地球と眞魔国。俺にはふたつの世界があ るんだ。











 18 帰る場所











「ふられた。」


「嘘ッ!?お前って彼女いたの!?」


ムラケンこと村田健と、男二人でむなしくシー ワールドに来ていた俺、渋谷有利は、
相方の突然の告白に度肝を抜かれた。


「違う。告ってデートに持ち込もうと思って、前売りチケット買っといたの に、やっぱりふられたんだ。」









『シーワール ド?』
『うん。チケットが手に入ったんだけど、どうかな?』
『それって2枚し かないの?』
『え?う、うん。』
『そっかぁ、残念。有利が行けないんだった ら、私は無理だなぁ。』
『や、でも、せっかく2枚あるわけだし………………』
『そうよ!ムラケンと有利が一緒に行けば良いのよ!それが良いわ!ね?決まり!!』
『え!?でも、ちょっ!!』
『あ 、大変!!もうこんな時間!!ユーリと校門で待ち合わせてるのよ!!じゃあ、またね ♪』


それっきり彼女はいなくなってしまった。
恐らく、“あちらの世 界”帰ったのだろう。


「だからって、何で僕が渋谷と二人で行かなきゃいけ ないんだ?」
って!誘ったのはお前だろう!?わけわかんね〜奴だな〜( 汗)」


ムラケンの小さな独り言も聞き逃さなかった有利が、すかさずツッコ む。


「まぁ、せっかくだし楽しもうよ。あ、あっちでイルカのショーがやっ てるみたいだよ。ほら、渋谷行こう。」
「あ〜はいはい〜」


こうして生 返事をした俺は、まさかこの後、再びスタツアを経験してしまうとは、
この時は夢に も思ってなかったんだ。



















「………………リ……ーリ………………ユーリ?………………ユーリ!?」


誰かに呼ばれているような気がして、ユーリがそっと目を開けると、
見慣れたメン バーが心配そうな顔で自分をのぞき込んでいた。


「あ、あれれれれ?………………確か、ムラケンがイルカで、板東英二がムラケンで?」
「………………何わけ のわかんないこと言ってるの?頭大丈夫?」
「うわああああっ!!!?」
「失礼ね!!さっきからいるでしょ〜?そんなに驚かないでよ!!」


が少し怒ったように睨む。


「………………あれ?てことはココ、眞魔 国?」


気がつくと、俺は海の上に浮かぶ小舟に横たわっていた。


「陛下は、鮫に助けてもらったんですよ。」


横からコンラート がほっとした表情で話しかける。


「鮫!?」
「あ、安心し て。こっちの鮫は、大人しくて人懐っこいから☆」


“鮫”と聞いて真っ青に なったユーリに、慌ててがフォローを入れる。


「と、とりあえず、早 く、陸に、上がりましょう!!陛下が、お風邪でも召したら、大変ですっ!!」


必死にオールを漕いでいたギュ ンターが息も絶え絶えに叫んだ。
こうして俺は久しぶりに眞魔国に戻って来たのだっ た。



















「俺のそっくりさん〜!?」
「えぇ。今グウェンが行ってるんだけど………………」
「俺も行く!!」
「やっぱり………………」


はユーリの予想 通りの台詞に頭を抱えた。


「言っとくけど、“そっくりさん”と言っても、 別にユーリと顔が同じだとか、西武ファンだとか、
 私に腕相撲で勝てないとか、そういう わけじゃないからね?」
「誰もそこまで言ってないし!!………………てゆか、腕相 撲勝てないのは関係ないだろ〜!!」


痛い所を突かれて、ユーリは精一杯の 抵抗を試みる。


「まぁ、行っても良いけど、どうせグウェンに嫌な顔されて 追い返されるだけだと思うけど?」
「(………………反論できない)だ、だからと言っ て、そのまま見捨てるわけにはいかないだろう!?
 が反対しても、俺は行く からな!!」
「誰も反対なんてしてないっしょが。しょうがないわね〜本当に。」


こうして、 ユーリたちはグウェンダルを追いかけることになったのだった。



















ー みんなが待っていたよ。君が帰って来るのを………………ー



















[ あとがき]
短いですが、大脱走の導入部です。









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