どんな困難に襲われようとも、魔笛は きっと見つけだしてみせる。
ユーリの作る、新しい世界のために











 22 偽りと真実の間














私たちが教会から さらってきた花嫁、ニコラは、グウェンダルの従兄弟であるゲーゲンヒューバーの恋人で あるらしい。
その事実が発覚したのは、行き場をなくして途方に暮れていた私たちを 匿ってくれたシャスという男と、
彼の孫のジルタの家に隠れている時のこと。









「「「赤ちゃん!?」」」
「えぇ。」


少し照れくさそうにニコラは微笑む。
幸せそうな表情を浮か べると、まだ少しの膨らみもない自分のお腹にそっと手を当てた。


「今流行 りの“出来ちゃった婚”ってやつかぁ………………」
「ユーリ!!関心してる場合 じゃないから!!」


予想外の展開に呆然とするユーリの傍らでは 、グウェンダルが顔を真っ赤にして体を震わせている。


「あっ……………… あの野………………!!」
「グウェン。言いたいことはわかるけど、ちょっと落ち着 いて。」


は、怒りのあまり思わず体を浮かせてしまったグウェンダル の肩を押さえて、その場にとどめさせる。


「今はヒューブのことでとやかく 言っても仕方がないでしょ?出来ちゃったもんは、誰が何を言おうと産まれて来るんだか ら。
 ところでニコラ。さっき言っていた、遺跡から持ち出した茶色の筒とやらを見 せてもらってもかまわない?」


慌てふためく男性陣に対し、同じ女性である はいたって平常心である。


「えぇ。これよ。」


そう言っ てニコラが取り出した物は、前に3つ後ろに1つ穴が空いているだけのシンプルな茶色い 筒であった。


「………………何かどっかで見たことある様な………………」
「まぁ、モノはためしね。さ、ユーリ吹いてみて。」
「え!?俺!?笛なんて吹 けないよ!!お前じゃ駄目なの!?」
「当たり前でしょう!!魔王であるあなたにしか吹けないんだから。」
「そんなこ と言われたって、笛って苦手なんだよ〜………………第一、の方がうまいじゃ ん!?」
「うまい下手じゃなくて、ユーリが吹かないと効力を発揮しないの!!ほ ら!!」


に促されるまま茶色い筒に唇を当てたユーリは、試しに小さ く息を吹き込んでみた。


「………………??何も鳴らないんだけど………………」
「おかしいわね………………偽物ってこと?」






その時だった。
急に表が騒がしくなり、男たちの怒鳴り声が響いて来た。


「外か!?」


慌てて家から飛び出ると、火器を手にした三十人 以上の兵隊たちに辺りを完全に包囲されていた。


『ユーリ!!ニコラを連れ て逃げて!!』


声には出さず小さくそう口を動かしたは、二人を背後 に隠すようにして軍人の前に立ちはだかった。


「私たちに何の用!?」


「逃亡者らしき者がいると通報があ った!!お前たち、昼に教会から新婦を強奪した二人組と風体が似ているようだが!?」


兵隊のうちの一人が、銃を突きつけながら近づいてくる。


「何 言ってんの!?この人は私にベタ惚れなんだから、他の女なんてさらって来るわけがない でしょう!?」


そう言うとは、グウェンダルのわき腹を思いっ切り 抓った。


いっ!!………………あ、あぁ!!ベタ惚れだ!!」
『グウェン!!そんな怖い顔でそんなこと言っても、ちっとも説得力がないじゃな い!!』
『お前が私の腹を抓るからだろうが!!』


「何をごちゃごちゃ 言っている!!もういい、こいつらを連れて行け。」


先ほどの兵士は横にい る下級兵にそう言うと、改めて二人の方に向き直った。


「ところでお前た ち、名は?」


名前………………バカ正直に本名教えてやる必要はないわよ ね。


「私が“磯●舟”で、旦那が“●野波平”よ!!文句ある!?」


サザ●とマ●オにする か迷ったケド、グウェンダルはやっぱ波平よね!!









こうしてとグウェンダル………………


いや、かけおち中のカップル、磯●波平さんと●野舟さんは、
兵隊達に 強制連行されてしまったのだった………………



















「コンラート!!ヴォルフラム!!」
「「ユーリ!?」」


ニコラを引き 連れて逃げていたユーリは、夕闇の町中で見慣れた二人組を見かけた途端、一人でに走り 出していた。


その声に気がついた次男と三男も、慌ててユーリの元へ駆け 寄って来る。


「ユーリ!!無事で良かった………………ところで」


コンラートは、ユーリと見知らぬ少女の顔を交互に見てから訝しげに尋ね た。


とグウェンダルは?」
「あ〜………………それが、えっ と、何と言うか………………」
「ねぇユーリ?どちらがに捨てられた元婚約者 さん?」
「「は! ?」」


何も知らないニコラは、不思議そうにユーリを迎えに来た二人 の男性を見比べる。









ヤバい………………何を 聞く前から既にコンラートの笑顔が黒い!!
早く誤解を解かないと俺とグウェンダル の命が!!









「ニコラ、えっと、そのことにつ いてなんだけど………………」


ところがユーリがフォローを入れる前に、先 に痺れを切らしたヴォルフラムが暴れ出してしまった。


「ユーリ!!一体ど ういうことだ!?に捨てられた元婚約者とは何なんだ!?」
「ヴォルフラム、 ひとまず俺の話を………………」
「じゃあ、あなたが“婚約者をお兄様に奪われた 弟”さん!?お願いよ!もうあの二人を許してあげて!?
 と彼は、とても愛し合っ ているの!!のことは諦めてあげて!!」


誰かこいつの口を塞いでく れ!!


コンラートのオーラが益々黒くなるのを感じたユーリは、祈る様な気 持ちでニコラの横顔をただ見つめるのだっ た………………



















ー グウェンダルには悪いけど、鎖で繋がれたのが自分じゃなくて本当に良かったって思う よー



















[ あとがき]
原作沿いに関しては、本気で何かとりついてんじゃないかって位筆が進み ません………………(死)
何だか毎回こんなことばっか書いてる気がします(本当にな )









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