お前の心はいつまでもあいつに捕われたまま
俺の心はいつ
までもお前に捕われたまま……
9 君の光、僕の光
俺は、12までシ
マロン領の小さな村で育った。
人間と魔族のハーフである俺たちは酷い迫害を受けな
がらも、必死に生きていた。
生きていても、死んでいるのとそう変わらない悪夢の様
な日々……常に死と隣合わせの毎日だった。
そんな境遇か
らか、ダンヒリー=ウェラーが俺たちを救ってくれた後も、
俺は素直に心を開くこと
が出来なかった。
一度暗闇に捕われてしまった俺は、ずっとそこから抜け出せな いでいたのだ……。
そんな俺に、あ る日、一筋の光が指す。
「オレ ンジ〜!!!!」
「……?」
道端にうつむい
てしゃがみ込んでいた俺の頭の上から、
突然明るい可愛い声が降って来た。
思わず頭をあげると、自分より少しだけ年下であ
ろう少女が、真ん丸の瞳を輝かせて自分の前に立っていた。
「オレンジー!!!!」
少女 がもう一度叫ぶ。
『…………?…………あぁ、髪か……。』
やっと少女の言っている意味を理解した俺は、気分が悪く なった。
俺は自分の髪が大嫌いだった。
必要以上に明るい、まるで少女の様なオレンジ色の髪は、 いつもからかわれるネタだった。
「お名前は〜??」
俺は少女の問いを無視して再び頭を伏せた。
「お〜な〜ま〜え〜は〜??」
少女は聞こえていなかったと思ったらしく、もう一度大き くゆっくり問いかけた。
「…………ヨザック。」
俺はかんねんして小さく呟い た。
「ヨザッ…?…ヨザ……ヨザク〜!!」
「…… 違うよ、ヨ・ザ・ッ・ク。…………もう”ヨザ”でいいよ。」
「ヨザ!!ヨザ!!」
俺がまともに会話したのが嬉しかったのか、少女は何度も 繰り返した。
「…………お前は?名前。」
「!!あのね 、のお名前はね、ってゆ〜の〜!!」
「…………、か。良い 名前だな。で?俺に何か用?」
「あのね、ヨザの髪、キレイね〜って言おうと 思ったの〜!!」
俺はその一言にひどく驚いた。
「だってね、“おひさま”と、おんなじ色〜!!それから ね、“オレンジ”と〜“みけらんじぇろ”もおんなじ色〜!!」
「…………ミケラン ジェロ??」
「あのね〜つぇり様のネコちゃんなの〜!!あ、つぇり様は〜コン ラトのママなの〜!!」それだけ言うとは、俺の横に ちょこんとしゃがみこんだ。
「……はの髪の毛、キライなの。……だって真っ黒なの。
皆ね、怖いっ
て言うの。フキツって言うの。おめめも真っ黒なの。みんなも、キライって言うの。」
今まで影になっていて気付かなかったが、よくよく見ると
は、滅多にいないとされる双黒の少女であった。
それせいで、今までに
に浴びせられたであろう罵倒の数々を思い浮かべただけで、俺は吐きそうになった。
「もコンラトみたいな茶色が良かったな。だってクマさんとおんなじじ
よ?
ダンヒリおじさまが大好きなコーヒーもおんなじ!!とってもステキ!!
でもコンラ
トはのがステキだよって言うの。でもね、はこの髪キライ……。」
の瞳から大粒の涙がこぼれた。
「…………嫌いなんて言うなよ。の髪はとっても素敵だ よ。それに、夜のお空と同じ色だ。」
「夜のおそら〜??」瞳に涙を浮かべたは、驚いたように俺を見上げた。
「あぁ。
夜のお空が真っ黒だから、お星様はキレイに輝くことが出来るんだ。
それって、とっても
ステキじゃないか?」
自分でも信じられない程にスラスラ と言葉が出た。
「…………そっかぁ……そっかぁ!!うん!! ステキ!!ステキ!!ヨザすごい!!」
は嬉しそう に飛び跳ねた。
「ありがとう!!とぉ〜ってもうれしい わ!!ヨザ、大好き!!」
その 瞬間、俺の中で何かがはじけた。
体の奥底から温かいものがあふ
れ出して止まらない。
気付けば俺は涙を流していた。
「どしたの!?ヨ ザ!?痛いの!?悲しいの!?」
涙は止まるどころか、 次々とあふれて俺の顔中をぐちゃぐちゃに濡らした。
「…………違う、違うんだ。…………嬉しいんだ。」
今まで生きてき
て、人から“スキ”なんて
言葉、一度だって言われたことなかった。
自分には一生関係無いとまで思っていた。
それなのに……それなのにっ…………!!
「ありがとう…………ありがと う。、俺もが大好きだ。」
俺はまだ涙が止ま
りきっていない顔で、精一杯微笑んだ。
そうするとは、少し照れた様に微笑み返
してくれた。
「じゃぁ、ヨザは今からのお友達 ね!!行こ!ダンヒリおじさまとコンラトに紹介するわ!!」
こうして俺はとの運命の出会いを果たした。
そ
して、もう1人、一生の親友であると同時にライバルである“彼”とも出会った。
突
然見ず知らずの少年を連れて帰って来たに、2人とも驚いてはいたものの、すぐに
受け入れてくれた。
がコンラートを好きだってこともすぐにわかった。で も、だからと言って諦める気なんて更々なかった。
何故なら、は俺のたっ た一つの“光”だから…………
ー君の光は俺じゃない。でも、それでも
俺の光は君だけなんだー
[あとがき]
さんはまだ舌ったらずなので皆の名前が正確に言えません(笑)
コンラート夢の筈が、ヨザックのが甘いのは何故…??(汗)