私のこと、好きになんてならなくて良い から、嫌いにはならないで……………………
「……………………お前が!!
お前がジュリアを殺したんだ!!!!」
部屋に入って来るなり、コン
ラートは大声でそう叫んだ。
「……………………わ、私が…………ジュリア…………
を……………………??」
は絞り出す様に言葉をつむいだ。
「あ
あ、そうだ!!力を暴走させたお前を止めようとして、力を使い果たしたんだ!!
何故守
る側の筈のお前が、彼女に守られてる!?」
「コンラート!!」
ギーゼラの制止の手を振り払い、コンラートはに詰め寄った。
「どうしてジュリ
アがいないのに、お前は生きてるんだ!?」
コンラートの一言が、罪の意識で今にも壊れそうなの心に、とどめをさした。
「コ…ンラー…ト…………ごっめんな…さいっ…」
は、鉛の様に重い体を無理矢理起こして、
床をはいずる様にして部屋から出て行った。
それが、二人のしばし
の別れになろうとは、誰が考えただろうか?
幼い頃から一緒に生きてきたコンラート
とが、再び巡り会えるのは、15年先のことになる。
が部屋から出た
のを確認すると、とうに我慢の限界だったギーゼラの拳が、コンラートの頬を思い切り
殴った。
「……………………コンラート!!見損なったわ!!あなた、
今、自分が一体何を言ったかわかっているの!?
今、一番辛いのは自身なの
よ!?」
ギーゼラに殴られ、少し正気を取り戻したコンラートは、小
さく呟いた。
「俺は…………………………………………」
言い訳は聞かない、という風にギーゼラ
はコンラートの言葉を遮り、なおも続けた。
「さっきのは、世界で一番最低
な台詞だと思うわ。が死んで、ジュリアが助かれば良かった何て本気で思っている
の!?
……………………もし、そうなら、二度との前に顔を見せないで!!」
ギーゼラは、最後に思い切りコンラートを睨むと、を追って部屋から
出て行った。
の
ことだから、きっと何処かで泣いているだろうと思い、慌てて飛び出したギーゼラだった
が、
ドアの横に座り込んだを見た瞬間、言い様のない不安に襲われた。
「……………………??」
は、泣きも、取り乱しもせずに、
ただ、静かに自分の手のひらを見つめていた。
「……………………私の記憶
が正しければ、ジュリアは、最後にこう言ったの」
は、突然思い出し
たように小さく話だした。
『コンラ
ートと幸せになってね。』
「それを言うのは私の方だったの
に!!」
は唇を噛み締めて、耳をふさいだ。
それでも頭の中で、
さっきのコンラートの台詞がリフレインする。
『どうしてジュリア
がいないのに、お前は生きてるんだ!?』
「、勘違いしちゃだめよ?ジュリアはあなたが殺したんじゃない。あなたを、命がけで助けたのよ。」
ギーゼラがの背中をそっと撫でながら、優しく話しかける。
「…………結局は同じことだわ」
「違うわ!!」
「ギーゼラ…………私、少しの間、ここを離れて、一人で色々考えてみる。」
「……………………そ
う。」
ギーゼラは悲しそうな顔でを見つめた。
「……………………そういえ
ば、ウルリーケ様があなたを呼んでいたわ。何か、大切なお話があるらしいの。
つい
でに、しばらく眞王廟で休養したら良いと思うわ。あそこなら静かだし、安全だし、丁度
良いと思うわ。」
“男子禁
制だからコンラートに会う心配もない”という言葉を飲み込んだギーゼラは、優しく微笑
んだ。
「そうね、そうするわ。ありがとう、ギーゼラ。本当にごめんね。」
は、弱々しく微笑み返した。
『…………もしかすると、
は何処かへ行ったきり、帰ってこないつもりなのかしら?
…………でも、眞王廟な
ら安心…………よね?』
ところが、そんなギーゼラの悪い予感は、見事に的
中することになる。
はある日突然姿を消し、そのまま行方をくらましたのだっ
た。
「がいなく
なったって本当なのか!?」
有利の魂を無事に送り届け、眞魔国に帰って来
たコンラートは、皆から責められるようにの行方を尋ねられた。
しかし、コン
ラートが知るはずもなく、ギーゼラの元へ詳しい話を聞きに来ていた。
「え
え。あなたが帰って来る、少し前にね。それまではずっと眞王廟にいたんだけど……………………。
ウルリーケ様まで何も知らない
、っておっしゃるし。」
ギーゼラは溜め息をついた。
「……………………帰ったら、ちゃんと謝ろうと思ってたのに!!」
コンラートは、
途方に暮れた様子でうなだれた。
「向こうでちゃんと心の整理をして来たの
ね?あなた、とてもすっきりした顔してるわ。」
「………………………………あ
あ。」
「それじゃあ、自分の本当の気持に気付いたのね?」
「……………………
俺にはしかいないんだ。……………………じゃないと駄目なんだ!!」
その言葉を聞いて、ギーゼラは本当に嬉しそうに微笑んだ。
「逆だったのよ。」
「……………………え??」
「あなたは、に“ジュリ
アを守る”ように言ったけど、それは裏を返せば、
癒しの力を持つジュリアと一緒にいれ
ば、“は確実に安全”だということよ。」
コンラートは、ギー
ゼラの話を黙って聞いていた。
「彼女は、あなた自身も気付かなかった心の
本音を、見透かしていたのよ。
あなた
が、本当はとジュリア、どちらを優先で考えているのかを。
だからこそ、ジュ
リアは命がけでを守ったの。
愛するあなたと、大好きなのこれからのために
……………………。」
「………………俺は、幸せになる資格なんてないよ。」
「そんなことないわ。私も、ジュリアも、他の皆も、あなたたちの
幸せを祈ってるわ。
……………………でもね、の心の傷は、あなたが思っているよ
り、ずっと深いの。
簡単にを自分のモノに出来るなんて思わないで。」
「わ
かってるよ。今度こそ、決して手放さない。は、俺が一生かけて口説き落としてみ
せるよ。」
コンラートは、覚悟を決めたように立ち上がった。
今度こ
そ、愛する少女を手に入れるために……………………
『=、あなたにスザナ=ジュリアの………いえ、次代魔王陛下の御魂
を、異世界まで送り届けて欲しいのです。』
『……………………何故、私なんです
か?』
『それが、スザナ=ジュリアの最後の願いなのです。』
『……………………いいえ
、違います。』
『……………………??それは、どういう意味ですか?』
『彼女
は優しいから、だから、私を指名したんだと思います。でも、本当は、きっと、コンラー
トにそれを頼みたかった筈です。』
『……………………つまり??』
『その役目
は、ウェラー卿コンラートに代わってもらうことは出来ないでしょうか?』
『……………………でも、ジュリアはあなたに、と……………………』
『お願いします。』
『……………………わかりました。あなたがそうまで言うのなら、あなたの望み通
り、ウェラー卿に任せましょう。』
『ありがとうございます。ウルリーケ様。』
ー
あなたから、私の記憶を全て消すことが出来れば、どんなに良いだろうー
[
あとがき]
なんだか場面転換が多すぎて、読みづらいですね(*_*)本当にすいません(汗)
地
球でコンラートに、どんな心境の変化が
あったのかは、また別の機会に書きます☆