私、きっと、世界で一番の幸せ者だと思 うわ。
十壱 幸姫〜sachihime〜
『我が親愛なる殿 府庫に来ら
れたし』
ある日、の元へそんな手紙が届
けられた。
差出人の名前も書いておらず、ただ、その一文だけが書かれていた。
「………………いつの間にこんなの入れたのよ?」
それは、がいつも通勤に使用している鞄に、いつの間にか入り込んでいたのだ。
今まで突然
告白されたり、愛を連ねた恋文を受け取ったりということは数々経験してきただった
が、
こんな意味のわからないものは初めてだった。
「こういうのって、
放っておくべきなのかしら?でも、大事な用だったら困るし………………」
しばらく手紙を持ったまま考え込んでいただったが、急に思いついたようにその手紙
をポケットに突っ込むと、
勢い良く
立ち上がった。
「ええい!こうやって考えてても仕方ない!どうせ休暇で暇
だし、行ってやるか☆」
こうしてのおかしな一日が始まったのだった。
「たのも〜!!!!」
が元気よく府庫に入ると、邵可が一人で資
料を閲覧していた。
「??あれ?邵可様だけですか?」
「あぁ、さ
んですか。今日は確か休みでしたよね?何か府庫に用事ですか?」
「えぇ、まぁ。」
そう言って辺りを見回したの視界に、明らかに場にそぐわないものが飛
び込んで来た。
「………………………………あの端に飾ってある熊の木彫り
の人形は何ですか?」
「え?気が付きませんでしたね〜何でしょう?」
何故かかの有名な“鮭を取る熊”の木彫りの人形が堂々と飾ってあった。
がクマ
を持ち上げると、またもや手紙が置いてあった。
『我が親愛なる殿 吏部に来られたし。』
「………………こいつ、人をおちょくってるのかしら?」
「さん、丁度良いですし、お茶でもい
かがですか?」
「あ、いえ!!すぐに行かなければいけない用事がありますの
で、失礼します!!」
父茶のすさまじさを知っているは、真っ青
な顔で部屋を飛び出していった。
「失礼します!!」
「おや、鳳珠の所の藍家の姫ではないか。吏部に何か?」
「紅尚書、李侍郎、お仕事中失礼します。ここに誰か来て………………」
そ
こまで言いかけて、の動きがピタリと止まった。と思ったら、の瞳は絳攸の背中
に釘付けになっていた。
「………………絳攸様、隙がありすぎですよ?(汗
)」
そう言うとは、絳攸の背中に貼ってあった紙をぺらりとはがした。
「!?いつの間に!?」
『我が愛しの殿 中庭の一番大きな木のふもとに来られたし』
「………………そろそろしつこいと思うんだ
けど?」
眉を寄せるに、黎深が楽しげに話しかける。
「そ
なたがど〜しても教えて欲しいと言うのなら、教えて差し上げんこともないが?
そ
の代わり、私のことを黎深様vvvと呼んで…………………」
「自分で確かめるので大
丈夫ですわ“紅尚書”。それに、そういうこと言うのはは、秀麗にちゃんと正体をば
らしてから
にして下さいね。では失礼します。」
はにこや
かに、けれどキッパリと否定して部屋を出ていった。
「………………なかな
か手ごわい娘だな。これでは確かに、お前では手があまるわ。」
「!?余計なお
世話です!!」
にやにやしながら自分をからかう黎深に、絳攸は顔を
真っ赤にして抵抗するしかないのであった。
「さ〜て☆
どこの誰だか知らないけど、そろそろ正体を見せないと本気で怒っちゃうわよ〜?」
ところが、中庭にも人影は見あたらない。
「え〜っと、一番大
きな木は………………あった!!あ〜あ、もう!!木に釘を打ち付けちゃって!!
幹がか
わいそうじゃない!!」
文句を言いながら、木に打ち付けてあった紙を釘か
ら外し、そっと開いた。
『我が愛しの殿
上を見られよ』
「子供かいっ!!」
紙に書いてあるとおりに、とりあえず上を見
上げて見ると、枝に何か小さな包みが結びつけてあった。
「??誰かの落と
し物………………ってわけじゃないわよね?これのこと言ってるのよね?」
訝しがりながらも包みを開くと、中からころりと何かが転がり出てきた。
「………………指輪?」
「誕生日おめでとう。」
「鳳珠!?いつの間に!?」
実は、木の陰に潜んでいた鳳珠が、突然
惚けているの前に現れた。
「誕生日って………………私の!?
」
「………………まさかとは思っていたが、まさか本当に忘れているとはな………………」
鳳珠は額を押さえると、大げさにため息をついた。
「だって最近忙しかったし………………って!!もしかして、今日私の
誕生日だから突然休みだなんて言い出したの!?」
「あぁ、私は初めて迎える
お前の誕生日を、どうして過ごそうかとヤキモキしていたというのに、
とうのお前
はそれらしい雰囲気を微塵も感じさせない。だから、もしやと思ってな。」
「………………別に休みにしなくたって、私は鳳珠と一緒にいられればそれで良いのに………………あっ!!」
言ったそばからは自分自身の発言に赤面した。
「あ、いや、その、」
「………………わかっている。ほら、
貸してみろ。つけて
やるから。」
そう言っての手から指輪をそっと取り上げると、もう片方
の手で、の左手を手に取った。
「、誕生日おめでとう。今日、この
日を、共に迎えられて嬉しいよ。」
鳳珠が贈った指輪は、の薬指にぴっ
たりとはまった。
「………………ありがとう。」
は照れく
さそうに微笑んで、初めてから鳳珠に口づけた。
驚いて目を見開く鳳珠に、
がそっと耳打ちした。
「………………これ考えたの、景侍郎でしょ?」
「!?」
「ふふっ♪わかるわよ。あなたがこんな洒落たこと思いつく
わけがないもの。」
「………………悪かったな。洒落たことが思いつかなくて。」
そうして二人は、暖かい木漏れ日の中、もう一度、優しい口づけをした。
「………………。」
「??」
「結婚しよう。」
[あとがき]
うひゃ〜!!うひゃ〜!!(照)あえてここで
切ります(笑)
そして多くも語りません(笑)