必ず見つけるよ。
どこにいたって、 必ず君を見つけるよ。











 17 大切な 君











ある日、ムラケンと野球の練習帰 りに銭湯に行くと、突然湯船に吸い込まれ、またもやスタツアを経験してしまったのだっ た。
こうして2度目のスタツアで再び眞魔国に来た、俺、渋谷有利は、魔王の最終兵 器である“魔剣メルギブ”………………
じゃなかった(汗)“魔剣モルギフ”を探し に、シマロンに向かった。



















「ミス上腕二頭筋………………じゃなかった、ヨザックは、普段どんなことしてんの?」


ユーリは、どこか掴み所のないヨザックと、何とかコミュニケーションをは かろうと、さりげないネタで話しかけた。


「まぁ、大体は隠密行動とか ですかね〜?仕事以外だったら、もっぱら人探し☆」
「人探し?指名手配中の犯罪者 とか?」


ユーリは、凶悪な殺人犯や強盗犯を想像して、顔を青くした。


「い〜え、ただの幼なじみですよ☆15年前、ある日突然、誰にも何も言わずにいなく なったんですよね〜。」
「え!?それって、誘拐とか、変な事件に巻き込まれたとか じゃ!?」


ユーリが青ざめた顔で心配しているのを見て、ヨザックは豪快に 笑いだした。


「あっはっはっはっはっ!!!!」
「な、何? 俺、何かおかしなこと言った!?」
はははははっ!!い〜え、あいつに 限って、それはありえないですよ!!めっちゃ強いですからね〜☆
 まぁ、隊長 レベルまでいくと無理でしょうけど、そんじゃそこらの男だったら一瞬でおだぶつ ですよ♪」


ヨザックが涙を拭いながら、笑いを抑える。


「………………そんなに強い奴って、やっぱりアメフトマッチョ系なの?」


ユーリは例の美形マッチョが、コンラートとヨザックと手をつないで歩いているシーンを 想像してしまい、苦い 顔をした。


「アーダルベルトのことですか?どっちかというと、陛下に似て ますかね。双黒だし☆それに、とびっきりの美女ですよ。」
「………………美 女?」
「??えぇ、“戦う女神”とも言われて……「女なの!?」
「あれ?言いませんでしたっけ?」


ヨザックが、あっけらかんと答える。


「“幼なじみ”としか聞いてないって!!(汗)………………女の人なのにそ んなに強いの!?」
「えぇ♪なにしろ、小さいときから俺と隊長が叩き込みましたか らね☆強くて、気高くて、誇り高くて
 ………………最高に良い女ですよ。」


ヨザックは、誇らし気に答える。


「不器用だけど真っ直ぐで、泣き虫のくせ に、歯を食いしばって必死に耐える。
 本当は甘えん坊のくせに、絶対に頼って来な い。」


普段の彼からは考えられないような、柔らかい表情でヨザックは微笑 んだ。


「………………でも、俺は、頼られたかったんだ………………もっと 俺を、頼っ て欲しかったんだ。」



















俺がルッテンベルクから帰還した時、“も生きている”という事実だけが、俺の全 てだった。


はっきり言って、ジュリアの死も、隊長の失踪も、俺にはどうでも良かっ た。


ただ、さえこの世界に生きていてくれれば、それだけで良かった。









今も、悔やんでも悔やみきれない。


ど うして守ってやれなかったんだろう?


が発した小さなSOSを、どうして気づ いてやれなかったんだろう?



















、ほら、お前の好きなプリン、差し入れ☆』
『ヨザ………………。』
『な〜に暗い顔してんの?隊長だって、すぐ帰って来るって☆
 だから、お前は安心して自 分の体を治すことに専念すれば良いんだよ、な?』
『うん………………そうね。』
『あ、水差しの水がなくなりかけてるな。今汲んで来てやるよ。』
『あ、 ヨザ………………』
『ん?何??』
『………………ううん、何でもない。』
『??じゃあ、ちょっと待ってろよ☆』



















はあの時、一体、俺に何を伝えようとしていたんだろう?
それを知る術は、今 の俺にはもうないけれど………………



















「………………ヨザック??」


急に黙り込んだヨザックを、不思議そうに ユーリがのぞき込む。


「………………もう、死んでるんじゃないかとか、一 生帰って来ないだろう、って言う奴も沢山いるんだ。
 でも、でも俺は、そんなの認めたく ないんだ。」


ヨザックは、今までとはうって変わって、真剣な口調でしゃべ りだした。


「俺が今生きているのは、“あいつも生きている”と感じるから なんだ。
 何だか良くわからないけど、わかるんだよ。」
「………………大切な 人なんだな。」
「えぇ、俺の、生き る希望ですから☆」


そう言って笑ったヨザックは、どこか寂しそうで、何だ か俺まで切なくなってしまったんだ。



















その“幼なじみ”が、俺もよく知る“とある少女”であると俺が知ったのは、3度目のス タツアを経験したときになる。


そう、3度目にスタツアをした時に、一緒に 眞魔国にやってきたクラスメートの“”こそが、
その“そんじゃそこらの男だっ たら一瞬でおだぶつ”にする最強美女だったのだ。









あははははっ!!おっかしな顔 〜!!」


は、ユーリに頼み込んで見せてもらったモルギフを両手に 持って、笑いころげている。


「機嫌悪くなるから、あんまり馬鹿にするなよ 〜(汗)」


その横では、ユーリがおろおろとしていた。


「別に、 こんなのなくても、ユーリには私がついてるんだから、百人力よ!!」


ナマ エは片手でモルギフを振り回 しながら、ガッツポーズをつくる。


「………………“そんじゃそこらの男 だったら一瞬でおだぶつ”だもんな〜」


「??何それ??」


「あ!いや!何でもないよ!!」


「??おかしな ユーリ。」


そうしては、再びモルギフで遊びだした。


そ んなを見つめながら、ユーリはあの時のヨザックの切なげな表情を思い出してい た。



















『えぇ、俺の生きる希望ですから☆』



















ー いつまでだって待つよ。君が帰って来るのを………………ー



















[ あとがき]
前回はコンラート視点だったので、今回はヨザック視点にしてみました☆
今回で間章(ユーリが眞魔国に初めて来た時から、が眞魔国に戻って来るまで の回想)を終わります。
次からは、1章(大脱走沿い)にかかりたいと思います☆
また、ご感想を聞かせてく ださいね(^o^)/











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