必ず見つけるよ。
どこにいたって、
必ず君を見つけるよ。
ある日、ムラケンと野球の練習帰
りに銭湯に行くと、突然湯船に吸い込まれ、またもやスタツアを経験してしまったのだっ
た。
こうして2度目のスタツアで再び眞魔国に来た、俺、渋谷有利は、魔王の最終兵
器である“魔剣メルギブ”………………
じゃなかった(汗)“魔剣モルギフ”を探し
に、シマロンに向かった。
「ミス上腕二頭筋………………じゃなかった、ヨザックは、普段どんなことしてんの?」
ユーリは、どこか掴み所のないヨザックと、何とかコミュニケーションをは
かろうと、さりげないネタで話しかけた。
「まぁ、大体は隠密行動とか
ですかね〜?仕事以外だったら、もっぱら人探し☆」
「人探し?指名手配中の犯罪者
とか?」
ユーリは、凶悪な殺人犯や強盗犯を想像して、顔を青くした。
「い〜え、ただの幼なじみですよ☆15年前、ある日突然、誰にも何も言わずにいなく
なったんですよね〜。」
「え!?それって、誘拐とか、変な事件に巻き込まれたとか
じゃ!?」
ユーリが青ざめた顔で心配しているのを見て、ヨザックは豪快に
笑いだした。
「あっはっはっはっはっ!!!!」
「な、何?
俺、何かおかしなこと言った!?」
「はははははっ!!い〜え、あいつに
限って、それはありえないですよ!!めっちゃ強いですからね〜☆
まぁ、隊長
レベルまでいくと無理でしょうけど、そんじゃそこらの男だったら一瞬でおだぶつ
ですよ♪」
ヨザックが涙を拭いながら、笑いを抑える。
「………………そんなに強い奴って、やっぱりアメフトマッチョ系なの?」
ユーリは例の美形マッチョが、コンラートとヨザックと手をつないで歩いているシーンを
想像してしまい、苦い
顔をした。
「アーダルベルトのことですか?どっちかというと、陛下に似て
ますかね。双黒だし☆それに、とびっきりの美女ですよ。」
「………………美
女?」
「??えぇ、“戦う女神”とも言われて……「女なの!?」
「あれ?言いませんでしたっけ?」
ヨザックが、あっけらかんと答える。
「“幼なじみ”としか聞いてないって!!(汗)………………女の人なのにそ
んなに強いの!?」
「えぇ♪なにしろ、小さいときから俺と隊長が叩き込みましたか
らね☆強くて、気高くて、誇り高くて
………………最高に良い女ですよ。」
ヨザックは、誇らし気に答える。
「不器用だけど真っ直ぐで、泣き虫のくせ
に、歯を食いしばって必死に耐える。
本当は甘えん坊のくせに、絶対に頼って来な
い。」
普段の彼からは考えられないような、柔らかい表情でヨザックは微笑
んだ。
「………………でも、俺は、頼られたかったんだ………………もっと
俺を、頼っ
て欲しかったんだ。」
俺がルッテンベルクから帰還した時、“も生きている”という事実だけが、俺の全
てだった。
はっきり言って、ジュリアの死も、隊長の失踪も、俺にはどうでも良かっ
た。
ただ、さえこの世界に生きていてくれれば、それだけで良かった。
今も、悔やんでも悔やみきれない。
ど
うして守ってやれなかったんだろう?
が発した小さなSOSを、どうして気づ
いてやれなかったんだろう?
『、ほら、お前の好きなプリン、差し入れ☆』
『ヨザ………………。』
『な〜に暗い顔してんの?隊長だって、すぐ帰って来るって☆
だから、お前は安心して自
分の体を治すことに専念すれば良いんだよ、な?』
『うん………………そうね。』
『あ、水差しの水がなくなりかけてるな。今汲んで来てやるよ。』
『あ、
ヨザ………………』
『ん?何??』
『………………ううん、何でもない。』
『??じゃあ、ちょっと待ってろよ☆』
はあの時、一体、俺に何を伝えようとしていたんだろう?
それを知る術は、今
の俺にはもうないけれど………………
「………………ヨザック??」
急に黙り込んだヨザックを、不思議そうに
ユーリがのぞき込む。
「………………もう、死んでるんじゃないかとか、一
生帰って来ないだろう、って言う奴も沢山いるんだ。
でも、でも俺は、そんなの認めたく
ないんだ。」
ヨザックは、今までとはうって変わって、真剣な口調でしゃべ
りだした。
「俺が今生きているのは、“あいつも生きている”と感じるから
なんだ。
何だか良くわからないけど、わかるんだよ。」
「………………大切な
人なんだな。」
「えぇ、俺の、生き
る希望ですから☆」
そう言って笑ったヨザックは、どこか寂しそうで、何だ
か俺まで切なくなってしまったんだ。
その“幼なじみ”が、俺もよく知る“とある少女”であると俺が知ったのは、3度目のス
タツアを経験したときになる。
そう、3度目にスタツアをした時に、一緒に
眞魔国にやってきたクラスメートの“”こそが、
その“そんじゃそこらの男だっ
たら一瞬でおだぶつ”にする最強美女だったのだ。
「あははははっ!!おっかしな顔
〜!!」
は、ユーリに頼み込んで見せてもらったモルギフを両手に
持って、笑いころげている。
「機嫌悪くなるから、あんまり馬鹿にするなよ
〜(汗)」
その横では、ユーリがおろおろとしていた。
「別に、
こんなのなくても、ユーリには私がついてるんだから、百人力よ!!」
ナマ
エは片手でモルギフを振り回
しながら、ガッツポーズをつくる。
「………………“そんじゃそこらの男
だったら一瞬でおだぶつ”だもんな〜」
「??何それ??」
「あ!いや!何でもないよ!!」
「??おかしな
ユーリ。」
そうしては、再びモルギフで遊びだした。
そ
んなを見つめながら、ユーリはあの時のヨザックの切なげな表情を思い出してい
た。
『えぇ、俺の生きる希望ですから☆』
ー
いつまでだって待つよ。君が帰って来るのを………………ー
[
あとがき]
前回はコンラート視点だったので、今回はヨザック視点にしてみました☆
今回で間章(ユーリが眞魔国に初めて来た時から、が眞魔国に戻って来るまで
の回想)を終わります。
次からは、1章(大脱走沿い)にかかりたいと思います☆
また、ご感想を聞かせてく
ださいね(^o^)/