いつか、こんな日が来るって、わかって はいたの、でも………………
「渋谷、昨日“あっ
ちの世界”に行ったみたいだよ。」
「!?」
思いもよらない
ムラケンの台詞に、は戸惑いを隠せなかった。
「………………成人する
まで、こちらで過ごす筈だったのに………………。」
「すぐに戻ってきたけど、おそ
らく結構長い間向こうにいたんだろうな。どことなく、顔つきが変わってたよ。」
ムラケンは、うつ向いてしまったの頭を、優しく撫でる。
「………………有利、あなたまで、私の元を去ってしまう時が来たのね………………。」
は眉をしかめて、寂しそうにそう呟いた。
何だか良くわからないまま、魔王にされてしまったユーリは、
これまた良くわからないまま三男坊に求婚してしまい、またまた良くわからない
うちに、決闘の申し込みを受けてしまったのだった。
「一体何がどうなって
るんだよ〜?何で俺がこんな目に!?普通の高校生の俺が、剣で勝てるわけないじゃ
ん!?」
ユーリが自分の運命の不運さに嘆いていると、コンラートが胸元か
ら何やら取り出した。
「陛下、これ。」
「ライオンズブルーだ
ね。」
コンラートが取り出したのは、青い石がついたペンダントだった。
「俺の……友人がくれたものです。ある種のお守りだと聞いていたけど、今
朝がた街で尋ねたら、これは元々魔石なので、
魔力のある者にしか効果がないらし
い。運でも防御でも攻撃でも、何かの役に立てばいいけど。」
コン
ラートは、自分の首からそれを外すと、ユーリに手渡した。
「くれるの?」
「ええ。それは陛下が持つのにふさわしい。いつか、陛下がこちらに来たら渡そうと
思ってたんです。
………………それに、俺には“これ”がありますから。」
そう言ってコンラートは、も
う一つ、首に下げていたチェーンを引っ張り出す。
その銀のチェーンには、小さなガ
ラス玉が一杯ついた、おもちゃの指輪がぶら下がっていた。
「………………世界で一番大切な人が、俺に買ってくれたんだ。」
コンラートは、ユーリが
見たこともない、本当に嬉しそうな顔をした。
「へ〜?でも、何か出店で
売ってる様な指輪だな〜。」
ユーリは、近くからまじまじとその指輪を見つ
めた。
「………………陛下?そんなに見つめても、こっちは差し上げられま
せんよ?」
余りに熱心に見つめるユーリに、コンラートは申し訳なさそうに
言った。
「へ?あ、ごめんごめん!!そんなつもりじゃなくって………………ただ、俺、同じやつ、
誰かが持ってるの見たことある様な気がして………………」
懸命に誰が付けていたか思いだそうとしているユーリに、コンラートは優し
く微笑んだ。
「これは、世界にひ
とつ………………いや、ふたつしかない俺の宝物ですよ。」
「まぁ、確かに似たよう
なのって一杯あるし、俺の気のせいかな。」
「コラ!!お前たち!!い
つまで僕を待たせるつもりだ!?」
遠くから、痺れを切らしたヴォル
フラムが叫ぶ。
「やっべ!!じゃぁ、俺、とりあえず行って来るよ(汗)」
「陛下、くれぐれも無理はなさらないようお願いします。」
コンラート
は、ユーリの背中を見送りながら、先ほどの指輪を、もう一度手にとった。
「………………………………………………」
そんなコンラートの悲し
気な呟きは、ユーリに届くことなく、風にかき消されてしまった。
『、それ、首から何下げてんの?』
制服の胸元からちらりと見えた輝き
が気になった有利は、軽い好奇心からにそう尋ねた。
『あぁ、これ?………………世界で一番大切な人が、私に買ってくれ
たの。』
『へぇ〜?………………もしかして、“彼氏”とか?』
『………………そんなんじゃ………………ないわ。』
寂しそうに呟いたに、有利はそれ
以上何も言えなくなってしまった。
ー
例えあなたが忘れてしまっても、私は絶対忘れない……今も光輝く、あの遠い夏の日をー
[
あとがき]
この話を読んで、「あ!!あの時の指輪だ!!」と気づいて下さった方、
本当にありがとうございます!!
この指輪は50のお題「46我侭〜君の本音〜」に
出て来ます☆そちらの方もよろしければ見て下さい!
あと、内容を略しすぎてすいま
せん(汗)皆さんが“原作(もしくはアニメ)を知っている”こと前提に話を進めていきま
す。
原作本を丸々写す訳にもいきませんので、その辺は勘弁してください(>_<)