私を生かすも殺すも、全てはあなた次第 ……………………
俺を生かすも殺すも、全ては君次第…………………………











 15 君の優しい詩











『私がジュリアを殺したの』









の口から出たその台詞を聞いた瞬間、 コンラートは自分の犯した罪の深さを改めて実感した。









『お前がジュリアを殺したんだ!!』









15年前、感情に任せて言ってしまった、愚 かな台詞…………そのたった一言が、今でもを縛り付けている。














「……………………、本当にすまなかった。許してもらえるだ何て思ってない。
 嫌いのままでも良い。 ただ、俺の気持だけは、知っておいて欲しいんだ。」


コンラートはに向かって大きく頭を下げた


「頭を あげて、コンラート。前にも言ったけど、あなたが私に謝る必要なんて、全くないの よ。」


は感情のこもらない瞳で、コンラートの頭を見下ろした。


「……………………俺が本当に愛しているは、お前なんだ。何に変えても守 りたかったったのはお前だったんだ!!」
「…………ジュリアが死んだから、私が欲 しくなった?ジュリアがいなくなったから、代わりに誰でも良いから側にいて欲しい?」
「違う!!そうじゃない!!」
「どう違うって言うのよ!?それじゃあ、 ジュリアへの想いは、嘘だったって言うわけ!?」

「…………………………………………。」


コンラートは眉をひそめると、そのまま黙り込んでしまっ た。


「なっ!!ちょっ、嘘でしょ!?何でそこで黙るのよ!?何とか言いなさい よ!!


反撃されるのを考慮に入れて、強く出ただったが、予 想外のコンラートの反応に、一気に真っ青になった。


「……………………俺 は、自分可愛さに、お前とジュリアに甘えていた んだ。ジュリアを勝手に理想の固まりにして、
 彼女なら、“決して俺を傷付けることな く、優しく包み込んでくれる。”“癒しの力で必ずを守ってくれる。”
 そう思った から、だから大切にしてたんだ!!自分に一番都合が良かったから!!」


は、唇を噛み締めながら、黙ってコンラートの話を聞いていた。


「ジュ リアのことは、確に好きだった。愛していた“つもり”だった!でも、そんなのは本当の 愛じゃない!!
 俺が勝手に彼女に押し付けていただけの偶像にすぎなかったんだ!!
 ………………そして、彼女は、俺のそんな気持ちに気付いていた…………だから…………」
「それじゃあ何!?ジュリアは私たちの馬鹿げたゴタゴタに、振り回されただけってこ と!?
 ふざけないで!!私が今更そんなこと言われて、喜ぶとでも思ったわ け!?」


コンラートの自分勝手な言い分に、とうとうは我慢出来なく なってしまった。


「…………じゃあ、じゃあ、ジュリアは、あの時、一体ど んな気持で…………!?」









『コンラートと幸せになってね』









の脳 裏に、彼女が最後に残した言葉がよぎる。


「今更…………今更よ!!押し付 けたとか、私のためにジュリアを利用したとか、勝手すぎるわ!!」
「元はと言え ば、お前だって俺とジュリアの関係を勝手に誤解しただろう!?」

ええ、そう よ!!私も、あなたやジュリアに何も確かめずに勝手にっ!!
 ………………… 勝手に…………………そうよ、私も勝手に決めつけて、
 一人で勝手に悲劇 のヒロインに浸ってたんだわ…………!!
 …………何でこんなことに…………!?…………ジュリアッ!!


の瞳から次々と涙が溢れる。
今 になって、絡まった糸がほどける様に、全てが見えて来る。
ジュリアの本当の優しさも、 痛みも、切なさも……………………。


「……………………ジュリアは、私た ちに幸せになれって言ってくれたわ。でも、私たちに、そんな資格はないわ!!


は、とうとうその場に、泣 き崩れてしまった。
そんなを、今度はコンラートが上から見下ろす。


「……………………そうやって、お前はいつまでも、ジュリアにしがみ着いて生きていく つもりか?」


コンラートがぽつりと呟いた一言に、再びの怒りが爆発 した


「!!コンラート!!そんなに私を怒らせたいわけ!?よくもそん な台詞が言えるわね!!」
「ああ、そうさ!怒らせたいさ!!そうしないとお前は俺 に本音を言わないだろう!?
 そうじゃないと、俺たちはいつまでたっても前に進めな い!!」



は、ハッとしてコンラートを見上げた。


「お互いに遠慮しあってたら、駄目なんだ!!だから俺は思ってたことを全部言った!! お前が好きだ!!
 お前が嫌がろうと、誰が何と言おうと、俺はお前が欲しい!!」


コンラートは、堂々と叫んだ。


「俺は今、やっと過去の闇から 抜け出せると思った!お前と初めて本音で話し合うことが出来た からな…………。
 ジュリアには申し訳ないけど、彼女がいたからこそ、俺 たちはちゃんと自分たちを見つめ直すことが出来たんだ。」
「………………そうね、こんな風にコンラートと自分の気持をぶつけ合う何て、初めてじゃないかし ら?
 ………………でも不思議ね、大喧嘩したっていうのに、妙にスッキリした気分だわ。」


