落ち着いてよくよく考えてみたら、 ひょっとして、
私、黄尚書に、からかわれたのかしら?











 六 恋姫〜koihime〜











『……………………そうよね。そ りゃそうだわ。私ってば、何を馬鹿みたいに舞い上がってたのかしら。
 黄尚書 が、本気で私なんて相手するわけないじゃない!!』
は、頬を両手で思い切り叩 くと、


「普通にしなきゃ。」


そう、自分に言い聞かせる様に呟 いた。









「黄尚書、景侍郎、おはようございま す!!」


が、いつもの様に元気良く部屋に入って来た。


「……………………おはよう。」
「おはようございます、さん。」


鳳珠と柚梨は、口々に返事をすると、互いに顔を見合わせた。


『……………………何でこんなに普通なんだ!?』
『……………………本当にちゃんとハッキリ言ったんですか??』
『これ以上ないって位に、はっきり 口説いたつもりだ!!』
『……………………何だか、段々あなたが可哀想になって来 ましたよ…………。』


柚梨は大きく溜め息をついた。


「…………??あ の、遅くなってすいませんでした!!」
「いいえ。でも、いつもは一番に出勤してい るあなたが、寝坊なんて珍しいですね。」
「あ、ちょっと考えごとしてたら、眠れな くって…………」


そう言っては、恥ずかしそうに笑った。


『う〜ん…………これはもう一押しって所みたいですね。しょうがない、私が一肌脱 ぎましょう!!』


にこやかな笑顔の裏で、の様子をうかがっていた柚梨 が、突然叫んだ。


あっ!!さん!!あれは何でしょう!?
「へ!?どれですか!?」




ドゴッ!!!!




がよそを向いた瞬間、柚梨の拳が鳳珠の腹部を直撃し た。


ぐふっ…………柚梨!?お前…………!!」


「え?何ですか、鳳珠? えぇっ!?お腹が痛い?それは大変ですね!!昨日変な物でも食べたんじゃないです か??
 ほら、今すぐ医務室に行ってらっしゃい!!」


鳳珠は、あまりの痛さ に声も出ないらしく、お腹を押さえてうずくまっていた。


『…………く そっ!!柚梨め!!何を考えてるかは知らんが、やりすぎだ!!』


内心毒づ きながらも、何だかんだいって柚梨には逆らえない鳳珠は、しぶしぶ部屋を後にした。









「…………黄尚書、大丈夫でしょうか?」
「えぇ、あの位、湿布を貼ったらすぐに元通りですよ☆」


『…………何 で腹痛が湿布で治るんだろう?』


少し疑問に感じたものの、はあまり気 にしないことにした。


「さて、さん。」
「はい?」
「あなた、 今までに、鳳珠の仮面について何か聞いたことはありますか?」
「あ〜、え〜っと…………秀麗から少し。紅尚書の奥様の話 とかを。」


は凄く言いにくそうに言った。


『……………………これ は都合が良いのか、悪いのか、微妙な所ですね……………………』


柚梨は “秀麗から聞いた”と聞いて、が他の女性たちの様に、鳳珠の素顔を見たがらなかっ たのだ、と納得した。


「え〜っとですね、実は、秀君は大きな勘違いをして いまして、まぁ、ぶっちゃけるとガセネタです。」
「ガセなんですか!?……………………それじゃあ、何で仮面を??」


は、心底不思議そうに首を傾け た。


さんが思ってたのと、真逆です。」
「逆??」
「美しす ぎて、顔を隠さなければ、生活出来ないのです。」
「…………………………………………はぁ。」


は、柚梨の口から出てきた台詞が信じられずに、口をぽか んと開けた。


「……………………信じてませんね??」
「え、あ、 まぁ、いえ、はぁ。」
「正直でよろしい。鳳珠にまつわる伝説は、まぁ、ピンからキ リまでありますが、おいおい 話しましょう。」
「(伝説って…………)でも何で急にその話を??」
「あなたに は変化球は通用しませんから、直球でいきますよ?
 さんが鳳珠の妻として生活出 来るか判断したいんです。」
妻!?
「しらばっくれたって駄目で すよ?大体、鳳珠があなたにメロメロなんてこと、端から見れば丸分かりですしね。」
「メロメロって…………。」
「勿論あなただって、彩雲国三大美姫に含まれてい る程の御麗人ですが……………………鳳珠は次元が違います。」
「楸瑛兄様とか、劉 輝様レベル以上ってことですか??」
「比較対象にもなりませんね。」


柚梨は、 一瞬の迷いもなく答えた。


「(兄様はともかく、王にまでそのいいぐさ…………)それ で、私はどうしたらいいんでしょう?」
「何はともわれ、こうしていても仕方ありま せん。私が良いというまで目を閉じていてください。」
「はぁ。」


は言われるがままに目を閉じた。


「はい、もう良いで すよ。」


思っていたより随分早い柚梨の合図に、は慌てて目を開けた。


「……………………………誰??」
「……………………………私だ。」
え、 え、え、え!?ええええええええええ!!??黄尚書〜!!??って、いつの間に 戻って来たんですか!?


『第一声がそれか!!』


鳳珠と柚梨 は心の中で同時にツッこんだ。
しばらく食い入る様に鳳珠の顔を見つめていた だったが、突然手を鳳珠の頬に添えた。
これには鳳珠も柚梨も度肝を抜かれてしまっ た。


『何て勇気のある(やつだ)!!』


「あ!!すいません!! あんまり綺麗なので、つい……………………。」


は慌てて手を引っ込め ると、真っ赤になってうつ向いた。


さん、合格です。というか、 鳳珠にはあなたしかいません!!


柚梨は満足そうに微笑んだ。


「は!?あ、いや、でも、」
「この顔相手に、あれだけリアク ションが取れれば十分です。
 普通、眠れなくなったり、気絶したまま、何日も夢の世 界から帰って来れない人だっているんですから!」
「それは言いすぎじゃ…………。」


は、話しながらも、名残惜しそうに鳳珠の髪をいじっている。


「……………………さん覚悟を決めて下さい。鳳珠は、何がなんで もあなたを逃がしたりしませんよ?」
「本人を前にして、お前はよくそんなことが言 えるな!!」
「安心なさい、鳳珠。さんなら“夜の営み”も全く問題ない様です よ☆
 他の女性だったら、耳元で囁かれただけで気絶ですけどね。」
よよよ 夜っ!?


は耳まで真っ赤にして、口を金魚の様にパクパクさせた。


「あ〜今から楽しみですね〜。お二人の子供なら、世界一の美人になるで しょうね〜。」




柚梨!!良い加減にしろっ!!
景侍 郎!!良い加減にして下さいっ!!




鳳珠との叫びが、彩雲国中にこだまし た。














[あとがき]
もう、景侍郎、完璧に原作とキャラ違います(死)
私に とって、かなり動かしやすいキャラ何ですよ、柚梨(笑)

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