俺がを手に入れるのは、じつは、きっと簡単なことなんだ。
有無を言わさ ず抱き締めて、そのまま檻に閉じ込めてしまえば良い。
…………でも、それじゃあ、 駄目なんだ。





















 10 君の涙と微笑みを





















ユーリが戻って来るという知ら せを受け、
俺とギュンターは眞王廟へウルリーケに面会に来ていた。






「では、今回は血盟城内の噴水に陛下はいらっしゃるので すね?
それでは急いで引き返しましょう、コンラート!!」

「ああ。」

「コンラート!!待ってください!!」






突然ウル リーケが俺を呼び止めた。






「…………?何でしょう か??」

「あ、いえ、その…………いえ、何でもありませんわ。」

「?? そうですか、なら失礼します。」






ウルリーケの不可思議な 言動は気になったが 、
それよりもま ず、ユーリの安全を確保しなければと思い、俺たちは血盟城に急いだ。





















噴水に近付くと、ギュンターが見慣れた黒頭に抱きついているのが見えた。






『良かった、今回も無事に着いて。』






ほっと胸をなでおろした、その時だった。









……………??」









一瞬自分の目を疑った。
これは 自分に都合の良い幻なのかもしれない。
15年間ずっと探し求めていたんだ。
で も、もう二度と自分の腕に抱くことは出来ないと思っていた最愛の人。









「コンラート…………」









懐かしい声が体全体に染み渡る。






喜びで体が震えるなんて始めてだった。






俺は、あまりの衝撃に、体が全く動かなくなっ てしまった。











この時、ほんとうは… 本当は、むちゃくちゃにを抱き締めて、
もう二度と俺の側から離れられないよ うにしてしまいたかったんだ。











とこ ろが実際の俺は、にどう接していいのかわからず、
そんな俺を嘲笑うかのよう に、ただ、いたずらに時が過ぎて行った。














そんなある日の ことだった。



















「隊長、久しぶりに一 緒に一杯飲みましょうよ?」






ヨザが珍しく俺を飲みに誘っ てきた。
ヨザがそんなことを言い出した理由は、一目瞭然だった。
















「隊長はの事、一体どうするつもりなんすか?」

「…………直球だな。」






コンラー トは苦笑した。






「あ、はぐらかすのはなしですからね。
俺、そろそろいい加 減に決着着けた方が良いと思うんですよね〜。」






ヨザックは言い逃れはさせない、と目に力を込めてコンラート を見つめた。






「…………あぁ、俺もそう思うよ。」

「ま、俺から言わせてもらえば、あんたら二人が好き合ってんのなんて丸わかりだし?
ただ、いつまでも過去の亡霊に縛られてちゃ前に進めないんじゃありません?」

「…………過去の亡霊、か。」






目を閉じて黙り込ん でしまったコンラートに、ヨザックが気まずそうに尋ねた。






「…………隊長はまだ、ジュリアのことを忘れられないん すか?」

「……あぁ。そうだな。きっと彼女のことは、一生忘れることは出来な いだろう。でも…………」

「でも?」

「それは、きっともう恋愛感情とは 違うんだ。」






コンラートは手をきつく握り閉めた。






ジュリアとの想い出は、かけがえのない大切な物。
で も、それは過去の思い出として、自分の中で美しく彩られているだけなのだ。
その美しい記憶も、今では月日がたつにつれて薄れていくばかり……。






「…………ジュリアじゃなかったんだ。
何処にいて も、何をしていても、思い出すのはいつもの笑顔だったんだ!!
今、一番側に いて欲しいのはなんだ!!」









どうして気付かなかったんだろう?
俺の人生は本当に、ど こもかしこもで一杯だったのに!!









、おっき くなったらコンラトのお嫁さんになるの〜!』





       『はコンラトがいっちばん好 き!!』





   『コンラートが幸せなら、私も幸せよ??』





          『私はずっとコンラートの側 にいるわ。』





『何があっても必ず私がコンラートを守るから。』
















「…………隊 長??って、わっ!な、泣いてんすか!?」






コンラートの 頬を、熱い雫が幾筋にもつたっていた。






「…………なの に、なのに!!今は、あいつの泣き顔が、一番に思い浮かぶんだ!!」




脳裏に焼き付いた悲しい記憶。









『コ…ン ラー…ト…………ごっめんな…さいっ…』









今も耳に残って いる悲痛な叫び。
自分幸せは、いつも彼女とともにあったというのに。






「…………俺はに甘えきっていたんだ。」






だけは俺がどうなろうと、どうであろうと、変わら ず愛してくれる。必ず側にいてくれる。
そんな身勝手な思い込みが、を傷付 け、自分を追い込んだ。






「…………も隊長も、自分 が悪い、自分が悪い〜って互いに自分を責めすぎなんだよ。
そんなんじゃいつまで 経っても道は開けない。」

「……………………。」






コンラートは黙ってヨザックの話しを聞いていた。






「隊 長、男なんすから一発ガツンかましてくださいよ!!
俺はそれ以上はもう付き合いき れませんからね!?っつたく何で俺がこんな損な役回りを……。」

「……………………ヨザ。」

「あ、そんな同情の眼差しで見るのや めてくださいよ!!言っときますけど、俺諦めたわくじゃないですからね?
隊長に傷 つけられたを優しく慰めて、俺がいただいちゃうパターンも残されてるんですか ら!!」






「…………いや。そうはさせないよ。俺は、を離すつもりはないからな。」

「はいはい。ほんじゃ、とっとと行ってらっ しゃい。
こんな所で俺と飲んでる場合じゃないでしょ?」

「…………ヨザ、 すまない。」






コンラートは、覚悟を決めたように酒場を飛 び出した。









「あ〜あ。これじゃぁ俺、本当にタダのピエロ だわ。」









そんなヨザックの呟きは、夜の喧騒にすぐに掻き 消された。





















ー 本当に大切なものは、いつだって失ってから気付くんだー
























[あとがき]
「君のマのつく優しい詩」もとうとう10話まで来ました!!
とりあえず第1章は15話予定で、それ以降は原作沿いで行こう かと思います。
あ、あくまで予定なので、あしからず(汗)









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