私の母は凄く“跡部の家”を嫌っていたから、
母方の実家である跡部の家には 行ったことがなかった。


そう。
初めて跡部と会ったあの日までは………………。



















もし、私たちが出会ってしまったことが過ちならば、
私の存在自体が過ちなのでしょ うか?





















 episode2 every day spent with you





















話に聞くところによると私の両親は、所謂“政略結婚”とやらで、半分強制的に結婚させられたらしい。
それ それでも最初の内はうまくいっていたものの、次第に互いに仕事中心の生活からスレ違い が生まれ、
たったの三年でその夫婦生活にピリオドを打つことになる。


当時三歳 だった私は母親にひきとられたものの、母は私を実 家に預けてそのまま海外に飛び立ってしまった。


そう。
私はまだたった の三歳だったのに、一人“跡部の家”に置き去りにされたのだった。



















初めて景吾と会った時の、あの日の衝撃は今も忘れられない。



















──────────ヤットアエタ!!









私はこの人に出会いたかったんだ。
私はこの人に出会う為に生まれて来たんだ。
そんな、妙な高揚感が私の中で沸き 起こった。


──────────今思えば、この時からだ。


私の中の“もう一人の私”が、私の心に“何か”を訴え出したのは。──────────










こうして叔父夫婦の家 に預けられたのだったが、実際私の面倒を見てくれたのは叔父夫婦ではなく、
跡部の 家に仕える執事やお手伝いさん達だった。


叔父夫婦である景吾の両親もまた、仕事で海外を飛び回っていたため、
景吾は大きな お屋敷でたった一人で生活をしていたのだ。


勿論、執事やお手伝いさんは沢 山いたけど、“血のつながった家族”はお互いしかいなかった。
だから、私たちは お互いの寂しさを埋めるかのように、すぐに仲良くなった。


!!裏庭 に大きな向日葵が咲いたんだ!!一緒に見に行かねぇか?』
『行く〜!!』


毎日毎日、私たちは日が暮れるまで、広いお屋敷中を走り回って遊んでい た。
まだ小さかった私にとって、景吾は全てだった。
私の世界は景吾一色だっ た。









五つで氷帝学園の幼稚舎に通いだし、亮 ちゃんやジローちゃん、他にも何人か仲の良い友人は出来たけど、
それでも私にとっ ての景吾は絶対的存在のままだった。









あんな に満たされた日々は初めてだった。
この幸せが、ずっと続くと思っていたの。
ま だ幼かった私は、景吾とずっと一 緒にいれると信じて疑わなかったの………………。









コノママ、コノシアワセナヒビガ、ズッ トツヅクトオモッテタノニ









その“想 い”は幼すぎて、まだ“恋”とは呼べないものだった。
でも、その“想い”だけが、 私の中のたった一つの真実だった。









そんなあ る日、私の人生を変えてしまう出来事が起きる。









それは、亮ちゃんとジロちゃんがうちに遊 びに来ていた時のことだった。


ちゃんは、次は何して遊びたい〜?』
『え、えっと、おままごとがしたいな。』
『じゃあ、俺、お父さんやりたい 〜!!』
『バカジロ!!お前はどう見ても子供役だろ!!俺がやる!!』


大きく手を上げて父親役に立候補したジロちゃんを押し退けて、亮ちゃん も手を上げた。


『え〜!?そんなの亮ちゃんズルいC〜!!景ちゃん!景 ちゃんは?景ちゃんはお父さん役やりたくないの ?』


ジローが、さっきから黙りこくって輪に入らない景吾を気遣って声をか けると、景吾はむすっとジローを睨んだ。


『俺とは結婚しちゃいけない んだ。皆が言ってた。
 俺とは“せいりゃくけっこん”しなきゃいけないって。
 だから俺たちは結婚出来ないって言ってた。
 だから、俺はお父さん役はやら ない!!やりたくない!!』


そう大声で叫ぶと、景吾は走り去ってしまっ た。









ケッコンデキナイ?
アタシトケ イゴハ“マタ”ケッコンデキナイノ?










『??“せいりゃくけっこん”て何だ?って、!?


気がつ くと、私も走り出していた。


頭の中でサイレンが鳴り響く。
恐ろしいほ ど、心臓の高鳴りを感じていた。


おじぃちゃん!!おじぃちゃん!! おじぃちゃん、どこ!?


必死に駆け回って、いつもお世話をして くれる執事を探し回る。


お嬢様?じぃはこちらにおりますよ。』
『おじぃちゃん!!』


私はおじぃちゃんに飛びつくと、そのままズボンの裾 にしがみついて泣きわめいた。


『どうなされました?また宍戸のぼっちゃま に、何かいじわるされたのですか?』
は、はっ景吾と結婚出来ないの?


その一言で全てを理解したのか、おじぃちゃんは困った顔をする と、優しく私の頭を撫でた。


『そうですね………………景吾おぼっちゃま も、お嬢様も、
 いずれそれぞれ別の方とのご結婚が決まっておられます。ですから………………』
『じゃあ、じゃあ、と景ちゃんは、本当に結婚できないの?』
『………………左様でございます。』









カ レヲ、スキニナッテハイケナイ。









どう して?
どうしてなの?
私は景吾を好きになってはいけないの?









カレトワタシハ、ケシテムスバレナイ“ウンメイ”ナンダ。










こんなにも、こんなにも好きなの に?









チガウ。
コレハ“コイ”ジャナ イ。










“恋”じゃない?









“コイ”ジャナイ。









“恋”じゃない。



















この日を境に、私は自分のキモチを封印した。









ソウ、ソレデイイノ。









それでいい。



















ー あなたに出会えたことだけが、たった一つの私の奇跡ー



















[あとがき]
やっぱり話は進まず………………(汗)
頑張って更新してきたいと思います (^_^;)
タイトルの和訳は「あなたと過ごした日々」です☆









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