それは“渋谷有利”が“”と出会った時のお話し …





















 6 桜と君と僕と





















桜舞い散る春、某県立高校の一室 で、どこかまだ子供っぽさが抜けきらない新入生の中、ひときわ目立つ少女がいた。






その少女の名前は。漆黒の瞳と髪、しかし、どこ か欧米を思わせる整った顔立ち。
騒がしい中、見た目以上に落ち着いた雰囲気。周り が騒ぎ立てるのも無理はなかった。






「どこの中学だったんだろ?」

「お人形さんみたいだね〜」

「恋人とかいるのかなぁ?」






男女を問わず口々に噂する中、また、この少年も例外では なかった。






『……こんな綺麗な子が隣の席なんてラッ キー!!』






有利は入学そうそう運が良い!!と、はしゃい でいた。それが自分の運命を変える出会いになるとは知らずに……。






『……でも、どぉ〜っかで見たことある気が……ってやべっ!!






「……えぇっと、“渋谷有利君”…だよね?」






有利 はあまりにもまじまじと見つめていたのでと目が合ってしまったのだ。
まさか話 しかけられるとは思っていなかった有利は、すっかり舞い上がってしまった。






「そ、そうそう!渋谷有利原宿不利!!って俺自分で何言って んだ!?あ、有利でいいから!!
えと、さん…だよね?」

「うん。 で良いよ。ところでさ、もしかして有利って野球とかやってる?」

「!?え!? 何でわかったの!?あ、つっても“やってた”だけど。」






例の事件を思い出してしまって、有利は少し口ごもった。






「う〜んと、日焼けの後と腕の筋肉……かな。あと有利って野球小僧っぽいし♪」

「野球小僧って(汗)でも日焼けとかでわかるもんなんだな〜」

「そりゃ私 も野球大好きだからさ♪西武ファンなのよ。 」

「マジで!?俺も俺も!!うっわ〜偶然だな!!」






こうして2人は意気投合したのであった……


























「……って、今考えたらあの時のっ て全部仕組み!?」

「……静かに仕事してるかと思ったら一体何の話しよ??」






とユーリはユーリの執務室で大量の書類と格闘して いた。






「ほら!はじめて会った時!そりゃ俺が野球してた ことも知ってるわけだよなぁ〜」

「あぁ、あの時ね。……他にユーリと仲良くな るネタがなかったのよ!!」

「……まぁ、確かに。」






今までの自分の人生は野球一色だった事を思い出し、有利 は大きな溜め息をついて、次の書類に手を伸ばした。






「俺、あの時に結構運命感じたんだけどなぁ〜」

「あら、私はもっと昔か ら感じてたわよ?ユーリが産まれた時からね♪」

「……今の笑う所?」

「喜ぶトコよ!!……ま ぁ、でも野球好きと、西武ファンは本当よ。」

「……本当にぃ??」






疑ぐるユーリには自信たっぷりに言い放った。






「だってユーリが好きなモノは私も好きだもの!!」






「……もしかして今のは『喜ぶトコよ!!』






今度はに先手を打たれてしまった。






「あ〜も〜!!嫌!!何で私がユーリの“秘書”なのよ!?何で補佐がいるのに秘書まで いるのよ〜」

「しょ〜がないだろ〜、それしか思い付かなかったんだからさ。」






2人揃って大きな溜め息をつくと、書類の山を見上げた。
グェンダルに押し付け……いや、渡されたのだ。






コン コンッ。






広い室内にノックの音が響いた。






「はいどぉぞ〜」

「ユーリ、ちょっと休憩……って もいたのか……。」






コンラートの声 を聞いて、の表情がこわばった。






「しまったな。 ユーリの分しかお茶持って来てないんだ。今取ってくるよ。」

「待って、コン ラート。私、もう行くからいいわ。」

「え!?最後まで手伝ってくれるんじゃな かったの!?」

「ギュンターに頼まれてたこと思い出したから、ごめんね。」






は短くそれだけ言うと、コンラートの方を見ない様 にそそくさと部屋を出て行ってしまった。











「……前から 思ってたんだけど、ってコンラッドにだけ妙に冷たくないか?避けてるというか、 拒絶してるというか。
お前らって幼馴染みなんだろ?喧嘩でもしてんの?」

「……怒ってくれた方がずっとましだよ。喧嘩させてくれないからね、は。
一方的に自 分が悪いと決めつけて、謝ってばかり……俺には一言も言わせてくれない。」

「あいつも頑固だからな〜。しっかし天然たらしなコンラッドが女の子の扱いに困るなん て珍しいな〜。」






面白がってからかうユ ーリに聞えない様にコンラートは小さく呟いた。






は特別だから……」

「?まぁ、早く仲直りしとけよ?」

「えぇ……そうで すね。」





















ー幼い頃信じていた彼 と私の運命の糸は、今だ絡まったままもがき苦しんでいるー
























[ あとがき]
ユーリとさんのボケツッコミが書いてて凄く楽しかったです(笑)
この 先、核心に迫っちゃうか、コンラートとさんが仲良しだった時の話しにするか悩み 中です(汗)
良ければご意見聞かせてくださいね☆









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