私の心はあの時あなたに殺されたの





















 4 失われた絆





















「どうして誰に も何も言わずに出て行った?」






私が執務室を出ると、扉の 横にコンラートが立っていた。






「やだ、もしかして立ち聞 き?うっかり内緒話しも出来ないわね。」

「茶化すなよ。」






コンラートは真剣な顔でを見つめた。






「……もうこっちに帰ってくるつもりはなかったのよ。」






はコンラートに背を向けて、吐き捨てるように答え た。

「俺がいるからか?」






の体が一瞬こわ ばった。
それを見逃さなかったコンラートは、を後ろからきつく抱き締めた。






「……あの時は本当にすまなかった……俺もどうかして『コン ラートが謝ることなんて、何もないわ。』






肩に回された腕を 引きはが して、はコンラートの言葉を遮った。






「コンラー ト、私は大丈夫だから。私のことは気にしないでいいから。
 それよりもユーリを見て てあげて。やっぱり私の事、結構こたえてるみたいだから。」

「………あぁ。わかっ た。………グェンダルとヴォルフラムが、お前に会いたがってたから途中で寄ってやっ てくれ。」

「そういやあの2人にはまだ会ってなかったわね。ヨザも今こ こにいるの?」

「いや、あいつは調査でいない。でも“が帰って来た”っ て鳩を飛ばしたからすぐすっ飛んで来るだろう。」

「そう。じゃぁまた後で ね。」






そう言うとは、コンラートと1度も目を合わ すことがないまま走り去って行った。






「……俺は一体いつに なったらまた、昔みたいにお前の笑顔が見られる様になるのかな……」






コンラート は誰もいない廊下に、そっと深い溜め息をこぼした。





















「15年分の報告書を書 け。」

「嫌。」






の返答にヴェンダルがとう とうブチ切れた。






「ある日突然姿をくらまして、今度も突然現れたと思ったら異世界に行ってただと!?15年もか!?ふざける な!!

「だって本当何だもん☆」

「だもん☆じゃない!!一体ど れほど心配したと思ってるんだ!!」

「……心配したの?」

「……!?」






グェンダルが照れか怒りか、どちらもなのか、耳まで真っ 赤にして叫んだ。






「もういい!!お前と話していると疲れ る!!もう行け!!」

「うん。ヴォルフにも会いに行かなきゃだし。」






は長い説教からやっと解放されて、ウキウキで答え た。






「あ」

が扉まで歩いて行った所で、急に立 ち止まった。






「何だ?」

「…ただいま。」

「………………………………………………………………………………おかえり。」






グェンダルの不器用な返事に、は柔らかい微笑みを残して立ち去った。






「…最初から あれ位素直にしてれば良いものを…。」






そう呟いて、こっ そりしまっておいた編み物セットを取り出したグェンダルは、
口調こそ怒ってはいたもの の、口の端がわずかに上がっていたとかいないとか。











「怖いドーベルマンの次はキャン キャンわめくチワワですか……」

「何だ!?何か言ったか!?」

「いえ、滅 相もゴザイマセン。」






は今度はヴォルフラムに捕 まっていた。

「さっきからお前はそうやって〜!!ちゃんと僕の話しを聞いてい るのか!?」

「はいはい、ちゃんと聞いてるってば〜。あ、やっぱヴォルフ 背伸びたね〜!」

お〜ま〜え〜は〜!!

「も〜!久々に 会ったんだから怒ってばっかいないで、ちょっとは歓迎してよね〜!!」






は飛びかかる様にヴォルフラムに抱きついた。






「………?ヴォルフ?」






昔 だったら、が抱きつけば真っ赤になって暴れていたヴォルフラムが、
無反応で あることを不思議に感じたは、ヴォルフラムの顔をのぞきこんだ。






「おかえり。」

「!!」

「…まだ言ってな かったから一応な。」






それだけ言うとヴォルフラムは、ぷ いっと顔を背けた。






「ただいまぁ。」






はおでこをヴォルフラムの胸に預けた。






「もうどこにも行くな。」






の頭をなでながらヴォルフラムは呟いた。






「え〜?何 それ、プロポーズ?」

「なっ!!馬鹿を言うな!!僕には有利という婚約者がい るんだぞ!!」






ヴォルフラムは今度こそ真っ赤 になった。






「はいはい。…ありがとヴォルフ。本当に皆優 しいね…。」






この国は全てが美しいのに、私だけが汚いの だ、とは思った。





















ーも し、あの時に自転車から飛び降りていれば… もし、あの日に限って有利と一緒に帰ってい なければ、
 自分はこの国に戻ることはなかったのだろうかー

























[ あとがき]
さんはコンラート以外には素直になれるんですがねぇ…。
5話はあの人と の再会です(笑)









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