると、
赤ん坊の墓から掘り 出された魔笛のパーツを収集出来たことによって、
見事にユーリのソプラノリコ………………
いや、魔王陛下の魔笛は、本来の持ち主であるユーリの手元に戻ったらし い。


とりあえず、こ れで今回の任務は無事に終了したということだ。









「ねぇ、ユーリ。」
「ん〜?」
「あ りがとうね。」
「??何が?」
「ん〜、色々☆」
「??益々わっかんね〜よ ………………」









解んなくて良いんだよ。


何も知らないあなただから、
真っ白なままのあなただから、
私の闇 を照らす光になる。



















ー 君の色は白。彼女と同じ、優しい色ー



















[ あとがき]
最後に力を暴走させたさんを止める役目は、
コンラートにする かグウェンダルにするか最後の最後まで悩みました。


一応「君マ」は“コン ラート夢”なのでコンラートおちにするべきだったのかもしれないですが、
今回はあ えてお兄ちゃんにしました。
コンラートだと、ジュリアと 同じようにさんを抱きしめて、
自分の体を張ってやめさせようとしてしまうん じゃないかと思ったんです。
グウェンダルじゃなくても、例えその役目がコンラート であっても、
きっと成功したでしょう。
でもそれじゃあ駄目なんです。
それ じゃあ15年前と同じ結果になってしまう。
再び同じことを繰り返してしまうと思い ました。
だからお兄ちゃんに、怒って欲しかった。
ひっぱたいてでも「それは駄 目」と怒って欲しかったんです。
グウェンダルはコンラートと違って、自分を犠牲に したやり方はしないと思いました。


でもそれは、決して愛情の重さ云々の問 題ではありません。
グウェンダルはわかっていたんです。
自分がさんのた めに犠牲になってもさんは喜ばない。
彼女自身がもっと辛い思いをしてしまう だけだと、ちゃんと解っていたんです。
流石お兄ちゃんですね(笑)


普段 は冷静沈着なコンラートですが、さんに関しては少し感情で動いてしまう。
考 えるより先に体が動いてしまうんです。
さんの心の問題にまで考えが及ばないんで す。
その点、お兄ちゃんは常に冷静な判断が出来る人なんだと思います。
自分が どう動けば最善の結果が得られるか、考えながら動いているんです。
私の中でそう物 語が展開したので、今回はお兄ちゃんに活躍してもらっちゃいました。


とい いつつ何故だか最後はユーリおち(てゆかジュリアおち?笑)


と、何だか無駄 に長々と書いてしまいましたね(汗)
とりあえず原作沿い「今夜はマのつく大脱走!」 はこの話でおしまいです。
ここまで読んで下さって本当にありがとうございまし た!!









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