、我慢するのよ!!
秀麗のために、もうちょ〜っとだけ我慢するのよ!!
四 夜姫〜yoruhime〜
「さんの見送り、本当に行かな くて良かったんですか?」
「…………仕事の方が大事だ。」
「………… まったく、素直じゃないんですから。」
「柚梨、何か言ったか?」
「い、 いいえ!何でもありませんよ。」
の上司である黄尚書
と景侍郎が、そんな会話を繰り広げている頃…………
「…………嘘でしょ!?」
「私は嘘はつかん。」
「胸を張って
答えるな!!財布なくした〜って、まだ初日よ!?これからどうすんのよ!?
いい
え、あんたに財布任せた私が馬鹿だったわ!!」
は頭
を抱えた。
「私の少ない所持金で、二人分の旅費をまかなわなくちゃならないなんて無茶
よ!!」
「二人の力を合わせたら不可能なことなどないぞ。」
「あんたは 黙ってなさい!!とりあえず今日の宿をどうにかしないと……野宿なんて出きるわけ がないし……」
「む!それは反対だ!嫁入り前の娘がそんなことしちゃいか ん!!」
あまりにもとんちんかんな龍蓮の返答に、 は怒る気力も失せてしまった。
「…………………… はぁ。」
「、溜め息をつくと幸せが逃げて行ってしまうぞ。」
「…………こんなことで本当に茶州にたどり着けるのかしら…………。」
とりあえず、龍蓮のきらびやかな装飾品の一つを売ってお
金に代えたたちは、
本日の宿を探しすことにしたのだ…………………が。
「!あそに面白そうな店があるぞ!!行ってみよ う!!」
「待ちなさい!!先に宿を探すのが先……ってもういないし!!」
が止める間もなく、龍蓮は目的の店に走り寄っていた。
「も〜!!まったく、どっちが年上かわかったもんじゃな いわ!!」
は仕方なく一人で探すことにした。
す
ると、が龍蓮と離れたのを良いことに、一人の若い男がに声をかけて来た。
「君!そう、そうだよ、君だよ♪君って凄く可愛いね 〜!!何か困ってるなら力になるよ?」
「あ、いえ、大丈夫ですから。」
がきっぱりと拒否すると、男は龍蓮の方を見て軽く 笑った。
「あの変な格好してるの、君の彼氏?あんなの ほっといて一緒に行こうよ。」
「なっ!!彼氏なんかじゃありません!! ちょっ、変な勘違いしないでよね!!」
が大声で叫ぶ と、それを聞きつけた龍蓮が、二人に近付いて来た。
「…………、この馬鹿そうな男はそなたの友人か?」
龍蓮が男を睨みながら尋ねた。
「そんなわけないでしょ が!!ナンパよ、ナンパ!!」
「なんだと!?私の可愛いに手を出すとは、 何て奴だ!!この藍龍蓮が成敗してくれるっ!!」
「…………あの〜、お兄さ
ん?この人アホな格好してるけど、実はめちゃくちゃ強いから逃げて…………って!
コラ龍蓮!!手出すの早過ぎ!!」
が男を説得しよう としたが、すでに龍蓮がコテンパンにのした後だった。
「あ〜も〜っ!!逃げるわよっ!!!!」
「何故だ?私は正義の味方だぞ?」
納得い
かずにむくれる龍蓮を、は無理矢理引きずって行った。
日もすっかり落ちた頃、やっとのことで宿を見付けたは、
またもや発生した問題
に頭を抱えていた。
「部屋がひとつなのは私だって我慢す るわよ!?だけど、ベットが一つだけっていうのはどういうことよ!?」
あまりのの剣幕に、宿の主人は苦笑いをした。
「急に部屋用意しろって言われたってね〜。でも、お 客さん達、新婚さんだろ?いいじゃないかね別に〜。」
「だ〜れ〜が〜新婚 さんだ〜っ!!」
「、少し落ち着くのだ。大きいベットだから二人位余
裕で寝れるぞ。それに私は、の寝相が悪くても全く気にしないぞ?
むしろお前に
蹴られて死ねるなら本望だ!!」
「馬鹿っ!!そこまで寝相悪くないわ
よ!!てゆか、問題はそこじゃないし!!
嫁入り前の娘がどうとか言ったのは
あんたでしょ!?」
「何を恥ずかしがることがある?一緒に風呂に入った仲で はないか。」
「一体いつの話を持ち出す気だぁぁぁぁあ!!」
「お客さん〜夫婦喧嘩は部屋でして下さいよ〜。」
「誰が夫婦 だぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
静かな夜の街並に
の叫びだけが響いた…………。
結局同じ布団に入った二人
は、が龍蓮に背中を向ける形で、仲良く川の字で横になっていた。
「…………言っとくけど、寝惚けて抱きついてきたら、容赦なくはっ倒すからね!?」
「…………不可抗力だ。」
「何か言った!?」
「…………一人ごとだ。」
「も〜何でもいいから早く寝てよ〜」
はぐったりした様子で、龍蓮の方に向き直った。
すると龍蓮がやけに真面目な顔でぽつりと呟いた。
「…………前から気になっていたのだが、どうしては私のことを“あんた”とか“龍蓮”と
しか呼んでくれないのだ?
他の兄達は“兄様”と呼んでおるのに。」
龍蓮は不満そう な目でを見つめた。
「…………自分だって楸瑛兄様の こと愚兄って呼んでるじゃない。」
「それとこれとは別だ。私のことは“龍蓮兄 様”って呼んではくれないのか?」
「…………う〜ん、 だって龍蓮って1歳しか違わないし……なんか“兄様”って言うより、“友達”って感じ がするのだもの。」
その言葉を聞いた龍蓮は、一瞬驚いた ような顔をした後、ひどく満足そうに微笑んだ。
「……………………そうか。」
それっきり龍蓮は黙り込んでし
まったので、はその後すぐに意識を手放し、朝までぐっすりと眠った。
その後も何とか切り抜けて、たちがやっとのことで茶州にたどり着いた時には、
はすっかりへろへろになっていた。
そんなを秀麗たちは、暖かく向かえてく
れた。
「、本当にお疲れ様。わざわざこんなヘンピな 所まで来させて悪かったわね。」
秀麗は、嬉しそうに
を抱き締めた。
そして、今度は龍蓮の方に向き直った。
「…………藍龍蓮?よね?あなたも、ありがとうね。」
「心の友 其の1、酷いではないか!何故疑問系なのだ?」
「…………いや、だって ねぇ?」
言葉を濁す秀麗の代わりに影月が答えた。
「だって、あの、サッパリしてるというか、いつもみたい な装飾品がないというか…………。」
「途中でに全部売られてしまったの だ。」
龍蓮はふてくされて、軽く頬を膨らました。
「財布なくしたあんたが悪いんでしょ〜が!!」
が後ろから龍蓮を思い切りどついた。
『つ、強い…………!!!!』
その場にいた全員が、藍一族で一番強いのは、楸瑛でも、
龍蓮でも、藍州を治めている他の兄たちでもなく、
彼等が溺愛している、末の姫なの
だということを、再認識したのであった…………。
[
あとがき]
次からは、普通の生活に戻ります。
龍蓮とさんの
珍道中はお楽しみいただけたでしょうか?