逃げ出してしまいたかったの。何処だって良かった。あなたがいない所ならば
3 君守る花
〜15年前〜
「たった今ウェラー卿がスザナ=ジュリア…
いえ、次代の魔王陛下の御魂を抱えて地球に渡りました。」
「そうですか…。」
初代眞王をまつっている眞王廟の 広間で、言腸巫女であるウルリーケとが対面していた。
「ウルリーケ様、コンラートは次代陛下の御魂を無事に送り届けたら、す ぐにこちらに戻って来るのですね?」
「えぇ、彼の役目はそこまでですから。」
「…では、次代陛下が眞魔国に戻られるまでの警護を、私にやらせていただけませんで しょうか?」
「……!?、それは本気で言っているのですか??
下手をする
と二度とこちらに戻れない可能性があるとわかった上での事ですか??」
「覚悟の上です。」
はウルリーケを真正面から見つめて、迷いなく答えた。
「ジュリアの魂が今度こそ何不自由なく幸せな一生をお くれる様に、手助けがしたいんです。」
願わくば、
誰よりも優しかった彼女が、
愛するヒトと光輝くこの美しい世界をその目で見る事が出来
ますように…
そして、今度こそ愛するヒトと運命を供にする事が出来ます様に…
「…それで?」
「…え??」
「あなた自身は本当にそれで良いのですか??想いを告げる事もないまま彼と離れてしまっても …」
「…何の事でしょう?」
「ですからコン『ウルリーケ様、申し訳ありま せんがおっしゃっている事の意味が、わかりませんわ。』
は鋭い眼差しでウルリーケを見つめた。
「…わかりまし た。全てあなたにまかせましょう。」
「ありがとうございます。」
観念したように溜め息をついたウルリーケに、は深々と頭を下げた。
「ただ、人間と私達の時の流れの速さは大きく違います。
陛下は
赤ん坊から成人する期間でも、あなたの外見は全く変わらないでしょう。
地球はこちらと
違って魔族の認識がないですから、陛下と直接関わりを持つ事は出来ないでしょう。」
「わかりました。私は遠くから見守るだけでも充分ですから。」
「では最後に…。」
「はい。」
「汝、=。そなたに眞王陛下の御加護があらんことを…。」
「…今の話しからすると、は俺が赤ん坊の時から知ってたって事 …?」
「えぇ、ユーリが小学校に入学した時も、野球をやっていた時も… ずっと、ずっとね。」
私たちはユーリの執務室で2人きりで話して
いた。
私はユーリにコンラートへの想いを悟られないように、慎重に言葉を選んで説明し
た。
「俺と関わりは持たないつもりだったんだろ?じゃあ何で同じ高校に…?」
「高校3年間位なら、そんなに見た目が変わらなくても自然かなぁと思って。
…それに、ユーリが
成人して眞魔国に帰るまでの短い間だけでも良い…
ユーリに私の存在を知って欲しかった
の。
嫌われるのはわかってても、いつか本当の事も話すつもりだった…
まさかこんなに早
いとは思わなかったけどね。」
「…俺、の事好きだよ。あ!!別に変な意味 じゃないからな!!純粋にさ!!」
ユーリが顔をまっ赤に して慌てる。
「ありがとう。私もユーリが大好きよ。」
「いや、違うだろ!は俺じゃなくてジュリアさんが…
あ、そういえばと
ジュリアさんてどういう関係だったんだ?
そんな無茶する程大事だったんだろ?」
「えぇ、大親友だったの。ジュリアは誰よりも優しく美しい女性だった。
私はジュリアが大好き
だったわ…私にないものを全て持っていたの。」
ホン
トウハ、スコシウラ
ヤマシカッタノ…コンラートノココロハカノジョノモノ、
ドレダケノゾンデモ、ケシテワ
タシノモノニハナリエナイ…
「でも、ジュリアさんにはなくて、が持っているモノだって一杯あるよ。」
はユーリの予想外の反応に目をまんまるにした。
「ユーリ。私はやっぱり、あなたがあなただから好きなんだわ。」
は心からそう思った。
ユーリは知り合って間もないと
いうのにちゃんと自分をわかってくれていた。
逆に自分はどうだろう?
自分の気持ちで精
一杯で、ユーリを“ジュリアとコンラート”
というフィルターを通して見ていなかっ
たのではなかっただろうか?
は自分の愚かさに笑えてきた。
「私って本当に何もわかっちゃいなかったのね…」
は嬉しそうに微笑みをこぼ した。
ーヒトの心は移ろいやすい。
けれど、それでも変わらない想いだってあるー
[あとがき]
タイトルの”君”は君主=ユーリ、”花”は主人公です。
…センスなくってごめんなさい(汗)