コンラートは、困った様な顔で軽く微笑んだ。


「情けないこと に、俺たちは人の力を借りないと、真っ直ぐ歩けないらしい。寄り道や、回り道をして ばっかりだ。」
「本当にそうね。そのせいで、大切な人たちを傷付けてばっかり。」


も寂しそうにうなずいた。


「あなたは、“昔の私たち” に戻りたいと言ったけど、それはもう無理なのよ。時代は移り変わり、私たちも変わって しまった。」
「そうだな……………………でも、変わったからって、それが全て悪い わけじゃないんだ。」
「そうね。ジュリアのことも、ユーリのことも、全部ひっくる めて“今の私たち”なんだわ。
 ジュリアとユーリの存在があるからこそ、今の私たちが存 在するの。」


はそっと瞳を閉じた。


「……………………コンラート、私はあなたを愛しているわ。そして、この 想いだけは、一生変わることはないでしょう。」


そして、閉じていた瞳を開けると、 真っ直ぐコンラートを見つめた。


「でも、今はまだ、ツェリ様やお父様が望 む様に“あなたの妻”にはならないわ。……………………いいえ、なれないわ。」


「……………………ユーリ、か?」
「ええ。」


は一 瞬の迷いもなく答えた。


「ユーリは今、一番大切な時期なの。右も左もわか らない世界で必死に頑張ってるの。
 私たちがユーリを支えていかなきゃ!でも、それは ジュリアの産まれ変わりだとか、魔王陛下だからとかは関係なく、
 “渋谷有利”だから、 彼だからついて行こうと思ったの。」
「そうだな。俺も、今のユーリを放り出して、 自分だけ幸せに何てなれないさ。でも、、勘違いするなよ?
 俺がお前を愛する気持 ちと、ユーリを大切に想う気持は全く別だからな?」
「わかってるわよ。そうね…………私たちにとって、ユーリは赤ちゃんの頃から見守って来た、実の 子供みたいなものかもね。」


がおちゃらけて喋ると、やっとコンラートも笑顔 になった。


「それ、ユーリが聞いたら滅茶苦茶怒りそうだな。」
「何 言ってるの!まだまだ手のかかる私たちの可愛い息子よ!!」
「そうだな。いつか、 俺たちの本当の子供が産まれるまで、ユーリが“息子”だな。」


そこでの動きが一瞬止まる。


「……………………コンラートさん?さらりと言わ れましたけど、今のは確実にセクハラだと思うんですけど?」
「さっき、本音で話 すって宣言したろ?俺はお前を愛していると言った、ならば当然“そういうこと”も付い て来るだろう?」


コンラートは、彼らしからぬ、ニヤニヤとしか形容のしが たい表情を浮かべた。


「……………………何かそれ、凄い都合の良い良いわ けに聞こえるケド…………。
 じゃあ、そうね、私もいっちょ、本音ぶつけときますか☆」
「何だ?あれだけ俺を罵倒しといて、まだ言い足りないのか?」


コン ラートが呆れた様に笑った。









「私もあなたが欲しいわ。」









「!!」
はいっ!!本 音終了〜!!やだ、もう真っ暗じゃない!!早く帰ろ!!」


耳まで 真っ赤にして、慌ててそっぽを向いた を、コンラートは思わず背中から、そっと 抱き締めた。


「……………………おかえり、。」
「!!」
「……………………俺だけ、まだ言わせてもらってなかったからさ。」


コン ラートは、少し照れ臭そうに微笑んだ。


「……………………ただいま、コン ラート。」


は、やっぱり自分の帰る場所はここなのだ、と改めて実感 した。
すっかり肩の荷が降り安心したからなのか、泣き疲れたは、
 そのままコ ンラートの腕の中で、深い眠りについてしまった。


「…………まったく、本 当に昔から、いつでも何処でも寝るんだから。」


コンラートは愛おしそうに の寝顔を見つめると、そっと、触れるだけの口づけを した。
そんな2人を、満点の月と星たちだけが、優しく見守っていた……………………














ーあなたの本 当の声を聞かせて?あなたの優しい詩を聴かせて?ー














[あとがき]
とりあえず 「君のマのつく優しい詩」の第一部(プロローグ)が完結しました☆
第一部と言っても、主 人公とコンラートが和解するまでの足掛かり的な感じです。
二人がラブラブになるまでに は、まだまだ時間がかかりそうです(^_^;)
ヨザとかユーリのお邪魔も入りそうですし(笑)
コンラートとの甘々系はリクが多いので、番外編で書こうかなと思っています☆











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